080:渡し守

 俺と中ランク冒険者四人一行は、西の森をさらに西の奥へ続く道を進んでいる。

 シャリテイルたちは道と呼んだが、木々の間を縫うような隙間は、北側の山で見た獣道のようなものだ。

 ただでさえ足元を気にせず歩くのは大変だが、最悪なことに上空を、四脚ケダマやハリスンが縦横無尽に駆け巡っている。


 俺も口から何か出そうな緊張をこらえて敵を見据え、腰を落としナイフを持つ手に力を込めた。


「ふんっ!」

「キェぶラッ!」


 気合いを入れて、何度も挫けることなくナイフを振り下ろす。


「うぉら!」

「クゥキャッ!」


 周囲から響き渡る魔物の断末魔が、俺の掛け声と共に、叩き折られる枝葉に重なった。もちろん俺が戦っているのは、強情な草どもだ。

 魔物を悉く屠っているのは、頼れる中ランク冒険者の先輩方です!


「……ケダマ野郎は、どんだけ居るんだっつの」


 俺は恐怖心と周囲から目を逸らし、無心に藪を払い続ける。細い癖にやけに硬い蜘蛛の巣草や、木々から垂れ下がって視界を邪魔する触手草らが、ただでさえ狭い通り道を邪魔している。相手に不足はない。


 それにしても、たまには討伐の合間を縫って、手入れをしているとか言ってなかったか?

 広いし魔物は多いし首が回らないのは分かるが……。

 それで、どの程度から片づけているのか、他の奴らの感覚を聞いてみようと思い立って顔を上げて、質問はやめた。


 そのとき俺が見たのは、避けもせず硬い腕で押しのけていくヤミドゥリの姿だった。シャリテイルはいつものように軽い足取りで、ささっと避けていく。タンサックとキューメイは、たまに幹を蹴って跳んでいた。

 どんだけ横着だよ……。


 唖然としているとケダマらの悲鳴が途切れる。一段落ついたようだ。

 トワィラ兄弟は、ひょいひょいと細い木々の狭間を抜けながら戻り、俺と並んでいた。道は一人が通れる程度だから仕方ないが、両側は木々が立ち並んでいるというのに器用な。不機嫌そうな顔つきから、話があるらしい。


「タロウ、お前な、誰がこの辺の草を刈れと言ったよ?」

「目的地は湖だと話しただろうが。聞いてたのか?」


 両隣から似たような難癖がつく。


「ああいう、ちょっとしたもんが積み重なって、どうしようもなくなったから依頼したんじゃないのか?」

「ぐぬ。ああ、そうだとも! ただ俺らが言いたいのはそうじゃなくてさぁ。気が利きすぎるぜってことだよ」

「目的外の仕事だろ。目的地に着く前に疲れたらどうするよ。それに俺たち、そこまで報酬用意してないしよぉ」


 この依頼も、あんたらのお小遣いですか。


「疲れないように配分してる。それとこの依頼も、たしか別件であったはずだから、ギルドから聞かれたら答えてくれればいいと思う。その辺はシャリテイルが把握してたっけな」

「おっ、そうか? ちょい待ってな!」


 恐らく兄のタンサックがすっ飛んで行った。

 だいぶ先にいるシャリテイルが、頷いているのが見える。振り向いたタンサックが手を振り、隣のキューメイが笑い声をあげた。


「よっしゃ、いいってよ! いやぁ、やっぱり歩きやすい方が助かるもんな」


 お前らまともに歩いてないじゃないか。


「次、来るぜ」


 木を蹴りつつ戻ってきたタンサックが、側で武器を構えた。再び毛獣混成軍のお出迎えらしい。もう考えることをやめて、俺も即座に草を掴んだ。




 しばらく進む内に、暴風が吹き荒れたような葉擦れの音は静まっていった。


「少しは減ったみたいね。タロぉ! 四脚ちゃんいるぅ?」

「いらない!」

「ああっ」


 シャリテイルは俺に声を掛けながらも、目を回しているケダマを宙に投げて、杖をラケット代わりにサーブを打っていた。

 聞く前に行動するなよ!

