かつて英雄と呼ばれた少女は、普通に生きてみたい。

比名瀬

〜最終決戦〜

エピローグという名のプロローグ

 その時、少女と仲間達は世界を破滅させようと企む者と対峙していた。


 これは、世界を救う戦いである。


 そう、これは、世界を救う為の最後の戦いである────


「さあ、皆。この戦いに勝って終わらせて、平和な世界で生きていこう」


 少女は、そう言った。

 鮮やかな紅い髪を風になびかせ、にこやかな笑顔で。


 少女は、剣を抜いた。

 華奢で折れてしまいそうな程に細い腕に、籠手ガントレットを装備して。


 少女は、目前の強敵ラスボスへ駆け出した。

 その一歩一歩に、全ての民の期待の重さを乗せるように踏み出して。


 少女は、吠えた。

 最後の決戦という場には似つかわしくない、覇気の感じられない涼やかな雄叫びをあげて。


 少女は、強敵と激突した。

 お互いに、この戦いには負けられない想いを秘めて。


 そして、決着した。

 敗者ラスボスは、首から下にある胴体を無くして。

 勝者少女は、全身を傷だらけにして息を切らし、立っているのも、やっとだと言わんばかりの姿になって。


 勝者少女は、笑った。

 黄金色の輝きを放つ瞳からは、大粒の涙を零して。


「終わったね。やったよ。私達、勝ったんだね」


 勝者少女は、振り返った。

 仲間達がいた方へ。


 こうして、最後の戦いは終わり世界は救われた。


 少女は、国中から英雄と呼ばれて讃えられた。

 観衆の前で、少女は改めて終戦を告げた。

 人々は歓喜した。

 その夜、国中がお祭り騒ぎとなり、少女はみんなを救えた事に安堵して、泣きながら笑った。


 その日からに、国中に平和が訪れた。


 そして英雄と呼ばれた少女は、その後、姿を消したのだった────

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