第42話 戦隊ヒーローだって修行くらいする5

「とりあえずソレを隠しなさいよ!!」

レディ・ダークは真っ赤になりながら視線をブルーから逸らしている。

悪の幹部にチ○コを晒し出す正義の味方というわけの分からない構図だ。

こうなってしまうとどちらが悪で正義なのか判断ができない。


「ソレ?何のことだ?はっきり言わないとわからん」

そんなダークに対し、ブルーは何も恥じることは無いと言いたげな態度だ。

「そうですよー、ちゃんと言わないとブルーもわかりませんよー」

更に呼応するようにグリーンも口を出してきた。

「そ、そんなの・・・こ、股間についているヤツよ!」

「え?どこについているナニのことですか!?名前を言ってもらわないとわかりませんねぇ~」

グリーンはニヤニヤしながら話し続けている、明らかに楽しんでいる様子だ。

「そうだ!包茎でなくなった俺のカラダに隠すような部位は無い!」

それに対しブルーはなぜ隠さなければいけないのか本気で分かっていないようだ。

「だから・・・その・・・手術した部分よ・・・」

「だからどこをどうして欲しいのか聞いてるんですよ~?ねぇわかってますぅ~?」




「ああああああああ!もう!お○んちんを隠して欲しいって言ってんの!!!!!」



グリーンの煽りに耐えられなかったのか、ダークは怒りでプルプルと震えながら周囲に響く大声で叫んだ。

必死に言わないようにしていたその単語を。

そしてそれを聞いたグリーンは

「はぁい!レディ・ダークのお○んちん発言いただきました!」

にっこりと、満面の笑みで録音アプリを起動したスマートフォンを手にしていた。

「えっ?あ、アンタそれ・・・」

先ほどまで真っ赤だったダークの顔が一気に青くなる。

「ええ!もちろん録音しましたよ!!いやぁ、なんたって悪の組織アクギャークの女幹部のお○んちん発言なんてなかなか聞けませんからね!」

「ちょっ、アンタそれ消しなさいよ!」

「大丈夫です!ちゃんとツ○ッターにアップしておくんで!」

「いやだから消しなさいって言ってんの!」

グリーンは喜々としてスマートフォンで音声ファイルのアップ準備を進める。

その姿はまさしく、話題になりそうなものは誰が傷つこうとアップせずにはいられない、現代社会におけるソーシャルメディアの闇そのものであった。

「このっ!!その携帯叩き壊してやる!」

それを黙ってみているダークではない。

手に持っているムチで攻撃をしようとするが、

「そうはさせるか!オレの仲間には手出しさせないゼ!」

ブルーにがっちり手首をつかまれているためどうすることもできない。

「くっ・・・放しなさ、キャァァァァァァァァ!また見ちゃったァァァァ!今までパパ以外の見たことなかったのにいいいいいいいいいい!」

つかまれた手を振りほどいているうちに、ブルーのアレがブルンブルンゆれているのを見てしまった。

意外と中身は初心な女の子のようだ。

「ほ、ほんとにやめなさい!やめないとアレよ!その・・・アレするからね!」

悪の幹部とはいえレディ・ダークも1人の女の子、ネットの海に自分のお○んちん発言が残るのは嫌らしい。

そんなダークの頼みをグリーンは易々と無下にする・・・と思われたが、

「しょうがないですねぇ・・・じゃあこの音声を編集して聞かれても恥ずかしくないようにしますよ」

「え?ホントに?」

なんと意外なことに自ら譲歩したのだ、あの腹黒グリーンが。

予想外の展開にダークはポカンとしている。

「ええ・・・まぁ悪の幹部とはいえ女の子が嫌がることをし続けるなんて正義の味方以前の問題ですしね」

「そ、そう・・・それならまぁ・・・」

正義の味方はそもそも、女の子の発言をわざわざスマートフォンで録音しないのでは?とダークは思ったが口には出さないことにした。

グリーンはポチポチと慣れた手つきでスマートフォンを操作し、

「よし!こんなカンジでどうですか?」

グリーンは画面の再生ボタンをタッチし、音声が流れ出した。



『ああああああああ!もう!お○んちん 欲しいって言ってんの!!』



「貴女みたいな淫乱女幹部にしてみたら、こんな発言恥ずかしくもなんともないですもんね!」

「クソがああああああああああああああああああああああああああああああ!」

グリーンの顔はマスクで見れないがきっと邪悪な笑顔をしてるにちがいないだろう。

声を聞くだけで楽しんでいることが伺える。

そんな様子を見ていたレッドが誇らしげに大声を張り上げた。

「どうだ!グリーンの精神攻撃の味は!グリーンは今まで以上に相手の心を折れるように、この1ヶ月間数多くのグラビアアイドルと地下アイドルのアカウントを暴言と正論で炎上させてきたんだ!」

