鹿棚井八太郎と秘密結社のジョン
浮遊僧
第1話「金髪の男」
僕、鹿棚井八太郎はその日、ついにとある秘密結社の一員となった。
装飾の施された荘厳な重い扉……ではなく、ごく普通の……というよりかなり安っぽい……扉を開けると部屋にいた一人の男が出迎えてくれた。
「ようこそ!秘密結社キツネにつままれたヘビに睨まれたカエルへ!」
気のよさそうな金髪の白人だった。
そして今この瞬間、
ここが僕の入りたかった秘密結社キツネのしっぽではないことが判明した。
「俺はマイク・シュトラウス・ネハナビッチ・ゴードンだ。
ジョンと呼んでくれたまえ。」
さらっと言ったがジョンはどこから出てきたんだ。
まあいいか。どうせすぐ帰るんだし関係ない。
「それでキミ、名前は?」
「あ、はい。鹿棚井八太郎といいます。」
少し気まずいが、ここは正直にカミングアウトしてとっとと帰るとしよう。
「実はですね、ジョンさん」
「ふむ。ではジョンにしよう!
キミのことはジョンと呼ばせてもらうよ!よろしくジョン!」
「え、あ、はい。」
しまった。つい反射的に受け応えしてしまった。
しかも名前かぶらせてどうすんだ。
「あの、実はですねジョンさん」
「早速で悪いんだがジョン、一つ頼まれてくれ。」
駄目だ。ジョンは話を聞かないタイプだ。
「秘密結社というのは目立ってはいけない。
だから拠点と言えどもここにトイレはないんだ。」
どの辺が「だから」なのか。
そしてジョンはあからさまにモジモジしている。
「実はもうすぐジョンから定時連絡が来るんだが、
どうやら俺はここまでのようだ。これ以上は身が持ちそうにない。」
素直にトイレを我慢できないと言え。
しかもジョンから連絡がくるだと?!
「代わりに電話を受けてジョンの状況を聞いておいてくれ。
じゃあ頼んだぞ、ジョン!早ければ30分で戻る!」
遠いなトイレ!
ジョンは返事も聞かず僕を残していってしまった。
しばらく呆然とドアの方を見ていたが、ふと我に返った。
「よし、帰ろう。」
ジリリリリン
電話のベルが鳴った。
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