ミスコンの後
ミスコンの後、闘技場の入り口でニパは大きな金色のトロフィーを抱えてシムやタリーなどの街の子供達に囲まれていた。ほとんどはニパの知らない子供達であったが、中には街で声をかけてくれた事がある子や、前座中に観客席に見たことある子もチラホラといる。彼等は皆口々にニパにおめでとうと祝いの言葉をかけてくれている。
「みんなありがとー!」
重そうなトロフィーを軽々と掲げるニパは満面の笑みを浮かべていたが、目は僅かに潤んでいた。
「今日のミスコンにニパが出ると思って、友達も連れて観に来たんだ。史上最年少で優勝なんてやっぱりニパは凄いね!」
タリーの隣に立つシムが言った。
ぴったりと並んで立つ二人の距離感にニパの胸はまだツキンと痛んだが、その痛みは以前感じた痛みよりもずっと弱くなっている。
「みんなのおかげだよ。本当にありがとう」
ニパは僅かな切なさと大きな喜びを胸に、トロフィーを天に突き上げ、声高らかに宣言した。
「私はもっと良い女になるぞー!!! アオーン!!」
後にビューティオブビーストとして王国中に名を轟かせる(かもしれない)女性が誕生した瞬間であった。
一方プレグは少し離れた所から子供達に囲まれているニパを見ていた。プレグの周りにはいかにもお金持ちっぽいリッチな格好をした男達が数人集まっている。
「僕と結婚してくれないか」
「私の愛人になってくれ」
「今晩どうかな?」
口々にそんな事を言いながら迫ってくる男達を見てプレグは額に青筋を浮かべる。
「えぇい! 鬱陶しい!」
プレグは男達に弱い電撃魔法を放つと、お祝いに何か美味しいものを食わせてやろうと考えながらニパの元へと歩き出した。
その頃ナップとフロナディアは、各々の愛馬を引いて宿へと歩いていた。心なしかションボリしているシャンデリアの顔を、隣を歩くアルバトロスがペロリと舐める。急に顔を舐められたシャンデリアは頭突きでアルバトロスに返した。
「残念でしたね。フロナディア様なら優勝してもおかしくないと思っていたのですが」
「少しはしゃぎ過ぎましたわ。みっともないところをお見せして申し訳ありません」
「いえいえ、健闘しておられました」
ナップはキリッとした顔で言う。
「たとえミスコンでは失格でも、私のコンビはフロナディア様しかいませんから」
「……ナップ様」
フロナディアは顔を赤くしていたが、正直あまり上手いことは言えていないナップであった。
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