「やっていることが悪質なアンチじゃない!!正義の味方がこんなことしていいの!?」

「ざんねんでしたぁ~、僕のやっていることは現代の法律では犯罪に入りません~」

「こいつ・・・!」

ダークはこの世に法で裁けぬ悪が存在することを身をもって学んだ。



「この音声ファイルをネットに流出させたくないなら・・・そうですね土下座でもしてもらいましょうか?」

「くっ・・・」

明らかに発言と立場が逆転してしまっているが、今現在正義の味方が悪の幹部を追い詰めているのである。

だが正義の猛追はここで更に勢いを増す。

「いいや、そんなことよりも早くこのオレの完璧な裸を見てくれ!」

「いやいや!オレにムチを振るうのが先だ!」

「कृपया गंध की गंध करें!」

レッド、ブルー、イエローグリーン、4人の男が一斉にダークへと詰め寄る。

全身タイツを来た4人の男がボンテージ姿の女性を追い詰めるという小さなお子さんには見せられないような状況だ。

ダークも強気を装っていたが、

「うっ・・・や、やめて・・・」

徐々にその仮面が剥がれてきた。

だが正義は止まらない。

「土・下・座!」

「裸!」

「ムチ!」

「एक गंध!」

片手をつかまれてダークは逃げることもできない。

近づいてくる男たち。

「う・・・うわああああああああああああああああああああああああああああああああああぁん!助けてええええええええええええええええ!」

ダークの目から涙が流れたそのときだった。


「いい加減にしなさーーーい!!」


ピンクの怒声によって全員が一斉に動きを止めた。

「な、なんでですかピンクさん・・・僕たちは悪を成敗しようと・・・」

先ほどまでのテンションはどこへいったのか、急にグリーンがおどおどし始める。

「いくら悪の幹部と言えど女の子を寄ってたかって泣かせていいわけないでしょ!」

「えっ・・・すごい・・・正義の味方が正しいこと言ってる・・・」

ダークはあまりに追い詰められていたのか当たり前のことを言った。

いや、この場合は当たり前ではないかもしれないが。

ピンクは他の4人を押しのけ、ブルーの手を解き、ダークをそっと抱きしめた。

「怖かったよね・・・ごめんね?いくら正義の味方とはいえやっていいことと悪いことがあるよね?」

「や、やめろ・・・私は・・・アクギャークの幹部・・・なんだぞ・・・」

ダークは久しぶりに触れる人の優しさに戸惑っていた。

ほのかにピンクから香る優しい臭いがダークの心を落ち着かせる。

「うんうん・・・そうだよね・・・そうやって強がらなきゃいけなかったんだよね・・・でも、もういいんだよ?」

ダーク優しく抱きしめるその姿はまさしく聖母のようであった。

そして、そんな優しさに触れたダークは

「ヒック・・・あだじ・・・ぼんどばぁ・・・ごんなかっこう・・・ヒック・・・じだぐなかったぁ・・・・」

思わず泣き出してしまった。

先ほどの恐怖から出る涙ではなく、安心から出る涙。

そこにいたのは悪の幹部ではない、1人の悩める女の子であった。

「うん・・・うん・・・わかるよ・・・つらかったね・・・だれもわかってくれなかったのね?」

「う゛ん゛・・・・おっ、お金がいっぱいもらえるいいバイトがあるって聞いてっ、ヒック、気づいたらこんな格好に・・・でも、わだじ、ホントはい゛や゛でっ・・・・」

「そっか・・・1人で戦ってたんだね・・・でももう大丈夫、私がいるからね?」

「う、うわああああああああああああああああああああああああああん!」

ダークはピンクの胸で泣き崩れた。

「・・・・」

先ほどまでこの少女を追い詰めていた四人も、自らの行動を振り返り、反省した面持ちだった。

武力ではなく、言葉で、愛で戦いを収める。

これこそが正義の味方が取るべき解決法なのかもしれない。


「うっ・・・ぐすっ・・・」

「あぁ・・・泣き疲れちゃったのね・・・じゃあゆっくり休憩しないと・・・そうだ!あっちにあたしの車が停めてあるからそこで一休みしよう?ね?」

「えっ・・・?でも・・・」

「大丈夫!大丈夫!女の子同士なんだし危ないことは何もないって!ね!ほら!さきっちょだけでいいから!ね!」

「う、うん・・・」

そう言ってダークはピンクに連れられ岩場の向こう側へと消えていった。

そして先ほどまで戦闘していた場所に4人が残される形となった。

静まり返った空気の中、レッドが会話を切り出した。

「じゃ、じゃあ解決したわけだし俺たちも帰るか!」

「そう・・・ですね・・・」

他の三人も同意し、基地へもどろうとしたとき、ふとブルーが疑問に思ったことを口にした。

「そういえば・・・ピンクはこの一ヶ月間どんな修行をしていたんだ?」

「えっと・・・僕も知りませんね・・・」

「मुझे नहीं पता」

「ああ、オレは聞いているぞ確か・・・


『マジック○ラー号SP!一ヶ月間全国の男子・女子大生が食べ放題!よりどりみどりのバイ♂♀キング!』の撮影をしてたって言ってたな」


シーン

先ほどとは違う静寂が場を包む。

そんな中グリーンが恐る恐る口を開く。

「た、確かピンクさんの車って・・・マジック○ラー号・・・でした・・・よね?」

その質問に対しレッドが答える。

「・・・そうだな」

全員が気づいてはいけない真実に気づいた、そのときだった。



『なにするんですかああああああああああああああああああああああ!』

「「「「!?」」」」

岩場の向こうからダークの叫び声が聞こえてきた。

4人が声の発生源と思われる岩場の向こうへと言ってみると、そこにはドアが開けっ放しのマジック○ラー号が停めてあった。


『ふふふ・・・大丈夫、大丈夫、怖くないよ・・・?』

車の中からピンクの声がしてくる。

どうやら興奮のあまりドアを開けっ放しにしてしまったようだ。

『そ、そんな・・・だってアタシこういうの初めてで・・・』

『フフッ・・・かわいい・・・アタシに身を任せて・・・』

『ああっ・・・そんな・・・そんなとこ触られて・・・えっ?ダメッ!そんな機械使われたら!・・・ああ・・・・おかしくなりゅううううううううううううううううううううううううううううう!』



4人は顔を見合わせドアをそっと閉じた。




そして日曜朝のテレビでこの戦いを見たモブオは今後5人へ余計なアドバイスをしないと心に誓った。





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