第1節「ブロックカウント部隊」

32「パラサイト・イヴァ」

 両側に建物が建つ中、マイケルはバンを走らせる。

 その目の前に、人が見えた。

 マイケルは人を確認しようとする。

 「まずい!」

 マイケルは人がいるのを確認するとハ、ンドルを切り、十字路を曲がろうとした。

 だが、その後ろ数センチに爆発が起き、バンはそのまま吹き飛ぶ。

 マイケル達はなんとかしてバンから脱出した。

 そして銃構える。

 「あれは誰だった?」

 「ボスだ。間違いない。ここを離れるぞ」

 マイケル達はそこから離れる。

 

 なにかがおかしい、マイケル達がそう感じたのはすぐ事だった。

 そしてその原因はほどなく分かった。

 周りにいるゾンビはマイケル達に気付いているはずだが、襲ってこないのだ。

 「どうなっているのでしょうか?」

 「ガルーダの『虫が弱くなっている』の意味はこうゆうことかしらね」

 マイケルに無線が繋がる。

 「儂だ。ガルーダだ」

 ガルーダはそれまでとは違い、声が弱々しくなっていた。

 「そうしたんだ!?」

 マイケルのその問いかけにも、ゆっくりと答える。

 「誰かが毒を盛ったのだ。そして、虫たちの自由を奪った。いや、お主達には、これで良かったのかもしれない」

 声はだんだんと震えが強くなっている。

 「おい!何があったのか教えろ!」

 「儂は何も知らない。ただ知っているのは、もう終わりだということ。この体は虫によって生きていられた身。それではな」

 「おい!おい!」

 「本能のまま生き、やるべきことをやるのだ」

 それ以降、マイケルがどれだけ問いかけても、帰ってくることはなかった。

 マイケルは無線を切る。

 「無性愛者に、本能のままに生きろか。それよりも」

 「『毒』の意味ですね」

 そうだ、と1言言った。

 「でもまあ、こいつらが襲ってこなくなるならいいんじゃないか」

 「ということはだ、このエピデミック、もう終わりに近いということか?」

 「ああ、そうかもしれない。だが俺等にはやらなくてはいけないことがある」

 マイケルはアマンダに無線を繋ぐ。

 「アマンダ、聴こえているな。ボスは俺に自由になれと言った。俺達はそれに答えに来たぞ」

 しばらくしてから無線の向こうから声が聞こえた。

 「ごめんなさいね、こっちから声を送ることは出来なかったの」

 アマンダはそのまま続けて言う。

 「私に伝えなくていい。ただボスを倒しに行きなさい」

 「なぜ俺が、ボスを倒さなければ?何故ボスは、俺に自由になれと?」

 「自由にさせたい理由は私にも分からない。貴方がボスを倒す理由は簡単。味方である貴方達に銃口を向けた。それだけで理由になるのよ」

 それは知っているでしょう、ともうひと押しする。

 マイケルは舌打ちを一つして、冷静になろうとする。

 「それともう一つ。ボス達が何をしているか分かるか?」

 「いいえ。ボスは現地にいるけど。私はそこにはいない」

 マイケルが嘘だろと言っても、アマンダは本当だとしか言わない。


 マイケルは諦め、別の話題を出した。

 冷静さは取り戻していた。

 「ゾンビが俺等を襲わなくなった。ガルーダによれば『毒』を盛られたそうだ」

 「『毒』を盛られた…どうゆう意味だろう?さっぱり分からないわ」

 「案外そのままの意味かもしれませんね」

 マイケルはゾラキに近寄り、無線機を向ける。

 「例えば、虫にしか効かない活動を抑える毒とか」

 「毒だとしたら広範囲過ぎる」

 「それじゃあ…」

 「ならこうはどうだ」

 カービンが割って入る。

 「虫は感染度の高いウイルスによって活動が抑えられているというのは?」

 「もしそうだとしたら、ウイルスを作り、散布したやつは誰だ?」

 「誰でもいいでしょう。このエピデミックを抑えるのが目的だと思いますから」

 「なるほど、確かにそうね。よし、マイケル、ボスを倒しなさい」

 「なぜ俺なんだ」

 「貴方にしか出来ないから」

 「親も同然だぞ」

 「ボスは貴方の親じゃないわ!」

 アマンダは無線を切る。

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