コペルは囁く。


コペルだよ、コペル。


 うん? そうそう。

 コペルニクスだ。

 僕の身に、昨日1コペルは起こったね。

  

 ほら、あるだろう?

 発想の転換って奴さ。

 今までどうしても謎だった事が、ふとこう別方向から考えてみると解けるって事、君だってあるだろう?

 


 ちょいと現在指先を酷使した為にボロボロになっている。

 割と疵だらけで酷いもんだ。

 そんな指をふと身ながらふとある言葉を思い出していた。


 貧しさや厳しさを表現するのに、「爪に火を灯す」なんて使うだろう。

 

 うん。

 あれだ。

 

 僕はずっと、「手作業で手先を酷使しすぎると、爪から発火する人体発火現象」の事だと思っていた。

 昔の人は比喩を使うのが上手いなあ。等と。


 いやいや、

 石川啄木の詩にもあっただろう。

「働けど働けど我が暮らし楽にならざり。じっと手を見る」と。

 

 あれはきっとめらめらと発火している自分の爪を見た啄木が途方に暮れて詠ったものだったのだろうと思っていたのだ。


 自分の爪もそろそろ発火の前兆があるだろうか。

 指先を眺めながらそう思っていると。

 コペルが現れて僕にこう云ったね。

 

「あれは明かりを変えないような切迫した状況で、切った爪に火を付けて明かりの代わりするような事を言うのではないか?」


 と。

 


 積年の謎が今解けた!

 

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