モヤモヤのせかい
ニコンEMは、友達になった。
ふいるむの入れ方を教えてもらって、
しゃったーを切る方法を教えてもらった。
れんずは50mmF1.8。
ぴんとを合わせるのはここ、ゴムのところ。
次のしゃしんをとる時は、ここのレバーをひく
そんな調子だった、
ボケボケの世界を と
クッキリの世界を
このピントリングを回す。そうしたら、
ボケボケがクッキリになって、
中にある、矢印がうごく。
劇的だった、まるで双眼鏡を覗くような、そんな体験だった。
アニメのメカみたいに、レバーをひいたり、ノブを回したり、
フィルムローディングなんて、ルパンが銃を操るみたいな、
そんなロマンが詰まっていた。
ひんやりしたカメラは、
小さい僕の手には余りあるくらいで。
とにかく、撮った。
フィルムなら親父が職場の余り物を持ってきてくれたし、
現像もしてくれた。
いい時代だった。
なすは
おはなを
むしを
はっぱを
ねこを
クルマを
とった。
なすには友達がいなかった、
地元の幼稚園には通わせて貰えなかったのだ、
遠くのエリート幼稚園に通っていたせいで、
地元の友人というものがなく、いっつも一人遊び
レゴが流行っていたから、レゴをずっとやっていた。
なすは
まちをつくる
まちにひとをおく
まちに じけん がおきる
まちは こわれる
ひとは しぬ
なすは
まちをつくる・・
ずっとこうだった、ストーリーが違うだけで、
ずっと街を作って、壊して、船を作って壊して、
城を作って壊して、これの繰り返しだった。
でもカメラは違った。
カメラは、EMは、なすは
おそとにでないと、
しゃしんはとれないよって、
いわれたから、
おさんぽをしながら
おはなを
むしを
ねこを
はっぱを
くるまを
とらないといけなかった。
カメラは、外に連れて出てくれる。
唯一の友達になった。
ピントリング操作も
フィルムローディングも
シャッターチャージも、
フィルムカウンターも、
スプリットの見方も、
すぐに覚えた。
簡単だった。
説明はできなかった、これをまわして、
ここを引いて、
そんな感じで、覚えていた。
絞りは、お外では8にしなさいと言われたので8に、
家の中では1.8にしなさいと言われたので1.8に、
難しくなかった、
緑の写真、赤の写真、黒の写真、
といった具合で、いろんな色が
色が満ち溢れた、小さい絵画が、
増えていった。
幼少期の僕のココロの隙間はカメラが、EMが
満たしてくれた。
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