21「終わらない冒険と失われた宝」

 床は崩れ、マイケル達はその下の宝があるはずの部屋に落ちる。

 だが、その部屋の床も衝撃により崩れてしまった。

 マイケル達は更に下のマルコ達が居る部屋に着地した。

 多くがその場に倒れてしまう中、2人だけその綺麗に着地していた。

 エルドとスタイヤーだ。

 

 だが、肝心の宝は降って来なかった。

 穴が空いているのか、光が差し込んでいた。

 「マイケル!何があったんだ!」

 「聞こえただろ!爆発だ!スタイヤーが仕掛けた!」

 エルドは槍を右手に持ち、スタイヤーを向いている。

 『おめえはサーイの掟に逆らった』

 「掟だと?そんなものはどこにも無かった!」

 『これは文にして書き出すものじゃない!語り、受け継ぐものだ!掟に逆らった者はどうなるか分かるな?』

 エルドはそう言って槍を構える。

 「それは死刑ということだな」

 『そうだ』

 「ここで死なん!必ず宝を手に入れる!」

 スタイヤーはハンドガンを取り出した。

 

 スタイヤーが銃を構えようとするが、それより先にエルドは槍でその銃をはたき落とした。

 そしてそのまま突く。

 スタイヤーは体をひねり、避けようとするが、槍はスタイヤーの右腕をかすった。

 スタイヤーは左腕でエルドの腹を殴る。

 腹の中央にそれを食らったエルドは、槍を横に振り、スタイヤーを吹き飛ばす。

 2人は立ち上がる。

 エルドは槍を構え、スタイヤーに向かって全力疾走する。

 『うおおおおお!』

 スタイヤーは槍を蹴り上げ、飛ばそうとする。

 しかし、槍は飛ばず。

 代わりに血が飛び散った。

 槍はスタイヤーの腹のど真ん中に刺さる。

 スタイヤーは声も出せず、その場に倒れた。

 槍を抜き、今度は頭に突き刺して抜く。

 エルドはその槍を地面に置くと、ゆっくりと手を合わせ、数十秒目を閉じた。

 『向こうでは改め、幸多からんことを』

 最後にそう言い、目を開ける。

 

 マイケル達は、エルドに駆け寄る。

 「エルド。こいつはどうゆう掟に逆らった?」

 『祖先を思うこと。自分の利益を1に考えないこと。その2つだ』

 「その2つでか」

 『それが己等、サーイ族だ。こいつは言った、自分はサーイ族だと』

 「掟なら仕方ない、それに。スタイヤーは素行が悪かったらしい」

 「まあ、それはいいでしょう。それより、宝はどうでしょうか?」

 マイケル達はあたりを見回す。

 「なさそうだけど、どうします?」

 「ここにも、あっちにもない。まさか…」

 「心当たりがあるようね」

 「ええ、サーイ族は外敵から宝を隠した。それがここ、だけど宝はなかった。どこの文献にも、ここから宝を取ったという記録はなかった。でも1つだけ、気になる文献があった。簡単に言うと、この地から出港した船が行方不明になったということ」

 「その船を今度は探すと」

 「そうなるね、ほら、そこにとても元からあったようには思えない穴があるだろう」

 アンが指差す方向には、丸い穴が空いていた。

 「あそこから奪っていったのね」

 「そんなことよりも、早く出よう。腹も減った」

 「それじゃあ、そうしよう」

 マイケル達は壁を登り、その穴から外へ出た。

 

 出た先は海岸、砂浜だった。

 「これからアンはどうするんだ?」

 「一回戻ることにする。そして装備を整えて、その船を探すよ。ポイントはある程度しかない」

 「それじゃあ、ヘリを呼ぶ」

 マイケルは端末を操作した。

 数分後、ヘリが西の空から来て、マイケル達が指定したポイントに着陸した。

 「それじゃあ、何ヶ月後にはあたしの名が世界に出ることを祈るよ」

 「最後に聞きたい、お前は何故宝を求めてる?」

 「富と名誉、そして何より、冒険してるときの興奮よ。私はその時、真に自由になれる」

 「…そうか。ありがとう。頑張ってくれ」

 「そっちこそ頑張って」

 マイケルとアンは握手をした。

 扉を締めると、ヘリは来た方向へ飛び立っていった。

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