6-4

(おぼえてる?ここ)


彼女がゆび指した場所は、元居た家だった

正確にはその手前の雑木林の続く長い一本道で、その先が相沢の家だ

それを知ったのも、俺が好意を抱いた頃の話だけど



(覚えてる?かな。。一度来たことがあるな)


(やっぱりなー。。中学一年の時に私とここ通ったのにさ)


(いや、そんなことないよ。。。)


古い記憶を絞っても出てこなくて、その最中、ポツリと小雨が降りだしてきた

相沢が折り畳み傘を取り出して、二人の頭上に射した、それをみて。。一人女の子の姿を思い出す



(あー!女の子!確か一緒に歩いた、けどあれが相沢なのか?)


(そうよ!でも。。、棚町くんは無理強いさせて歩かせたものだしね)



(確か帰り時は暗くて、風も強くて、怖いから一緒にきてほしいって

あの時の子が相沢だったのか)



思い出してからは鮮明だった

あのときの事はとにかく怖くて、小学生上がりなのもあって余計にそう思った

相沢を送った後は、恐怖を堪えて、この道をまた走って通ったのも懐かしく思う


(棚町くん、あの後、一人で走って行っちゃったんだよね、雨も急に降りだして私に傘も貸したまま

お父さんが直ぐに車で追っかけてたよね)



あの時の自分は、暗い一本道を早く抜けたくて、思いっきり走っていた

丁度、真ん中辺りで、相沢家に車で拾われて

社交辞令な言葉と会話で和まそうと、叔父さんがなにかを話していた


(そーゆうこともあったな、よく覚えてるね?)


(覚えてるよー、これが私の初恋した時だし、この時なんだよ)


(俺はその翌年に相沢を好きになったんだな、けどもっと前からなのかもな?)



もう一度、二人で一本道を歩いてみると、今は昔ほど、怖さは全然感じなかった


薄暗い空も、風も大体同じなのに、歩幅も大きくなってる分、直ぐに林も抜けて

大人になると、目のやり場も、想像もできてしまうから、退屈に感じるのかもしれない



(好きになる前は、みんなと同じで、太ってるからとかで、目にも写ってなかった。。

でも、自分が困ったときは、都合よく視界に入るんだなって。。

棚町くんの帰り道とかなにも考えてなかった)


昔の自分を思い返している相沢の顔は、切なくて苦しそうで

俺はそんな彼女の手を握り


今も気にしていないという気持ちを

軽い気持ちで口にした


(俺もなにも考えてないだろ?そんときはきっと)



(ううん。。あの後、私怒られたからしってるよ

お礼とか、送るからとか、あの子になんで言わないんだって

お父さん、車で送ってるときに、棚町くんが震えてるの見てたんだって)








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