神の儂が異世界に遭難《おち》て永住する話(仮題

田奈華(たなか)

プロローグ

第XXX話 ある辺境の地にて


「フハハハハハ…よく来た。待ち侘びたぞ勇者達よ」


儂の屋敷にある吹き抜けの大広間

黒マントと仮面で全身と顔を隠し、玉座に深々と座る儂の前にまだ成人とは言えないぐらいの2人の男女を見下す。


「お前が魔王か」

男は儂に、自分の身長と同じくらいの大剣を両手で持ち此方に向ける。

黒髮のとんがり頭のが特徴的で、身長は連れ女より少し低い。

見た感じ物語童話の中の主人公キャラが出て来た感じだ。


「自ら魔王とは名乗っておらぬが…この地の長ではあるな」



「……」


連れの女は、男の背後で錫杖しゃくじょう持ち、只々儂と男のやり取りを静観している感じだ。少しは混ざれや。

腰まで長い黒髮で青いヘアバンドで前髪上げていて、若干つり目の落ち着いた可愛い女の子だ


2人の服装は軽装でとても戦闘向きでは無い。共通な点はこの世とは思えないような白い上着で、男は漆黒の長ズボンとこれもまたこの世ない材質の黒い靴を履いていて、

女は膝上ぐらいの黒と紺の格子柄のスカートで膝下迄の黒いソックス茶色い革靴を履いており、2人の服装はどこかの制服では無いか。


「まあ良い、歓迎するぞ」

「へっ。どう歓迎するんだ」

「そうだな。で最近収穫した小麦で作ったパンケーキにハチミツを添えてやろう。紅茶もどうだ」

「……はぁ?」


男は気抜けたような声が出る。

まあ、そうだろうな

この場面では似つかわしく無い歓迎方法だ。

……まだいけるか?




「……パンケーキ……ハチミツ」


女はピクンと顔上げ、ヨタヨタと男の前にでる。

やっぱこの手に女は釣れるな〜

てか、この子最初から気づいてるな。



「ちょ、待て。奴の言葉を信じるのか」

「うん、信じる」


おい即答

まあ、まあこれはこれで面白くなりそうだ。


「チクショウ‼︎。おい魔王!。妹に何をしやがった」

「儂は何もしとらん。娘よ。内のメイドが準備終わったら呼びに来る手筈だ。それまで大人しく待っておれ」

「うん、わかった」


聞き分けのいい妹さんな事。


「元に戻しやがれ。糞魔お『ガシャーン』

痛っっっっったぁぁ」

言葉を被せるように頭に錫杖しゃくじょう振り下ろされ、あまりの痛さに大剣を捨て転げ回る兄。容赦ないね妹さん。


「言葉に気をつけたほうがいいよ兄さん。呪われるよ」

「いや、呪わねえよ」


あ、やっべ言葉にしちゃった。

いやまあ。機嫌損ねると呪う身内は知ってますが、こんないい子達に呪いなんて儂はしない。断言してもいい。


「痛っ。何すんだよ」

「はぁ、少しお痛がすぎますよ」

「あはは、いやあ、少しやり過ぎたかな」

「え?え?」


溜息しながら、此方を向く妹さん。

もう少し楽しみたいのだがしかたがない。

突如の口調の変化に対応しきれないようで

可愛い反応してくれるな兄君。



「どこでわかった?」

「声と雰囲気で……後はこの地に入ってからは戦闘という戦闘は無かったからですかね」

「声ね…君は人間観察が得意そうだね」

「……そんな事ないです」


妹も可愛い反応ありがとう


「どうゆう事だよ」

「あはは、改めて、歓迎するよ。大山 建人オオヤマ タケル君、大山 美琴オオヤマ ミコトちゃん」


まだ状況を飲みきれない兄を他所に、儂は仮面を取り黒マントを外し正体をさらした。


「……?…‼︎、あああああ」

遅えよ。後、人に指向けんな。その行為も呪われる可能性あるぞ。なんだって儂は_


「…お久しぶりです。神様」


__なのだから。



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