〜幕間〜

「だから賞金受け取っておけば良かったのに……」

 とぼとぼと歩きながら、小柄な体には不釣り合いな大振りの杖を手にした少女が呟いた。

「だって仕方ないじゃないか! 魔物退治で金を貰ってたら芸人じゃなくて冒険者だろ!?」

 少女に向けて、剣を背負った活発そうな少年が怒鳴る。

「騒がないで、空腹に響くから」

 少年の名はムチャといい少女の名をトロンという。彼等はきゅーきゅーとガス欠音を奏でるお腹を抱えながら、次の町を目指してひたすら街道を歩いていた。


 二人が先日出場したコッペリ村のお笑い大会では、なんやかんやあって一度は優勝賞金を手にしたものの、ムチャのワガママによりあっさりそれを手放してしまったのだ。二人は再び賞金を手にするチャンスを与えられたのだが、残念ながら二人の手に賞金が戻ってくることはなかった。


「あそこでトロンが噛むから……」

「ムチャがトゲタヌキのモノマネ滑ったからだよ……」

『はぁ……』


 二人は同時にため息を吐いた。いくら後悔しても空腹が満たされる事はない。道端の草に塩でもかけて食べようかと考えていたその時、積荷を乗せた馬車が通りかかった。

「やぁ、お若いお二人。どこまで行くのかね」

 馬車の御者台から、白い髭を蓄えた老人が二人に声をかける。

「俺達町を目指してるんだ、この先に大きな町はあるかな?」

「それなら丁度いい、この先にルイヌというそこそこ大きな町があるよ。儂もそこに行く途中なのだが、良かったら乗って行くかね?」

 渡りに舟とはこの事だ。

「助かるよ! 是非乗せて行ってくれ!」

 そう言うと二人は馬車の荷台に乗せて貰った。

「君達、随分若いが二人旅かね?」

 背中越しに老人が問うた。ムチャがそれに答える。

「あぁ、二人で世界を回ってるんだ」

「そうかい、魔王が倒れてからこの世界も平和になったからね。旅人かい? それとも冒険者?」

「違うよ爺さん、俺達は」

 ムチャはぐっと親指を立てて言った。

「お笑いコンビだ!」

「そうかい、芸人かい。若いって良いねぇ」

 馬車はのんびりと、ヌイルの町に向かって動き出した。

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