8-3
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ルスターク川を越えて、そのまま市庁舎と聖母フラウエン教会を通過。マリアノフ宮殿の手前で曲がり第一通りへ。第一正門の前に、ロマノフ大聖堂がある。大聖堂の入り口に続く大階段。馬車が三つほど止まっていた。
「急ぎの集まりらしいな」
それを見てアンナがいった。
「たぶん俺たちの見立ては正しいだろうよ」
エリオットは半分呆れていた。「今夜は運がいい」
衛兵が二人いた。二人と目が合うと、近づいてくる。
「貴様ら、何者だ」
衛兵の敵意むき出しの声。近づいてきた。
「信者だよ」とアンナ。「熱狂的な信者だ」
「そうだ。俺たちはめちゃくちゃ信者だよ。信仰心が抑えられない」
「ふざけるな」と衛兵の一人。
「気が立ってるな。相当な大物が中にいるのか?」
アンナがいった。
「そんなこと答える必要ない」
もう一人の衛兵がいった。
「どうしてどっちも俺たちを嫌うんだよ」
「怪しい者だからだ」と衛兵。
「ルーベンにアンナとエリオットが来たと伝えろ、クソボケ」
アンナが衛兵の肩を掴んで力を込めた。衛兵は痛みに耐えきれず膝をつく。
「おい、貴様」
もう一人の衛兵が剣を抜こうとするが、その手をエリオットが制止する。
「やめとけ」とエリオット。「長生きしたいだろ?」
「返事は?」
アンナが肩を握る手に力を込めなおす。
「貴様、斬るぞ」
エリオットの忠告も空しく、衛兵が剣を抜いた。アンナに刃を向ける。だがアンナは一向に手の力を緩める気配がない。
「二人とも離れろ」
大聖堂の扉が開いた。中から男が出てきた。「私たちの客だ。剣を収めろ」
男の一声で、衛兵は殺気を消し、鞘に剣をしまう。
男は紫色のマントに手首には腕輪、十本の指には三つの指輪をして、首から何か大きな飾りを下げていた。
「すまない。アンナ君にエリオット君。どうぞこちらへ」
男がいった。
「誰だ、あいつ」とエリオット。「名前も名乗らない」
「すごく偉い男だろ」
アンナがいった。
「ま、名乗らないってことはそういうことだよな」
ロマノフ大聖堂の中へ。
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