殿!!俸禄は足りておりますか!?

俣彦

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私の名は長谷部元親。四国は土佐の国中部の土豪・国親の嫡男として生まれた私は当初。見た目が色白であったことに加え、大人しかった性格も災いしてか。周りから『姫若子』と言う武将としては、全く持って不本意なニックネームを付けられ侮られておりました。その様子を心配してか父・国親も私をいくさ場へは、なかなか連れて行ってはくれず。初陣が21の時と言う。当時としては遅いデビューを果たすことになるのでありました。

 『姫若子』と呼ばれるぐらいでありますので、実際いくさ場に出て何をすれば良いのかわからず右往左往していた私に見かねたのか。

「槍は敵の目と鼻を突くようにし、大将は先に駆けず臆さずにいるもの。」

と家臣からアドバイスされる始末。

これを聞いた私は

「そうなのか。」

と恐る恐る迫り来る敵目掛け槍を突き立てたところ見事命中。日頃『姫若子』と罵れていた私の。思わぬ行動をして来たことに対し相手は

「話が違う。」

と動揺。こうなると面白いもので。私が前へ進めば進むほど敵は算を乱し逃げ出す始末。見事勝利を修めた私に対し、周りから『鬼若子』と言う新たな肩書きで呼ばれるようになるのでありました。この成功体験をもとに私は父・国親の片腕として土佐の国を転戦。国内に確固たる地位を築いたのが1555年3月現在の我が長谷部家の現状なのであります。

 ここで土佐周辺の国を見渡してみますと接している国は東の阿波と北の伊予の2か国。北の川野家は海での戦いに熟知し、瀬戸内に確固たる地位を築いてはいるものの山越えのいくさを不得手としていることもあり、こちらがちょっかいを出さない限り攻めてくることはあり得ない。一方、東の阿波の国には強大な三次家が勢力を張っては居るものの淡路島を絡めた紀伊水道の制海権争いと、畿内での政争に忙殺されていることもあり、わざわざ田舎の。東西に長く、それぞれの場所が山に阻まれ、一元的な統治が難しい土佐に兵を送るメリットを感じてはいない様子。まぁその隙を突いての今の地位なのではありますが。

そんな近隣の状況も踏まえ、父・国親と共にまずは長く続いた(その原因を作ったのは我が長谷部家なのではありますが)いくさで疲弊した土佐の国の立て直しを図るべく内政に目を向けるのでありました。

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