トロンvsエスペリア

「それでは、魔闘開始!!」

 女子生徒の試合開始の合図と共に、エスペリアはトロンに左手をかざして火炎の魔法を放つ。炎はまっすぐにトロンへと襲い掛かり、トロンは前方に障壁を張ってそれを防いだ。

 続けてエスペリアはトロンに向かって空いている右手をかざす。そして叫んだ。


「障壁解除!!」


 エスペリアの右手から、魔力の光が放たれる。

 それは魔力の幕である障壁の結合を崩し、無効化させる対魔法使い用の妨害魔法であった。円から出てはいけないというルール上、障壁を張って相手の魔法を防ぐしか無いこの魔闘では、この魔法は反則的な効果がある。

 障壁に命中した障壁解除の魔法により、トロンの障壁は消え、トロンは火炎に包まれた。と思いきや。

「えっ!?」

 火炎が通過した先にトロンの姿はなかった。

 エスペリアが障壁解除の魔法を放った瞬間、トロンは自らに身体強化の魔法をかけて上空に跳躍していたのだ。


「小賢しいですわ!」

 エスペリアは上空のトロンへと今度は雷の魔法を放つ。しかし、トロンは今度は風の魔法により更に上空に舞い上がり、全てのスポーツマンの憧れ『二段ジャンプ』をやってのけたのだ。エスペリアの攻撃はまたしても空を切った。


「きーっ!」

 しかし、エスペリアも負けてはいない、間髪入れずに氷結魔法で生み出した複数の氷の塊を、遥か上空のトロンへ向けて飛ばす。

 二段ジャンプにより、トロンの頭上には天井が迫っており、今度は風魔法のジャンプにより攻撃を躱す事はできない。

 氷の礫がトロンに直撃するかと思われたその時、今度は空中にいたトロンの姿が消えた。


「なっ!?」

 エスペリアが目を凝らすと、空中には縮小の魔法で小指サイズまで小さくなったトロンがいた。小さくなったトロンは、氷の礫をひょいひょいと躱す。

 エスペリアの攻撃は三度空を切り、全ての礫を躱したトロンは元のサイズに戻って着地した。

「なるほど、障壁解除の魔法かぁ」

 トロンは「勉強になるなぁ」と言わんばかりにウンウンと頷く。それがエスペリアの神経を更に逆撫でした。


「私を怒らせましたわね……」


 エスペリアの目は怒りで更にメラメラと燃え上がる。

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