 とっさにナイフを突き出す。

 ケダマは声をあげることなく眉間から串刺しになり消えた。


「ごめんなさい。手が滑っちゃったわー」

「あからさますぎる」


 まだ俺に魔物を見つけるのを諦めてなかったのか。


「本来の依頼があるし、気を回さなくていいよ」

「ああ、そっちのことじゃないわよ?」


 他にも企みがあるだと……?


「おっと、もう一山来るぜ!」


 前方に崖というか土が盛り上がっている場所があり、その影から大量の魔物が這い出してきた。俺が問い詰める間もなく、シャリテイルは駆け出して行った。




「ケキェッ!」

「この子たちがケダマ草になったら、どれだけいいかって、いつも思うのよね」


 四脚ケダマを倒しながら、シャリテイルは自由気ままに森の中を飛び回り、そんなことをときに呟く。随分と余裕があるな……。

 そういう俺も放心しきったのか、皆が戦う様子を眺める余裕が出ていた。


 トワィラ兄弟は、兄は細身の剣で、弟は剣サイズの杖を振り回している。こいつらの武器は興味深い。

 兄の剣は、柄に魔技石を埋め込んでいるようで、たまに魔技を使用している。埋め込める石が小さいからサブウェポン扱いか。

 弟は杖だが、魔物を殴ると重々しい音が響く。二人とも武器本体は黒いし、金属素材、間違いなくクロガネを使ってるだろうな。金持ちめ。


 剣と杖。違いはあれど、同タイプなのはよく分かった。

 シャリテイルを見るまで、杖は魔法使いのイメージがあったし、ぶん殴るのがメインなどとは考えなかった。

 こっちも剣を持つ兄より、弟の杖の方が刺したり殴ったりしてるじゃねえかと色々とツッコミを入れたくなったが我慢だ。


 ヤミドゥリは、変わったポーズで戦っていた。

 全体の状況を随時把握するためか、あちこちに目を向けてはいるようだが、大きな挙動には見えない。

 ボクシングをするような基本体勢で、やや屈むようにして左腕をぴたりと体につけ、頭から脇を庇うように構えている。それはいい。

 右手に持つやや幅広の両手剣は、先を地面に向け、斜め上から前方を庇うようにして構えていた。シールド代わり? 今度試しに真似してみるのはやめような。


 そんな体勢からでも、魔物が来る位置を読んで移動し的確に薙ぎ払う。ピンポイントでは、剣の軌道を左手や膝で打って変えたりと、動きに無駄がない。

 勢いがないからパッと見で率直に強えといった感想はないが、正確な動きは、この中の誰よりも恐ろしい相手の気がした。


「色んな奴らがいるもんだ」


 種族の特徴にばかり目がいって、個々人の差を理解できるかといえば、まだまだ自信はない。それでも徐々に目が慣れてきているのを感じた。




「森ん中はこんくらいでいいか?」

「ちと、道沿いは片付け過ぎたんじゃねぇ?」


 ウザ兄弟が戻ってきてヤミドゥリに報告する。


「いや、これだけ雑魚を片付けりゃ低ランクの奴らも、手が出にくい奥にいる難度の高い魔物に挑戦しやすいだろう。あいつらにゃ良い稼ぎだ。やる気も出るだろうし、訓練にもなる」 


 ほ、ほう、低ランクの訓練にね。なんて責任感に溢れた人だろう。ヤミドゥリさん、俺も一応低ランク冒険者らしいのですが、何か助言をいただけませんか。はい、これが答えですよね。

 賞で言えば、残念賞とか審査員のツボに入った賞とか、本来の意味では競えない別枠だってよく分かってるんです。ちょっと思ってみただけです。

 ああ、たかが低ランク、されど低ランク……なぜこうも俺とは次元の違う話に聞こえるのか。などと自虐妄想に浸ろうとするのを違和感が連れ戻した。


 目を伏せて考える素振りで顎を撫でるヤミドゥリだが、その口元は笑いをこらえているようにしか見えない。不審に思って見れば、わくわくと目が輝いている。


 もしかしてさ、以前アラグマが不自然に一匹だけ残っていたのは、そういうことだったわけ?


