第46話モブキャラだって部活ぐらいする4
増えたチ〇コをもとの持ち主へと返し、俺と憧はダッシュで野球部から抜け出した。
あのままあそこにいれば次はどんな目に遭うかわからない。
野球部のグラウンドを抜け出し、校舎へと逃げ込んだ俺と憧は息を切らしながら廊下をゆっくりと歩いていた。
もう時間ない・・・一刻も早く次の部活の見学に行かなくては・・・だが・・・
「もう日も暮れる・・・次の部活が最後だな」
先ほど行ったチ〇コ移植手術で大分時間を食ってしまった。
もうそろそろ部活も終わる時間だ。
「大丈夫!次の部活こそ俺の青春にふさわしい場所のはずだ!」
一体どこからその自信が出てくるのかわからないが・・・まぁあんな滅茶苦茶な部活二つを見て前向きでいられるのはすごい。
「じゃあ次はどの部活に行くんだ?」
そう聞くと憧は親指をグッと立てて笑顔で答える。
「ああ・・・最後に行くのは・・・バレー部だ!」
「オーライ!レフト!」
「ブロック!カバー入って!」
「足動かしてボール取れ!床に寝るな!」
俺と憧は体育館へとたどり着いた。
今も部員たちが汗を流し、声を出しながら一生懸命に練習している。
人数は12人ほどだろうか、人数が特別多いわけでもない。
また見たところ特別大きい選手がいるわけでも、めちゃくちゃうまい選手がいるわけでもなさそうだ。
そう見えるのにも理由はある。
「いいのか憧・・・この部活は・・・まだ主人公がいない部活だぞ」
「ああ・・・それでいいんだ」
この主人高校には三種類の人間がいる。
一種類目は全校生徒の約4割を占める主人公、つまりこの世界に愛された重大な責務を負う人間だ。
こんな一か所に主人公たちが集まることは珍しいのだが、まぁそういうこともある。
二種類目のもう4割が主人公の仲間たち、主人公を支える大事な存在。
そして最後の三種類目、残りの2割が俺たちモブキャラ、この世界の背景にしてこの世界を成り立たせているどうでもいい端役たちだ。
だからこの学校の約8割は主人公、もしくはそれに準ずる人間が存在している。
だが、そんな中にもモブキャラだけでコミュニティを作り、ごく普通の学校生活を送っている人間もいる。
それがこのバレー部というわけだ。
この学校だとそういった人間の方が珍しい。
絶対的なエースも、王様みたいなセッターも、身長が低いミドルブロッカーも、天才的なセンスを持つリベロも存在しない、ごく一般的なモブキャラたちだけの部活だ。
全国大会に出られるわけでもなく、劇的な人間ドラマがあるわけでもない。
交通事故でチームメイトは死なないし、伝説の監督が突然部にやってくるなんてこともない。
ごく普通のありふれた、どこにでもある部活。
「でも・・・それじゃあ主人公達の活躍にあやかってモテるなんてことできないぞ・・・」
そう、主人公がいないということはシンプルに自分の実力で活躍しなければならないということだ。
特殊な練習も、怪しい手術もなしに、地道な努力で自分の道を切り開かなくてはならない。
それでも憧はしっかりと前を向いてこう答えた。
「ああ・・・でも・・・俺はわかったんだ。自分以外のものに期待して行動したってロクな結果は得られないって・・・だから、ちゃんと自分自身の意思で努力できる環境で、自分自身に期待して目標を達成したいんだ」
「憧・・・」
俺は初めてこいつを・・・夢見 憧という人間をかっこいいと思った。
紆余曲折、いろんな失敗を経験して、こいつは成長したんだ。
友達として俺はそれを誇らしく思う。
「あ、入部希望の方ですかー!?」
友の成長にジーンとしていると、こちらに気づいたバレー部の部員が声をかけてきた。
特になんの特徴もない、俺と同じようなモブ顔の男だ。
他の部員もどこにでもいそうな顔をしている。
だが、こういった環境でしか得られないものもあるのだ。
「せっかくなんでバレーやってみませんか!?」
