産業レビュー等

 会合がお開きになり、家路についた。

「ただいま」

「お帰り、一丸ちゃん。ご飯食べてね」

「姉さん、ちゃん付け止めて欲しいんだけど……。マスコミに嗅ぎ付けられて週刊紙に載ったら困る……」

「あら、プライベートの時くらい……いいじゃない。公式な場所ではちゃん付けしてないでしょう」

「そういう問題?」

「そうよ。あなたは可愛い弟だもの」

「いくら可愛いっていっても公職にある身なんだよ?」

「あら、呼び捨てはいけないと思っているのよ。それに貴方は、私には永遠に小さな子のような存在よ」

「僕だって……成長しているのに」

「成長は、認めるわ。でも私にはあなたを育て上げる義務があるの。」

「ごめんなさい、親心子知らずだった?」

 悪いな……と思いその日は姉さんに精一杯(親?)孝行した。


 翌朝、教室で自己紹介……

「僕は虹一丸と申します。緑に所属します。」

 後ろの席から

「虹、君は昨日学校で何の話をしてた?」

「答えなきゃだ~め?」

「興味あるな」

「政治の話だよ」

「具体的には?」

「トップシークレット」

「なんだよ、つまんないな」

 実はこいつが1年での生徒会当選者足利 尚光

「ねぇ、所属政党決まった?」

「ああ、民主だ」

 ということは……緑と統一会派組むんだろうか?

「学校の生徒会で統一会派はゴメンだ」

「統一会派のどこが不満なの?」

「そういう問題じゃないんだ。批判票を大事にしたいんだ」

 なるほど、そんな考え方もあるのか…参考にしようと思った。

「ところで、友達になって欲しいんだけど…足利君」

「奇遇だな。俺も友達が欲しかったんだ」

「「宜しくお願いいたします」」

 そうして、教室内で初めての友達ができた。友達ができたのはいいんだけど、教室内だけの友達じゃ嫌だ。と、不意に携帯が鳴り、『昨日はご苦労。来週から、工業仕分けよろしくby代表』そんなメールが入ってきた。

