残念だけど、私は転生先を間違えたみたい!!(仮)

登月才媛(ノボリツキ サキ)

第1話 転生先を間違えたんだけど……!

異世界転生ってね、人気でしょ?

あれね、転生先を間違えるなんて話聞かないんだけど、


ぜったい、書いた奴は生まれたことを後悔なんかしてないに決まってる。



だって………!


私が生まれ間違えたんだから!!




間違え過ぎである。

転生したことを確認して、二時間たった。

眠り疲れた。のども乾いた。力を入れても、寝返りができない。


体温は傍らにいる獣に分けて貰っている。


ちなみに、私は死んだときのことが分からない。記憶がないのである!

嗚咽が込み上げてきた。

「うううう。ううえぇぇぇぇぇぇぇん!えぇぇぇぇぇーーーん!!」


赤ん坊の泣き声だ。泣いているのは、自分。

…あれ?

これ、私の意志じゃない。


このときは知る由もなかったが、すでに魂の宿った体に生まれてしまったのである。

…そう、二重人格だ。


幼い自我がもう一つ存在し、本能のままに泣きわめいている。

ただ、この子の親が来る気配がないのだ。遠くに一人いることを確認している。


(どうして来ないの?喉も乾いて限界なのに)

必死で泣く私。それを、優しくぺろぺろと舐める獣。

犬か狼みたいな動物の様だ。


それでも親は来ない。

…かと思っていたら、一人の人が来て、私の頬を叩いた!

これ、DVなの?虐待でしょ!?

赤ん坊はさらに大きく泣く。


(…”ネグレクト”だわ。転生先も過酷ね。)


(…生き抜くために、まずは私の安全を守らないと!)


(どうやって?)


その時、私の布団が動いた。いや、獣だけどね。

慎重に私の下から抜け出し、敷物で私を包んだ。

包みをくわえ、柵を壊して獣は脱走した。


…獣は私の首がすわる少し前の状態だと気付いている様で、丁寧に運んでくれるし、洞窟に逃げ込んだ時、獣の母乳が出ることが分かったので、私はいっぱいいただいた。


(しばらくは困らないかも)


獣に助けられたことで、私の命はもう少しつながりそうである。

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