7「虫をみるひと」

 エルドは全員が下に降りるのを確認して、また上に登った。

 何をするのかと思ったら、岩で穴を塞いだ。

 日の光が閉ざされ、真っ暗となった。

 「エルド、暗いが大丈夫か?」

 『そうだな、松明を持ってくれば良かった』

 マイケル達は端末を操作し、ゴーグルのライトを起動する。

 『おお、すまない』

 エルドは歩き始めた。

 遺跡と言うには装飾や、模様などが施されていなかった。

 

 しばらく進むと、開けた小部屋があった。

 もう通路はなく、横には模様が施されている。

 天井には、人が1人も入れなさそうな穴がいくつか空いている。

 わずかな光が差し込まれる。

 

 その光の棒の下に、初老の男性が1人、あぐらをかいて座っていた。

 白髪を多く生やした男性だ。

 「誰だ?あんたらの村の奴か?」

 『いや、知らない』

 「おい、誰だお前さん?英語は分かるか?何か言ってくれ」

 男性はゆっくりと口を開いた。

 「英語は分かる。若い頃に勉強をした」

 「分かるのね。あなたは誰?何でこんな所に居るのかしら?」

 「話は長くなる。良いか?」

 「大丈夫だ。話してくれ」

 男性は頷き、話を始めた。

 「私はガルーダ・ブローニング。15年前、私は街でゾンビと戦っていた。その途中、ゾンビに腕を噛まれてしまったのだ。幸いにも軽い出血程度で済んだが、噛まれたことには違いない。私は仲間を離れた。探索していると、死体の中に1つ、知らない兵士のが混じっていた。その兵士は、注射器を持っていた。医学部だった私はその注射器を打ったのだ。その後私はサーイ族の村にさまよい着き。そして運良くここへ辿り着いた。通常なら、街を出た辺りでゾンビになっているはずだった。だが、私はなっていなかった。あれはワクチンだったのだ。そして私は、ここに来て数日後に気付いた。私は、ここの凶暴化した虫達。いや、体に宿している、凶暴化した虫達を操る事が出来た事に」

 マイケル達はその話を耳を澄まして聞いていた。

 「まずは虫だ、凶暴化した虫とは一体?」

 「寄生虫だ。ここの壁の文字には、動物を凶暴化させると書いてある。それが理由は分からないが、進化したんだ。人をゾンビに変えて操る凶悪な寄生虫に」

 「寄生虫か。サーイ族はゾンビ化していなかったようだが?」

 「私が操っていたのだ。人に危害をあまり加えぬようにな」

 「おいおい、外じゃ今、あの日の再来だぜ」

 「限界があるのだ。仕方ないだろう」

 寄生虫。

 今回のパンデミックの原因の一つに考えることにした。

 だが、気になることはまだある。

 『何故虫を操れるようになったんだ?』

 「それは私にも分からない」

 「そもそも噛まれて生きているはずがない。どうしてだ?感染力は強力だぞ」

 「あのウイルスは、私達が思っているより遥かに安全だ」

 「何?」

 「私は見たのだ、私の友人がゾンビの返り血を傷口に浴びたのを。だが、友人は死ななかったのだ」

 「その人に何かおかしな所は?」

 「無い。天才と呼ばれた、良き友だった」

 マイケルはアマンダに無線を繋げた。

 「こちらマイケル。聞こえるか?」

 「聞こえてるよ、どしたの?」

 「今さっき、遺跡に来たんだが、体内の寄生虫を操るという人がいる。どう思う?」

 「どう思うって、冗談としか思えない。本当にそう言ってるの?」

 「そうだ」

 「あまり真に受けて行動しないようにね。でも、30パーセントぐらいは信用したほうがいいかもね」

 「分かった。とりあえず今日の探索はここまでとする」

 「そうだね。それじゃ」

 マイケルは無線を切った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る