「ぷふっ……おっと、じゃあ休憩がてら、少しのんびり行こうか。水を飲んだり、出したりするなら今だぞ」


 今の笑いだろ。問い詰めようとしたが、不意にヤミドゥリが道を逸れた。これまで真っ直ぐ来ていたが、なんと横道に入ると川沿いではないですか。

 間違いない。アラグマを残した犯人は、お前だ。なんてサプライズしてくれてんだよ!


 問い詰めようにも、あの時は俺のような奴が入り込んでるとは思わなかっただろうし、今さらだろう。というより、全員が仕事をやり遂げた額の汗を木漏れ日に光らせ、清々しい笑顔で歓談している。入りづらい……。

 俺だけが、まったく疲れていない。

 ここのところ、やけに疎外感とか孤独感が増している気が……いやいや気のせいだから。


 人との触れ合いは嬉しくも、機会が増すごとに独り身の寂しさを運んでくる。逃げようにも逃げられない場所と空気の中を、みんなの狭間で一人いじけながら歩いた。

 拗ねながら道草を刈っていると、前を歩くヤミドゥリから声があがる。


「もうすぐ湖だ!」


 意外と近い。ゲームのマップ画面の比率が色々とおかしいから、湖も奥地になると考えていた。

 あとちょいと言われれば、あっさり期待が不安を上回った俺は、そわそわと歩みを速める。湖に近付くにつれて雑草もでかくなり、気が付けば見慣れた背高草が目に付くが、道草を刈るのもやめだ。


「止まれ」


 ヤミドゥリが片手を上げ制止を促す。

 何度目かの合図だ。俺も慣れてきたし、無駄に緊張することもなく即座に歩みを止める。こいつらの背後で縮こまって待つという、重要な作戦行動が俺には課せられているからな。


 頭をヤミドゥリの背後から出すと、もっと先を、魔物を探知しながら歩いているシャリテイルが振り返ったのが見えた。

 シャリテイルは横向きで前かがみになり、両手を前方でぐるぐると振り回すと、最後にこちらを向いて万歳しながら小さくジャンプした。

 それを見たヤミドゥリは、大きく頷き返す。


「ふむ。アラグマが三体か」


 あれで分かるんだ。


 ゆっくりと距離を詰め、木々の狭間から目標を確認する。

 川幅は街の近くと比べると倍はあるが、その中央に、アラグマ三匹がぷかぷかと浮いていた。同時に水礫の波状攻撃でもきたら、ミンチ確実……。

 ヤミドゥリたちにとっては大した相手ではなさそうに思うが、まとまっているとあの特殊攻撃が面倒なんだろう。初めて慎重さを見せた。


「ちょいと片づけてくる。タロウは隠れて待ってろ」


 移動しようとしたヤミドゥリをタンサックが止めた。


「待てヤミドゥリ、向こう岸にも気配があるぜ。ミズスマッシュかもしんねえ」

「こっちの周囲に、他の気配はないぜ」

「キューメイはここで待機し周囲の探知を。タンサックは来い。向こう岸を警戒してくれ」


 キューメイが、こちら側の情報を出すと、ヤミドゥリは即座に指示を変えて動き出した。


「……木陰で待つなら任せろー」


 俺は誰にともなく呟くと、狭い木々の狭間を体を横にしてすり抜けた。ここから頭だけ出して見物するとしようって……シャリテイル!?


「ぴょんぴょーい」

「キュッ、キュウ!」

 シャリテイルは川へジャンプしていた。すぐに三匹のアラグマの腹へと次々に飛び移っていく。

 こっちの心臓が止まる!


