34「ベア・ナックル」

 ベレッタと男は間を詰めようとしない。

 「どうした?来ないのか?」

 「それじゃあ、私からいきましょうか」

 ベレッタは強く踏み出す。

 手を男の頬に。

 次に胸に。

 そしてこめかみに。

 これらを素早く行い、間を取る。

 「なるほど、良い場所だ」

 「まだまだよ」

 今度は側面へ回り込む。

 だが、顔に男の拳が。

 ベレッタは地面に吹き飛ぶ。

 直ぐに体勢を立て直した。

 その顔面にもう一度拳。

 頭を振り、何とか避ける。

 反撃。

 男の首に手刀を入れる。

 一瞬、怯む。

 そしてもう一度、続けざまに胸とこめかみに手刀を入れる。

 そして間を取る。

 「素早いが、力がないな」

 「ええ、貴方とは相性が悪いようね」

 男は一気に間を詰め、殴る。

 ベレッタはそれを避け、腕に手刀を入れる。

 更に顎、頬にも攻撃を加える。

 男は苦しい表情を見せた。

 「でも効いてるでしょう」

 「それはどうかな!」

 男はベレッタに突進する。

 そして壁に突き飛ばされた。

 ヘルメットの上から、後頭部に強い衝撃。

 ベレッタの視界が一瞬暗くなる。

 その中で、男は顔面を殴っていく。

 ベレッタはその場に倒れる。 

 起き上がろうとするも、それはできなかった。

 男はベレッタの上に馬乗りになっている。

 「死ね!」

 男は拳を振り上げる。

 ベレッタは足を上げ、男の首を掴む。

 そしてそのまま床に力強く振り下ろした。

 今度はベレッタが馬乗りになる。

 そして男の顔面に拳槌を入れる。

 「終わりよ!」

 もう一度。

 男は抵抗を見せなかった。

 死んではいない。

 気絶しているだけである。

 「他の方は、どうなのかしら…」

 ベレッタはそう言って、その場に倒れ、呼吸を整えた。

 

 少し前。

 扉を開けたカービンはあらゆるものを脱ぎ捨て、軍服のみになった。

 目の前には、何もない部屋に男が椅子に座っていた。

 「拳を構えろ。やるぞ」

 男は椅子を回し、カービンの方を向く。

 「あんたか。なら良い」

 「ああ、俺もだ。お互い全力でやれそうだ」

 男は立ち上がり、椅子を壁際に蹴り飛ばす。

 男も既に軍服のみだ。

 「最近はこうゆうのもしてなくてな。楽しみなんだ。失望させてくれないでくれ」

 2人は拳を握る。

 

 殴りかかる。

 2人の拳はお互いの頬に当たった。

 そしてもう一度、間合いを取る。

 カービンが腹を殴る。

 すると、男が顔面を殴る。

 続いてもう一度顔面を殴ろうとする。

 その拳をカービンは止める。

 そしてその拳を引き、男の顔面を殴る。

 男は後ろに下がり、口の血を拭う。

 「やっぱりやるなあ、ボスが見込んだ男だ」

 男は殴りかかる。

 カービンはそれを避ける。

 そして男の脇腹に拳を入れる。

 

 坊主の男は前かがみに倒れ、膝をつく。

 若きカービンはその顔面に蹴りを入れる。

 「お前ごときに俺は倒せん」

 その目に光はなかった。

 そう言って、荒れた路地を抜ける。

 カービンはそこで別の男と強く接触した。

 カービンはふらついたが、男は微動だにしなかった。

 「おい、お前何者だ?」

 カービンは過ぎ去ろうとする男を止める。

 「私か?」

 「お前、俺と喧嘩しないか?」

 「どうして?」

 男は体格が良くかった。

 「その身体といい、いまさっきといい。かなり鍛えていそうだな」

 カービンは男に殴りかかる。

 だが、その拳は男には届かなかった。

 カービンはその場に倒れていた。

 「どうした?」

 「この野郎!」

 その後はその繰り返しだった。

 「戦いを望むか?少年」

 男は手を差し伸べる。

 「俺は軍人だ。お前がその気なら、軍に入れさせてやろう」

 「そんなことできるのか?」

 「ああ。俺のことはボスと読んでくれ」

 カービンはボスの手を握った。

 その目には久しぶりの輝きがあった。

 

 カービンは男の顔面に拳を入れる。

 男はその場に倒れた。

 「やっぱ強いな」

 軍服を着たカービンは、その場に座り込んだ。

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