5「サーイクリード」

 この村には、ゾンビが来ていない様だが、ゾンビについて聞く。

 「お前らは、動く死体を見たことあるか?」

 『動く死体?怪物じゃなくて?』

 「俺らはゾンビと呼んでいる」

 『ゾンビ…?』

 長老は何かを思い出した。

 『15年前の事だった。1人の男が偶然この村にやって来た』

 「15年前、世界危機の時か」

 『聞くと男はその動く死体を見たという。そして男は何処かへ去っていった』

 村人達はそれ以上は知らなかったようだった。

 

  マイケル達は話していたが、カービンが奴らに気付いた。

 「ゾンビが居る」

 そこに居た全員はすぐさま外へと駆け出した。

 

 外には、10体程度のゾンビが居た。

 地面に転がっている死体とは別だ。

 『あれがゾンビと言う奴か』

 「そうだ、下がってろ」

 マイケルは銃を構え、エルド達にそう言った。

 しかしエルドが翻訳する前に長老以外の者は、その忠告を無視して槍を構え、ゾンビに向かって行った。

 『おい!』

 マルコがそう言っても、彼らは止まらない。

 ゾンビと戦っている。

 マイケル達はナイフを取り出し、彼らを押し退けた。

 しばらくして、戦闘が終わる。

 

 マイケルは端末でヘリコプターを呼んだ。

 そしてマイケルは男性達に詰め寄った。

 「何故戦った!奴らは動物と違うんだぞ!」

 翻訳ても彼らは何も言わなかった。

 『落ち着くのだ。3人共』

 長老がゆったりとマイケル達に歩いてくる。

 「3人?」

 『そうだ。こやつらはとても苛立っておる。平然としているエルドだって内心はそうだ』

 エルドは鋭い目つきをしていた。

 『村の終わりだ。仕方ない』

 「もうすぐ救助の乗り物が来る。お前らにここで死なれては俺らが困る」

 マイケルはそう言って、そこを離れた。

 

 少し経ち、ヘリコプターが来た。

 中には大勢の人が居て、あと少ししか入りそうにはない。

 「あと3人が限界だ」

 ヘリの操縦者がそう言う。

 『村が終わっても、人は終わらない。生きるのだ。老う者から死んでゆく』

 『そう言う訳にはいかない、長老。おめえから乗ってくれ』

 エルドは村長を担ぎ、ヘリに無理矢理乗せた。

 『2人も乗ってくれ。俺はこの地に残る』

 2人はエルドが乗るよう説得していたが、彼がなかなか折れないので、2人はしぶしぶヘリに乗った。

 扉を閉めると、ヘリは飛んで行ってしまった。

 「良いのか?」

 『村が終わっても、人は終わらない。人がいる限り、意志は終わらない。己は村の意志を継ぐ』

 「村の意志?」

 『サーイ族と呼ばれている己の村は、自然と共に生きてきた。だが反面、戦闘を得意とする民族である。成人の儀で戦い。祭りでも戦う。勿論動物ともだ』

 「つまりはかここに居ると」

 「少し違う、己は戦いの中で生きる」

 決意の感じられる声だ。

 「駄目だ!」

 「己は自由に生きる!ただそれを全うしているだけだ!」

 「自由?お前は村の決まりに支配されているだけだ!」

 エルドは槍の刃を取り、棒を構える。

 「己らは食わない命は殺さない。これは信条だ!意志だ!文句があるなら戦おう、それが己らの方法だ!」

 マイケルはその棒の先端を掴んだ。

 「良いだろう」

 「ちょっと、マイケル!」

 「エルド!止めろ!」

 周りが止めに入るが、2人は止まらない。

 

 エルドは棒を慣れた手つきで振った。

 上から横、下、突き。

 全部後ろへ下がり避ける。

 しかし、最後の突きでマイケルは棒を掴み、それをエルドの首に持っていく。

 そしてエルドの左手が離れると、勢い良く右手も外し、棒を投げた。

 そしてエルドも地面に投げた。

 マイケルはエルドの顔面目掛け殴りかかった。

 「おい、止めろ!マイケル」

 マルコはそんなマイケルを羽交い締めにして止めた。

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