第3話 『妹、異世界へ』

晴人は今現在、異世界の中心街ユッピテルシティーいる──。

綺麗で大きな街だ。


「どうやったら現実の世界に戻れるんだ?」


異世界に来たはいいものの晴人は現実の世界にどう戻れるのかネキャットに訪ねた。


「あそこに行くニャ!」


西北側を指差した先には街のド真ん中にそびえ立つ大きな塔『アステール』がある。

上階は狩猟型の階層となっており下階は現実と異世界の出入り口だ。


この異世界の時間軸は現実の世界に比べ2倍も長い。

1日は24時間であることは現実の世界も異世界も同じで、時間の感覚だけが長く感じる。


今現在の現実世界では18時だが同じ18時でも異世界では16時ぐらいの空の明るさになっている。


晴人は突然ネキャットに妹を連れて来ていいか聞いてみた。


「妹をここに連れて来ていいか?」


「別にいいけどニャ。」


「んじゃ明日また来るは!」


「ンニャ…」



アステールに向かった晴人は下階に降り現実世界へと戻る──。



『ただいま〜』


家に帰ってみると「おかえり〜」という返事もなくそのまま晴人は2階に行き、妹の部屋の前に立つ。


”コンコン…”


妹のドアをノックする。


「俺だけどちょっと話があるから出てこいよ!」


”ギー…ィー….”


少しだけ空いたドアからの隙間風が異常に寒く感じた。

兄、晴人は妹の部屋の気温の寒さが気になりつつ、妹の姿を見る──。


『なに!?お兄ちゃん…』


中学3年生の妹(蒼井 雛)は身長が小さめでツインテールの茶髪ロングヘアー。

いつもFPSのゲームばかりしている引きこもり。

母の事故死から恐怖や絶望感で引きこもりになってしまった。


「俺と一緒に異世界に行ってみないか!?」


兄は唐突すぎるように言ったのだ。


「そんな…ファンタジーゲームみたいな世界なんてあるわけ…」


「あるんだよ!秋葉原に…。」


「はい。はい。どうせ何かのイベントでしょ…」


妹は喋りながら部屋に戻ろうとしてドアを閉めようとするが、

兄はドアを押さえて必死に説明する。


「本当にあるんだよ!秋葉原の路地裏っていうやつで…。」



『お前の母さんを助けたいんだ!!!』



閉まってしまったドアに大声で叫んだ。

妹はドアに背を向け、兄の話を聞いた──。


「願いが叶う石っていうのがあって、なんでも叶うんだよ!」

「母さんを助けられるんだよ…。」


『お兄ちゃんにママのなにがわかるの!?』


妹は体育座りをし、泣きながら母の事を思い出した。


「血の繋がってない私たちって一体なんなの?」


”もう…嫌だ…。”



『助けてよ…。お兄ちゃん…。』



そう言いながらドアを少し開け兄の顔を見つめた──。


兄は思った──。



”兄として”妹を守らなきゃ。”

二度と泣いた顔を作らせてはならないと──。



【翌日】



学校が終わり秋葉原の路地裏へと向かう。

異世界への入り口に入った2人。


そこには──


前回来た時に見た光景とは全然違う、地獄の様な光景だった。


空は紫色と赤色と黒色で覆われており、

街中の人達がパニックで騒ぎ立てている。


そこに突然ネキャットが猛スピードでやってきた!


「大変ニャ。緊急事態ニャ。」


慌てた表情を浮かべながら現場の説明をしたネキャット



『異世界の中心街ユッピテルシティーにモンスターが襲来したのニャ。』



突如現れたモンスターは黒い羽を生やしたライオンでアステール70階層のボス『炎王獣:ジ・ディレオン』だ。


かつて古臭い武器屋のおじいちゃんが倒せなかったボスでもあり、その階層ボスが突然現れたのだ。


ユッピテルシティーは安全地帯でありアステールのモンスターが街に現れることは決してありえない話である。


「これは一体どういうことなんだ!?」


ネキャットに尋ねてみるも返答は”わからニャい”とのこと。


危機的状況に追われる中心街ユッピテルシティー内は騒然としていてボスモンスターは火炎玉を口から放出し街の建物を壊し始めたのだ。


「あいつを倒す方法は?」


「ニャい…」


火炎玉を連発させながら晴人と雛の方へ向かって来た。


「こっちに来るぞ!!!」


運動不足ではあるがなんとか回避できた晴人


「おい、雛…。無事か…?」


晴人は周りを見るが雛の姿が見当たらない。

大声で妹の名前を叫ぶ。


暗黒に染まった空を見上げるとジ・ディレオンの口元に雛の姿が見える。

ボスモンスターは雛を口で咥え、そのまま立ち去ってしまった──。


空の色は元の青空に戻り街は少しだけ荒れた状態になっている。


「マジかよ…」


晴人は口を開けたまま、腰を抜かした状態で空を見上げる──。

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