「おっ、総理大臣からのメールか……羨ましいな」

「ただのメールならいいけどね……仕事だってさ」

 僕はメールでいつまでにやればいいか聞いたところ、『大体……15日頃迄にやってくれ』と、返信があった。

「ほう、仕事か。そういえば虹は自生党幹事長だったな」

「足利君、一丸でいいよ。自生党幹事長になったのは自分の意思じゃないんだけど、一旦なったら責任果たさなきゃね……」

「そうか、一丸も大変だな。校内の議席だけであわててる自分とは器が違う」

 なんかすごい理解力あるんだけど……そうこうしているうちにHRは終わり、授業が始まった。

 学校の授業が終わると、夜叉節さんと話すことになりました。

「虹ちゃん、総理大臣からメール届いたわね?」

「もちろん。ところで、姉さんじゃないのに、ちゃん付けする必要あるの?」

「あら、一目見た時からちゃん付けしようと思っていたわよ。可愛いんだもん。うちのクラスで写真を見せたら、弟さん可愛いっていっていたわよ。」

「それはおいといて、本題なんだけど、産業レビューいつからするの?」

「そうね、明日からでもいいけど、今日からする?」

「早く取り掛かれば早く終わるよ」

「それもそうね」

「じゃ、前田君にもそう言っておくね」

「頼んだわよ、虹ちゃん」

 なんだか、女の人に子供扱いされるんだけど、一応、権力者なんだよね……僕。まぁ、いいか。工業レビューの内容はメールに書いてあったな……

『自動車、家電、玩具』

 な~んだ。それだけでいいのか。僕は玩具は外しちゃおうと思っていたけど、そんな考え方はいけないんだね。

 そして放課後……

「只今から工業レビューを始める。」

 司会はもちろん、防衛大臣だった。

「まず、自動車について産業レビューを始めます。」

「私は生産縮小を主張します。明らかに作り過ぎます。機械ラインの停止による品質の向上を求めます」

「「異議無し」」

 実は、補助金もらって、下請けいじめや人切りをしてたのが気に入らないんだよね……

「次は、電気機械だ」

「家電は生産縮小しない方が良い?」

「いや、俺は縮小の方向で考えた方が良いと思う」

「僕は、省エネ努力を認めて縮小が落としどころだと思う」

「外の電気機械についてはどう?」

「「「防衛大臣に一任します」」」

「では、家電は省エネの努力を認め、生産の小幅縮小・その他は大幅縮小を求めるということでいいか?」

「「「異議なし」」」

 次は玩具か……

「次は玩具だが、」

「僕はまだ、欲しいゲームソフトがあるからゲームは産業レビューの対象から外しちゃおうよ…」

「そんな訳にいかないでしょ!!」

「そうだぞ、虹。個人的な理由で除外すれば、野党から追及されちゃうだろ?」

 やっぱり駄目か……そりゃそうだよね……

「生産は縮小なんだか、子供に優先的に供給することにするというのは?」

「「「異議なし」」」

 そして、結果はその日の内に閣議で了承された。


 その頃国会では高校無償化法案の審議が、文部科学委員会で始まっていた。

「此度の高校無償化法案の要旨は、親の所得に関係なく、学習意欲のあるものが教育を受けられる様にすることである。故に、国公立はもちろん、私立に於いても1500万以下の世帯の子息・女は無償で受けられる様にする。」

 これは文部大臣の法案趣旨説明

 その後、審議が行われて、委員会採決を経て衆議院本会議に送られた。参議院でも同様の説明・審議が行われて、委員会採決を経て本会議に送られた。

 さて、姉さんだけど……予算委員会にいるんだけど、あまり忙しくなく、暇を持て余している。だから、しょっちゅう学校にいるんだ。

「姉さん、仕事は?」

「あるんだけど……あまりにも少ないのよ」

「僕、産業レビューが終わったから帰ろうと思ったんだけど、姉さんはどうするの?」

「私も帰ろうかしら、明日本会議だし」

 僕も党大会(学校内政党)なんだ。但し、勉強会の別称なんだけどね。


 そして、翌日の放課後……

「おい、虹。保健体育の予習は要らんかったな?」

「うん、代わりの教科をしなきゃだけどね」

「じゃ、それを重点的にしろ」

 それで、僕のクラスのみんなで生態学と生物分類学を重点的に勉強した。


 その頃国会では……

「与党の幹事長は全員高校生ということだが、それでこの法案を最初に成立させようとしたのでは?」

「そのつもりであれば、成立した後に任命した。」

「それでは、たまたまだと?」

「その通りである」

というふうに、審議している。



 その夜、幹事長3人で会って、食事を取ってたんだけど……

「こんな所でお食事なんていいご身分ね!!」

「い、石部さん!」

「虹に何の用だ?」

「そうよ、虹ちゃんに何の用事?」

「まあ、いいわ。そっちがその気なら、私にも考えがあるわ。覚えてらっしゃい」

 ちょっと怖いんだけど……

「大丈夫よ、虹ちゃんは私達が守ってあげる」

「だから、あんな奴なんか気にすんな、虹」



 その深夜、あるホテルで石部さんの会見が行われている。

「わたしは自生党を倒すため新党を作ります。党名は日本たちあがれです。」



 先立つこと5時間前……

「私は校内政党民主の改名を行います。新党名俺たち」

 これは足利君の会見(学校内)


 翌日の朝

 僕よりメール→夜叉節さん

『何で子供扱いするの?』

『決まっているじゃない。外見よ』

 よし、子供扱いされるなら……こっちも

『前田君と夜叉節さんってお似合いだね。僕の両親みたい^^』

 二人に送信した。

『おい、虹いきなりなんの真似だ?意識しちゃうだろ』

『そうよ、まともに見れなくなるじゃない』

 作戦成功しちゃった。

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