第1話 始まり

一月一五日(木) 八時一〇分 昇降口


 朝の学校。生徒たちは昇降口で自身の下駄箱から上靴を取り、外靴と履き替えて、自分たちの昇降口へ向かった。その人ごみの中で私は自身の下駄箱の前で茫然と立っていた。

「今日も・・・」

 その言葉は今までにも同様のことがあったと窺える発言に聞こえる。一週間前から私の身に不思議な事が起きている。毎朝、必ず私の下駄箱に一通の差出人不明の封筒が入っており、便箋には「Ia・Fd〝」か「Cu・Bb」のいずれかが書かれた便箋が入っている。最初は何かのイタズラと考えて無視していたが、さすがに一週間も続くと不気味に思えてくる。

「本当に何の目的で、こんなことするのだろう。しかも、何なの、この暗号!」

 今日まで続くものだから、私はこの状況に怒りを露わにした。犯人捜しをしようにも、生徒という立場である私は日中は授業、放課後は部活動と、犯人を捜す暇もない。

(友人や先生を巻き込みたくない……)

「!!」

私は背後からの視線を感じ、後ろを振り向いた。

(気のせいか……)

「封筒の件で警戒しているな……私……」

 他の生徒からの視線と考えられるが、普通の視線とは違う。ねっとりと舐められているように感じる視線だ。

「もう早く終わってほしい!」

「ま~み、な~に、怒っているの~♪」

 私が正面を向いた時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、自身の身体に違和感を感じた。

「きゃあ!」

「もう~、真美の可愛い笑顔が台無しよ♪」

 私の幼なじみ兼クラスメイトの綾子が背後から抱き着いて来た。私は彼女に抱き着いてきたことを怒った。

「いつも会う度に抱き着くないでよ!」

「う~ん、怒った顔も可愛い♪ 食べちゃいたい♪」

(ダメだこりゃ……。昔から何かと抱き着いてくるから困るんだよね・・・)

 綾子の行動に呆れかえる私。

(手紙の件は二週間くらい経てば春休みだし、二ヶ月後には卒業だから無視するか……)

 犯人捜しをしたいが、その気にはなれなく、諦める事にし、私は彼女と一緒に教室に向かった。

(本当にこの嫌な予感が気のせいであってほしい……。)

 次の日から私の日常が変わることをこの、私は知らなかった。

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