「だ、駄目だ。見てられない……」


 同じ人間とは思えない動きをするが、それは魔物の方もだ。


「あまり、無茶はしないでくれよ」


 なにが無茶で無茶じゃないかなんて俺に分かるはずもないが、はらはらしながら祈るしかできない。

 シャリテイルが飛び移るたびに、アラグマは怒って冷静さを失うのか生成中の水の塊が崩れていく。そしてシャリテイルが川岸へ戻ると、アラグマもスクリューのように足を回転させて後を追ってきた。接岸したところを、即座にヤミドゥリが止めを刺していく。

 一撃かよ……。


 なんとも呆気なくアラグマは倒されていったが、今度は黒い塊が近付く。

 ミズスマッシュは綺麗に編隊を組んで、水しぶきを上げながら水上を滑るように移動してくる。ボートレースならぬ、ミズスマッシュのレースとかやったら白熱しそうだが個体差なんかなさそうだから無理だな。


 水上の勢いを保ったまま、川岸から飛び込んでくるミズスマッシュを、ヤミドゥリは下から斬り上げた。次には、俺が頭を出していた側の木からゴンと鈍い音が響く。


「うおっ」


 裂けた胴体がぶつかり、跳ね返りながら消えていった。

 ちょっと木陰から覗き見ているだけのつもりが、ここまで危険だとは。まとめ役が手で殴り返していたのも相当なもんだったが、中ランクはこれが普通なのかよ。


「頭も引っ込めておこう」


 ため息とともに木の背後へ一歩下がると、踵が何かに当たった。この辺は密集しすぎて、木の根だか石ころが転がってるのかも分からない。

 ちらと背後を見ると、大きな岩だった。幅は俺の背ほど、高さは腰かけるのにちょうどよい。黒っぽい地肌は赤や黒や緑とカラフルに苔むしているが、湿った感じはない。これだけ木々の隙間を埋めるように大きな岩を挟めば、魔物だって背後から襲おうにも邪魔だろうしと腰をかける。


 意外だ。ずいぶんと座り心地がいい。

 ほどよく尻が沈む柔らかさ、この世界では感じたことのない上等なソファだ。異世界には、やわらかい岩が存在するのか。


 まてよ。

 そんなものは見たことが無い。

 なんで岩が、ほどよいクッションに……?

 な、なんだろうね、こいつは。ハハハ。


 高まる鼓動に静まれと念じつつ、そうっと立ち上がって体を反転させていく。ゆっくりと後ろに手を伸ばして木の幹を探り、後ずさりながら、そいつを見た。


 汗が噴き出した。

 見覚えがある。

 ゲームの中の絵で。


 今は側面を向いているが、背を辿り端を見れば、そこには巨大な瑪瑙が埋まっている。さっきは、そんなもんなかった。それは瑪瑙の石ではなく、まん丸の目玉だ。

 絵は絵なんだと痛感する。

 この存在感の違いばかりは、実物と接しないと、なかなかに慣れないだろう。


 離れるにしろ木が邪魔だが、目を離すこともできず、後ろ手に木を伝いながら少しずつ距離をとる。

 気が付けば、目玉の下が、ぱかっと開いたのが見えた。

 絶望で真っ暗になる。


 お、思い出せ。このカエルの化け物は、ケロンに違いない。ゲーム中レベル15ぽっちだ。大した敵じゃない。ここでは30くらいか。駄目だ死ぬわ。


 他にこっちで聞いた情報といえば、上級者らは枕にちょうど良さそうと思うらしい。でかすぎるだろ!


 だ、大丈夫。まだ動かないし、キューメイのところまで下がって教えなきゃ。

 って、なんで気が付かないんだ。もしかして、こいつ気配消すのか?


 ケロンは、じっと見ている限りでは微動だにしていないように見える。キューメイはどこだ。さっと後ろを振り返って位置を確認するが、いない!?

 というか、動転して分からない。さっきから大分移動した気もするが、一メートルと動いていない気もする。


 すぐに視線をケロンに戻す。横を向いていたはずのケロンは、体ごとこちらを向いていた。

 一瞬しか、目を離してなかったはずだ。なのに音もなかった。

 次には、俺がさっき貼りついていた場所にケロンはいた。


「え」


 動きなんか見えなかったろ。

 まさか、瞬きをした間に移動した?