モブ顔の一人が元気よく誘う。
「ほら・・・行って来いよ」
俺は憧の肩をポンと叩き、促す、新たな青春への一歩を。
「ああ・・・これが俺のモテモテ伝説、その第一章だ!」
こうして一人の少年は輝かしい未来へと向かうため、その足を踏み出したのであった。
「それじゃああそこの更衣室で着替えてください。あ、これがバレー用のユニフォームです。試しにどうぞ!」
そう言って更衣室を指さし、短パンと背番号が書かれたユニフォームを憧に渡すと、モブ顔の部員は練習へと戻っていった。
「よし、じゃあ着替えてくるぜ」
「ああ、お前のかっこいいユニフォーム姿見せてくれよ!」
そう言って憧は更衣室へと入っていった。
俺は扉の前で携帯をいじりながら待つことにした。
だが・・・
「おっそいな・・・もう10分も経つぞ・・・」
憧が一向に更衣室から出てこない。
短めの短パンとユニフォームを切るだけでそんなに時間がかかるとは思えない、何かあったのだろうか・・・
そう思った時だった。
「モブ・・・」
扉の中から憧の弱々しい声が聞こえてきた。
「ど、どうした?」
たかが着替えに何が起こったというのか、俺には全く見当もつかない。
そして扉から続けて聞こえた言葉は、先ほどまで希望に満ちていた人物から出たものだとはとても思えないような内容だった。
「すまん・・・俺にはやっぱり無理だったのかもしれん・・・」
「はぁ!?」
何を言い始めるんだこいつは!?
俺は驚きを隠せなかった。
さっきまでのあいつの言葉には嘘偽りはなかった、それは俺自身感じ取っていた。
ではなぜこいつはいきなりこんなことを言い始めたのか・・・それがわからない。
だが・・・立ち止まって弱っているとき、そっと手を差し出してやるのが友達ってもんだ。
ここは俺が助けてやらねば。
「なぁ憧・・・いきなりお前に何があったのかわからねぇけど・・・俺はお前なら何だってできるって思ってるぜ。だってよ・・・お前は俺と同じモブキャラなのにいつだってバカみたいな夢を本気で語れるんだ・・・俺は心の中で諦めちまってるからそんなバカみたいなこと口にできねぇ・・・でもそんなバカを本気で取り組めるようなやつが主人公になれるんだ」
そう、俺はそんなこいつに少しあこがれていたんだ。
「だからよ・・・お前はきっと主人公になってバカみたいな夢をかなえられるさ」
自分が諦めてしまった夢を追い続ける、だから俺は夢を託すという意味でもこいつを応援したくなるんだろう。
そんな俺の言葉に対するこいつの答えは
「違う・・・俺じゃダメなんだ・・・」
相変わらずの弱腰だった。
ここで引いてしまってはダメだ、コイツを立ち直らせるのが友達である俺の役目だ。
「ダメって・・・お前ならきっと!」
「違う!そういう心意気みたいな感じじゃなくて!」
「え・・・?」
「・・・さっき・・・俺の体を改造しただろ・・・」
「あ、ああ・・・でも余計につけられた先輩のチ〇コは先輩に返したんじゃあ・・・」
「・・・先輩のチ〇コは先輩に返した・・・でも・・・それ以外はそのままなのさ・・・」
「え?・・・ッ!まさか!?」
「あの時上がった俺のチ〇コのパラメータはそのままということ・・・」
次の瞬間更衣室の扉が開き、短パンとユニフォームを着た憧が悲しそうに立っていた。
そして・・・
「そう・・・短パンが短すぎて・・・どう穿いてもはみ出しちまうんだ・・・チ〇コ」
憧のチ〇コも悲しそうに勃っていた、そして・・・ズボンの裾からはみ出していた。
「・・・なんか・・・ゴメン・・・」
俺は目からあふれ出す涙を止めることもできず、ただ謝ることしかできなかった。
たぶん俺はこの日の涙を一生忘れることはできないと思う。
こうして・・・一人の少年の夢は、静かに潰えたのだった。
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