君がつむぐ、世界の色を

三色

第0話 序 幕

 世は色に満ちていると、誰かが言った。


 空には青、山には緑。時間と共に表情も変わり、色も変わる。

 朝焼けの燃えるような色も、夜空の黒も。あぁ、世界はなんてさまざまな色に満ちているのだろう、と誰かは踊る。


 確かにそうだと、俺は頷く。


 焼ける炎の赤も、誰かが流す血の紅も。

 その色はどこまでも、残酷なまでに綺麗な色なのだ。


 そうつぶやく俺に、君の見てる色は悲しい色だねと、誰かは悲しげに呟く。


 違う。

 悲しいというよりもそれはきっと。それこそが、自分に染みついた原初の色だから。


 そう言うと、誰かは曖昧に微笑むだけだった。


 ***


 誰かとの記憶はそれきりだ。偶然出会い、少し話をしただけの間柄。名前も聞けずに別れた女性。


 だけど、なぜ。今、この時に思い出す?

 分かっている。“同じ”だからだ。この色は、あの誰かと。


 それは全てを塗りつぶす様に、鮮烈に。

 それは全てを包み込む様に、圧倒的に。

 それは全てを拒むように、潔癖に。


 その色はまさに、純白。


 その日、真っ白な彼女と出会う。

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