 そして、眼前には、赤黒い空洞が広がっていた。

 それがバクンと閉じられる――俺の頭を飲み込むように。


 させるか!


 とっさに頭をかばうように両腕を上げていた。

 その時ナイフを水平に持っち上げたお陰で、刃がケロンの口の端に刺さった。


「ゲヨンッ!」


 柄を横に張っていたため、ケロンは閉じようとした自分の力で、頬を裂いていく。

 隙間から入る光によって浮かび上がった、蠢く粘液質の喉が気持ち悪い。

 あんなところに呑まれてたまるか!


「うらあああっ!」


 完全に引き裂こうと柄を両手で持ち直すと同時に、足で喉の下辺りを蹴り上げて力を込めた。唇の薄い膜は裂け、勢いで俺は後方へと跳んだ。それとも、頭を振ったケロンに弾き飛ばされたのか。


「でっ!」


 尻餅をついたが、すぐに飛び退る。

 どうにか脱出できたが、今の内に木を回り込もう。回り込めるのか。こいつ、素早いなんてもんじゃない。


「ケロン! こっちだぜ!」


 怒鳴り声と同時に、ケロンの背後から魔技が放たれた。

 空気の矢が、ケロンの胴体に穴を開ける。

 それでは消滅せず、ケロンは首だけを背後へ回し、口から何かを発射する。

 舌による攻撃かと思ったが、違う。


「おらよ!」


 キューメイは木を蹴って攻撃を躱すとケロンの側面に迫った。


 伸びたのは、舌じゃなくて口だよ!

 き、きめえええっ!

 これが、枕にちょうど良いだ!? あいつら正気かよ!


「ブギュゥ!」


 伸びた瞬間、杖で叩き落される。

 あ、あれ、動きが見えるな。弱ってるってことか。

 今の内に、他の奴らに知らせないと!

 振り返ったところを、別の影が二つ飛び込んできた。


「えいっ」

「くたばれや!」

「ゲゴギェ!」


 ぽよん――へんな音と生々しいうめき声が聞こえ、ケロンはつぶれながら真っ二つになった。


「シャリテイル、タンサック!」


 見事に煙となったケロンを見ると、ほっとして二人に近付くが、タンサックは素早く動くと、キューメイの胸倉を掴み上げた。


「おう、キューメイ。てめえ、しっかり仕事しろや」

「悪い。兄貴。……タロウ。ギリギリになって悪かったな。下手に動くとまずい相手だったからよ」

「いや、キューメイもありがとう。助かったよほんとに」


 タンサックは怪訝な顔で俺の顔を見ると、キューメイから腕を離した。毒気が抜けたようだ。


「なにやら、すんげぇ嬉しそうだな。意味わかんないんだけど」

「はぁ、タロウったら。また新しい魔物を見て悦んでるでしょ」

「嫌な意味が込められてるような言い方しないでくれ」


 ヤミドゥリは申し訳なさそうに俺を見た。


「大抵ケロンは川を泳いでるんだが……面目ない。しかし、無事でなによりだ。俺の責任でもある。急いで湖の側まで移動しよう。視界が開けている分、ここよりはいい」


 ここよりいいというのは、守りやすいという意味なんだろう。ヤミドゥリはこれまでよりも厳しい顔つきで合図した。俺たちはまた隊列を成して、移動する。




 でもまあ、確かに俺は、別の興奮に舞い上がっていた。

 体に活力がみなぎったんだ。久々の感覚だよ。


 レベル25になったはず! よっしゃああああ!


 思わずガッツポーズを取ってしまうのを変な目で見られたが構うもんか。もう次にレベルが上がるのは、一年とかそんな先になると諦め気味だったんだ。

 俺の仕事はこれからだってのに、コントローラーを確認するのが今から楽しみでしかたがない。

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