禁忌の異次元魔術師
太郎田じゅんせー
プロローグ
プロローグ
I
これはまさに天国と言えるだろう。
見渡す限り白や黄、赤、青の花畑。それらが放つ
「サヨナラ貧乏!ありがとう天国!」
思わず叫んでしまった。こんなに嬉しい感情になったのはいつぶりだろう。
酒もたらふく飲んだ。まぁ、未成年だから罪悪感はあったが。それでもいつも以上に気分が良い。思わず彼女らの胸を
「お〜い、一緒に遊ぼう!」
現実世界だとただの
「そうだ。花火を見せよう。見ててな。」
もちろん本物ではない。およそ200メートル先の空気を圧縮してそれを100メートルほど上に浮かせてもとの圧力に戻す、すなわち魔法学的には爆破というプロセス。
「わ〜素敵!」
「凄いですわ!」
現実世界の物理法則が通用しないので形は少し
この後も7人で水辺や木の上、
すると、空には赤くゴツゴツした大きな岩。すぐに極楽世界は真っ暗で出口の見えないような暗黒世界へと
II
「痛えな。」
と
「何すんだよ!」
「だって……」
と、頬を赤らめながら小声で言った単語ひとつひとつを
俺はどうやら寝ている間にニヤニヤしながら意味不明な言葉を発し、あろうことか俺を起こそうと俺に跨った(
全く
そんなことはどうでもいい。それより今は……8時12分だと!?ここから学校までチャリで1時間。親は仕事で居ないし車は無理だ。補習は8時半スタート。どう足掻いても間に合う訳がない。瞬間移動が使えない限りは。よし、休もう。と独り言をしていると、
「ふざけんな!」
と言い沙耶乃は
冬は凍り、夏はお湯が出るボロアパートの水道管からは水が出ない。まぁ、格安ボロ屋だからこんなことにキレても何も始まらないので顔を洗うのを諦め、今日初めて自分の顔を鏡で見た。ノックアウトしたボクシング選手のような顔になっていた。
「おい、沙耶乃!なんつーこと、しとるんや!」
当然、無言なのである。沙耶乃にとって罪は全て俺にあり、俺の顔を殴ったのは正当防衛の一種であるからだ。じゃあ、気をとりなおして話題変えてみる。
「今日断水らしいぞ。飯はどうするんだ?」
「そんなのコンビニで買えば良いじゃない。」
「おいおい、コンビニ以外の選択肢は無いのか?例えば近所の人の家に飯を分けてもらうように頼むとか。俺の家含め、周りは貧乏だからコミュニケーションして助け合うのが大事だろ?」
「何?あたしがコンビニで飯食ったらダメなわけ?信じらんない!あんな低俗どもの飯よりかコンビニの方が何倍もマシじゃない!」
「低俗って失礼だろ!それにお前も立派な低俗だ。人にばっかり言えたもんじゃねぇだろ!」
「うっさい、うっさい、うっさーい!アンタだって周りを貧乏って言ってんじゃない!この変態ケチエロクソ野郎!」
全く女という生き物はなぜ、こうも口を開けば悪口が出てくるのだろう。とりわけ、妹は背後に親がいることが多いため、言い返して泣かせでもしたら遺産の配分を減らすぞと親に理不尽な脅しを受ける。
とにかく、こんな顔では学校に行ける訳もなく結局学校を1週間休むことにした。
III
今日は
人類がまだ地球で生命活動を営んでいた頃、地球文明の
やがて各地で内戦が
この爆破で粉々になったコンクリートやガラス、さらには地下の
これに
西暦2972年アメリカ南北大陸国が12万人
全世界で宇宙船に搭乗する50万人(うち38万人は生還可能な仮死状態にする)が平等に
西暦4000年7月22日人類はディアースへ到着した。しかし、船内は1000年の間に文明が
(中略)
一度衰退した文明は西暦5000年現在、
ここでの魔法は超能力のことを指し、魔術は
