ギルドマスター


受付を出た俺たちは、路地裏へと来ていた。


「なんだこれは!」


盗賊たちを見るなり、同行した男はそう叫んだ。


「ちょっと、応援を呼んでくる」


そう言うと、男は受付のほうへと走っていった。

数分後。複数の男たちが来て盗賊を連れて行った。


「すまんな」


戻った俺たちに、受付の人はそう言った。


「まさか、本当に捕まえていたとは…。結構やるじゃねぇか」

「いえ、信じてもらえたようでよかったです」

「ほらよ、これが報酬だ。金貨10枚だ」

「ありがとうございます」

『そう言えば、この世界の通貨って何だ?』

『通貨は、銅貨100枚で銀貨、銀貨100枚で金貨、金貨100枚で白金貨になります。月の収入は平均で銀貨15枚程度になっていますね』

『それじゃぁ、金貨10枚って…』

『かなり高額ですね』


まじか。ふと、アイラのほうを振り向いていると、あまりの金額に呆然としていた。


「いやー、本当に助かったよ。君たちが捕まえた盗賊たちは、最近暴れまわっていたからね。とても困っていたんだよ」


なるほどそういうことだったのか。

てっきりシスが何かしたのかと思った。


『……』

『んっ?シス、どうかしたのか?』

『……』

『まさかっ!』

『いえ何も。私はただ、商人の能力を発動しただけです』

『思いっきりしてるじゃん。まぁおかげで報酬が上がったからいいか』


俺たちは、報酬を受け取ったあとその場をあとに…。


「ちょっと君たち!」


受付の人が呼び止めてきた。


「どうしたんですか?」

「どうしたか聞きたいのはこっちだよ!冒険者じゃないのか?」

「「『あっ』」」


そう言えば、冒険者のランクについて忘れていた。

てか、シスも忘れていたのか…。


『気のせいですよ』

『はいはい』

「すみません。お願いします」


そう言って、俺たちは冒険者カードを男に渡す。


「はいよ。…って君たちFランクだったのか!」

「そうですけど?」

「あの盗賊たちの中には、Cランクの冒険者もいたんだぞ!」

「「えっ」」

「ちょっと待っててくれ」


男はそう言うと、ギルドのほうに走っていってしまった。


『なんか嫌な予感がするんだが…』

『私も同感です』


それから数分後。


カァァン


突然、後ろから何者かが斬りかかってきた!のだが…。


「ん?」

「なんじゃと!」


後ろを振り返ると、剣を振り下ろした形で固まっている老人がいた。


「誰?」

「寸止めする予定だが、確かに本気で振りぬいたはず…」


老人は俺の声が聞こえていないようで、1人で呟いていた。


『マスター、自動防御が発動しました』

「えっ?もしかして、おっさん俺に斬りかかってきたか?」


だが老人は、未だに独り言を言っている。

気になった俺はマップで確認するが、表示は依然として青のままだった。

どゆこと?


「マスター、先に行かないでください!」


そう言いながら、先ほどの男がこちらに走ってきた。


『マスター?俺のことか?』

「マスター。…どうしたんです?」


その男は、老人の前まできてそう言った。

この老人がマスター?すぐにマップで詳細を表示する。


「えっ、この人ギルドマスターなの!?」

「えぇっ!」


俺の発言で、隣にいたアイラも驚く。

まさかいきなり斬りかかってくるような人がギルドマスターだとは…。


「おぉ、遅いぞ」

「マスターが早すぎるんですよ。話をしている最中に消えないでください」

「ほっほっほっ。ちょっと興味が沸いての~」


興味が沸いたら斬りかかるのか?


「ところでお前さん…、何者じゃ?」


ギルドマスターは、突然威圧をかけた声で話しかけてきたが…。

チート持ちの俺にはそんな威圧が効くはずも無く。


「ナオヤ、村人です」


俺は当然のように言い切った。


「わしの威圧も効かんとはな。なんとも不思議なやつじゃ」

「それほどでも…」

『褒めてませんよ』

「褒めてないぞ」

「…アイラ、褒めて」

「ナオヤ、すごいですね!」

「ありがとう!」

『キモいです』

「おぬしに更に興味が沸いてきたぞ。これから闘技場に行かぬか?」

「ちょっとマスター、相手はまだ子供ですよ」

「大丈夫。加減はするぞ」

「そう言う問題じゃ…」

「おぬしはどうなんじゃ?」


ギルドマスターとバトルだって!そんなのやるに決まっているじゃないか。


「やります!」


俺は、即答した。


「それじゃ行くぞ」


そう言うと、ギルドマスターが魔法を唱え始めた。


「「えっ!」」


気が付くと、俺たち3人は闘技場の中にいた。


「受付の男は、仕事があるから置いてきたぞ」

「はい」


確かに、受付の人がこの場にはいなかった。


「アイラだったかの?おぬしは、端のほうにいなさい。ここは、危険じゃからの」


そう言ってアイラを、闘技場の端まで促す。


『シス、一応アイラに結界を張っておいてもらえる?それと、俺の自動防御も一時解除で』

『分かりました。…解除しました』

『ありがとう』


よし、戦いの準備は整ったぞ。

俺とギルドマスターは互いに目を見合わせたあと、戦いを始めるべく武器を構える。

俺は剣を、ギルドマスターは木刀を…。えっ?


「なんで木刀なんですか?」

「そりゃぁ若いのに怪我させたくないからのぉ」

「気を抜くと痛い目みますよ?」

「面白い、やってみろ」

「行きますよっ!」


そう言って、俺はギルドマスターに斬りかかった。

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