獣達の夜8
「何だったんだ今のは?」
「幻……だったのかな……?」
状況が理解できていないレオとハリーノは、何が起こったのかわからないといった様子で辺りを見渡している。そんな二人に、ムチャが今起こった事を説明した。
「俺達は騙されていたんだよ。あの泉に」
「「泉に?」」
レオとハリーノの頭上にハテナマークが浮かぶ。
「そう、俺は魔法に詳しくないけど、たぶんあれは泉に映った人間の心を読んで、そいつが一番強いと思っている人物を投影する魔法だったんだ」
「なるほど! 一人一人に見せる幻覚じゃ無くて、投影の魔法だったのか! だから僕にもレオのお父さんやムチャのお父さんが見えたんだ!」
「ケンセイは父親じゃないけどな」
「じゃあ、なんでムチャは俺の親父をすり抜けたんだ? 投影の魔法ならすり抜けたりしないだろ」
「それは……多分だけど俺がレオの親父さんの事をよく知らないからじゃないか?」
「よくわからねぇ……」
「俺もだ」
ムチャはくだらない事については頭は回るが、頭脳労働は苦手であった。しかし、実際ムチャの言っている事は当たっていた。レオの心を読み、そのイメージを投影する事で、父親の声や姿形をムチャに聞かせたり見せたりする事はできるが、その「強さ」や「怖さ」はレオ本人にしか実感する事はできない。それ故にムチャはケンセイには触れられたし、そのせいでダメージも受けたが、レオの父親には接触する事ができなかったのだ。
「でもムチャ君、泉の月が投影の源だってよくわかったね」
「あぁ、たまたま気付いたんだけどな。ほら、あれ」
ムチャは空に浮かぶ月を指差した。
三人が見上げた空に浮かぶ月は、鋭い三日月であった。
「月、何か変か?」
「おいおい、さっきレオが撃った泉の月はどんな月だった?」
「あ、満月だった」
「そういう事。あれを見て、前にトロンが月は魔法と深い関係があるって言ってたのを思い出したんだ」
「はぁー。ハニーちゃんさまさまだなぁ」
レオは感心したようにウンウンと頷く。
「でも、さっきの自動ゴーレム生成の魔法陣といい、今の投影の魔法といい、凄いハイレベルな魔法だよ」
「そんなハイレベルな魔法使いが守っているって事は、ますます秘宝の正体が気になるな!」
「よし! じゃあ、行くか!」
偽りの月が消えた泉には、今は綺麗な三日月が映っている。
三人は休んだ気が全くしなかったが、また一つ試練を乗り越えて、秘宝へと向かうのであった。
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