近年では魔法と魔術それぞれの勢力が対立し大きな社会問題となっている。ここ日本共和国(地理的には地球時代の日本国とほぼ一致するらしい)も例外ではなく、東側トアンキエンを中心とする東方日本魔法勢力と西側サタンポリスを中心とする西方日本魔術勢力とでテロや暴動がたびたび起きている。
俺が住んでいる田舎の近くサタンポリス市は国際魔術研究都市に指定され、魔術の研究が盛んである。そうなると当然魔術関係者が大多数で、逆に魔法関係者はごく少数という構図になる。
IV
「あぁ〜、こりゃひどいね。どがんしたらそうなったと?」
と、
「あの……お恥ずかしい話なんですが、朝妹に顔殴られて……」
「フハハハハハ、最近は
正直笑い事で済んだら医者に診せないんですけどね……ってか俺と同じ理由でここに来たのが2日間で3人いるとは。これは男女の
「ところでアンタ、
「俺の顔面を殴った妹ですが。」
「やっぱそうか。
ガチでこのジジイ趣味疑うぞ。てかアイツが雑誌に
変な話ばかりしていたジジイ医者だが
外に出れば、
「おぅ、トドヤンやないか!補習サボってここで何しとるん?」
と、背後から突然声がした。ところでトドヤンとは俺のあだ名である。由来は俺の名前を早口で言うと「トドヤン」になるらしい。全く出鱈目だ。
振り返ると級友の、金髪と四角の黒縁メガネと独特の訛りが特徴の
「別にサボってなんかねーよ。朝妹に殴られて病院に診せに行ってたんだよ。このガーゼの下がその証拠だ。それよりお前こそここで何してるんだ?」
「補習の日の4限は学校から駅までダルいダルいランニングなんよ。こんな暑い暑い日にな。
「本当は行かないと今後の予定に
「オレだってそんな趣味ないがな。このクソ暑い昼に走るのと朝妹に殴られるのとを
「俺だって骨折れたかと思ったくらい痛かったんだからな!」
「人間の骨は簡単に折れはせん。おっと、ここで道草食ってる暇ないから、じゃあな。早く治せよ、その傷。」
と言って葛はサウナのような熱気の中、走り去って行った。
補習を休むということは当然バイトも休むことになる。最近は夏休みに使う金を貯めるために働ける分だけ働いてフリーな時間がなかったので
俺が言う駅とは
佐ヶ丘駅はサタンポリス市内で最大の駅だがとにかく
俺は、そんなみすぼらしい駅を見て10年くらい前俺がこの辺りで
やはり10年経った今でも路上ライブや似顔絵などでチップを集める人は多からず少なからずいる。そんな中、俺は1人の物乞い少女と出会った。
その少女はなんというか、他の人とは違う
「やあ、困った顔してどうしたんだい?」
何で話しかけたし、俺。ただでさえ不審者に間違えられなくもない顔の俺が
「これな、誰かにボッコリ殴られたんよ。痛かったわ〜。あ、お金か?残念ながら病院代でちょうど無くなったんだよ。その代わりと言ってはなんだけど、これあげるよ。」
と言い、俺はポケットの中にあるグレープ味のアメを1個少女に渡した。炎天下でさらにポケットの中に入っていたアメは少し溶けて、小さな
俺には不思議な能力があって、周囲の圧力を調節する能力を持っている。俺にしか見えない赤い点を自分の意志と指で動かし、
「いやぁ、ベトベトのアメしかなかった。ゴメンね〜。また会ったときはもっとマシなやつをあげるからさ。」
「ありがと!」
その少女は元気に言った。そういえば、声は聞いていなかったな。
「物乞いするのはいいけど、暑いから無理はせんように。あと
「うん、わかった。」
のちにこの少女が危険な存在であるということは今の俺が知るよしもない。
あまりの暑さに俺の体はこたえ、駅周辺の散策をやめた。真夏の真昼の
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