ムチャとトロンの冒険譚・最終章

老人の元に辿り着いたムチャ達は、老人に何者かと問いただす。


すると老人は自らを神だと名乗り、その姿をみすぼらしい姿から神々しい姿へと変えた。


神は二人がここまで辿り着いた褒美だと言い、真実を語り始める。


旧新の魔王に力を与えた事、彼らを操り人間を滅ぼそうとした事。


ムチャはその理由を問う。


神は答えた。


神はかつて地球という星に住む人間だった。

地球の文明は時代と共に発達し、やがて人間一人一人が自らの星と世界を持ち、神になる時代が訪れた。

しかし、それだけ文明が発達しても人々は争いを止める事はなかった。


強大な科学と文明による戦争で、人類は滅びへと向かう。

生き残った人類は争いを止める方法を考え、全ての人類から感情を消し去るという案が出た。感情がなければ争いも生まれないと考えたのだ。

それに賛成した人類と反対した人類の間で再び戦争が起こり、最後には中立派だった神だけが生き残った。


生き残った神は一つの星に生命を宿し、自らの喜怒哀楽の感情を四人の女神に変えて星を管理させた。

やがて新たなる人類と動物が生まれ、そこから分岐した生命体・魔物が生まれた。

人類は知恵と数で魔物達を抑圧し、自分達のいいように振るまい始める。

それを見た神は、やはり人類は滅びるべきだと考え、魔物達の世界を作るために魔王達に力を与えたのだ。


ムチャ達は人間にもいい奴はいると反論する。

しかし、多くの醜い争いを見てきた神は、それでも人類を滅ぼすと主張し、ムチャ達に襲い掛かる。


修行によりパワーアップした二人でも、やはり神には敵わない。

するとそこに、四人の女神が舞い降りた。


女神達は二人に、人類に絶望する神に希望を与えて欲しいと言って力を分け与える。


すると、二人の中に眠っていた力が目覚めた。

それは、旧魔王が旅人だった頃に持っていた、人々の心を吸収する能力であった。


ムチャとトロンはこれまでの旅の中で、すべりながらも多くの人々を笑わせてきた。それらの笑顔は全て二人の中に蓄積されていたのだ。


二人は最後の力を振り絞り、二人の剣と魔法、そして心の全てを掛け合わせた極大の一撃を放つ。


その一撃は、二人がこれまでの旅で集めた全ての想いが込められた一撃で、その一撃こそが「ムチャとトロンの冒険譚」であった。


二人の一撃を受けた神の心から絶望が消え去り、神は自らが人間だった頃の心を取り戻す。そしてもう少しだけ人類を信じてみると決めたのであった。


神との戦いを終えた二人が下界を見渡すと、魔王軍とベリス王国軍が激突するところであった。


争いを止めたい二人は、神と女神達に力を貸して欲しいと頼む。


神と女神達が二人に力を与えると、二人は星を包み込むほどの超巨大な強制爆笑陣を放った。


その日、二人の芸人によって、この星に生きる全ての生命が笑った。

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