051:道を切り拓く

 西の森沿いに佇む俺の目の前には、四人の冒険者がいる。岩腕族が三人と森葉族が一人。当然のように野郎どもだ。


「ちぃっとばかし、森の中までツラ貸してくれねえかな」


 そう言いつつ前に進み出たのは、三人の岩腕族の中で一番体のでかい男だ。

 低ランクということは成り立てなのか、装備も一部だし歳も若く見えるが、俺と比べてこの駆け出し感のなさはどうだ。


 え、俺なにやらされちゃうの。それともボコられる?

 い、イジメだ。そうに違いない。だが俺は最弱の名を欲しいままにする人族冒険者。相手は同じ低ランクといえど、雑魚などではない。低と付くからといって誰にでもできる仕事というわけではないのだ。当然、俺が逃げ切れるはずもない。


「まぁまぁそんな怯えるなって。無理は言わねぇから」

「いいからいいから、な?」


 思わず一歩後ずさったが、逃げ切れないならと答えていた。


「そ、そうだな。ま、まあ見るだけなら付き合ってやるよ」


 弱っ! 俺、弱っ! 心根が弱すぎ!

 こんな世界に来てまで日本人マインドを保たなくてもいいだろ。心でベソかきながら渋々と、四人に囲まれて森の中へと足を踏み入れた。


 西の森は、中ランク指定中の中難易度を誇る場所のはず。

 この近くに、ゲームと同じく難度の上がる川や湖といった場所があれば、その影響があるだろうと思うだけだ。難易度で言えば、洞穴面と同等なのではないだろうか。

 現実で見れば、難易度は単純に魔物ごとの強さだけでは計れない。環境による戦い辛さも、より強く難易度に含まれる。それは泥沼もそうだが、人族以外の奴らにとっては、まだ面倒だと思うくらいのものだろう。


 さすがに洞穴の中のように暗い中を飛行系の魔物が襲ってくるとか、川や湖などに引きずり込まれて素早い相手と戦うという状況は、考えるまでもなく厄介だ。それは種族別の強さも関係なく、誰にとっても不利になりえるからで、だから難易度も高めに認定されているのではないか、などと憶測を連ねる。

 不安を誤魔化すためだ。


「ふんはは~ん」

「魔物、残ってねぇなぁ」

「あ? 鼻から豆飛ばし競争でもすっか?」

「てめぇで食ってろ」


 俺の様々な緊張とはうらはらに、周囲の奴らは暢気に他愛もないことを話している。心配しても意味はなさそうだ。別の意味で心配になるが。

 あのーそこの森葉族の人、ちゃんとマグ探知してくれてるよな?

 こいつら低ランクの冒険者が余裕でいられるんなら、苦もなく対処できる程度ってことなんだと信じよう。


 魔物の方はいないようだが、こいつらの用件が何かと精神が磨り減りだしたところで、でかい岩男が足を止めた。


「ほら、そこの櫛みたいなでけえ葉っぱ。あれが邪魔でよ。タロウの腕を借りたいんだ」


 俺の腕……。


「まさか、草刈りのためだけ……?」


 そんなことで、あんな誤解するような態度を取るのか。胡散臭いな。

 邪魔だが、ただの藪でしかないと思うんだが。


「そんな、てめぇで刈れってな目で見んなよ。あれっぽっちの話じゃねえんだ。ほら、よく見ろ」


 言われて森の中、方々に視線を向ける。

 シダ植物っぽい葉の束があちこちにあった。櫛というかすだれと呼べそうなほど細かく葉が分かれており馬鹿に広い。そのまま千切って干したら、すだれとして使えそうだ。ただでさえ幅を取ってるのに、言われた通りあちこちに見える。

 なるほど。ものによっちゃ、完全に視界を遮るほどに繁ってるな。


「で、どうだ。やれるか?」


 でか岩男が指さすと、俺の邪魔にならないようにか皆がやや下がった。

 試せってことか。


 いいだろう。その喧嘩、刈ってやるぜ!


 俺は自慢のナイフを取り出すと、すだれ草を見据える。

 といっても、いきなりちょっと、もさりすぎるな。

 おっ、こっちのがちょうどいいな。近いし。

 だから移動して、そいつに掴みかかった。


「ぉあっ!」


 突然の叫びは森葉族の野郎だが、何事かと振り返る間はない。

 俺の眼前にはでかいケダマが飛び出していた。


「わあっ!」


 俺も叫んでしまった。

 だが、甘い!

 こんな時のためにとナイフを顔の前に出して構えているのだ。

 俺の胸倉めがけて飛びこんできたケダマを、とっさに左手で抱き込むようにしながら、その胴体へとナイフを突き立てる。


「ケャゥッ……!」


 癖になっていた行動が身を助けた。日々の鍛錬とは大切なことだよ。まったく。

 汗だくなのは冷や汗じゃないから!


「フオッ! おいおい、おい! なんだよ結構戦えるんじゃねえか!」

「ほー、四脚ケダマ程度などものともしないのか」


 囃し立てて見ているがな。


「魔物はいないんじゃなかったのかよ」


 ぎろりと四人を睨むと、怯んで言い訳を始めた。


「いやぁ、だから魔物のいない藪を教えたのに、急に方向変えるからびっくりしちまってさ!」

「お前だってわかんないだろ。教えたのは俺だぜ。あっ、気配はもうないぜ」


 森葉族の人、俺に直接言ってくれよおおっ!

 しかし四脚ケダマが出るなら、いきなり南の奥の森程度の難易度はあるんじゃねえか。やっぱり俺には厳しい場所だったようだな……。


 気を取り直して、根元を掴もうとすだれ葉っぱを掻き分けた。地面を見て手が止まる。

 ……ソテツっていうんだっけ、ヤシの葉みたいなものが生えている木? 木なのかはしらんが、子供のころは蛾の触覚みたいで気持ち悪いなと思っていた。

 どうやらこの草は、そいつにそっくりだ。問題はその松ぼっくり部分が地面に埋まって、葉の部分だけが地上に出ているような植物だってことだ。


 これ、本当に刈るだけしかできなさそうだな……。

 岩腕族の丈夫な腕と炎天族の馬鹿力をもってしても、根っこから引き抜くなんて無理だろう。

 掘りゃいいんだろうが、一々掘っていたら木の根も痛みそうだ。つうか、すでにこいつらのせいで木は栄養不足なんじゃないか?


 ふと見上げてみたが、辺りの木々の背は低く幹は細い。関係あるのか知らないが、実はこんなでも共生関係とかあったりして。


「こいつ、どこまで生えてんだ?」


 誰に聞いたわけでもなかったが、返事はごちゃっと返ってくる。


「そういや、この西の森入り口周辺だけだな」

「川があっからじゃね?」

「泳げないんだろうな」

「ちげえだろ。川で環境が変わるんじゃないかってことだ」


 ほう、やはり川があるのか。

 聞けば、すだれ草は奥に行くほど減るらしい。

 なんだ、この辺だけなら取っ払っても大丈夫そうだな。




 では早速。根元をむんずと掴み、ザクザクと切ってみた。

 そこで俺のやる気は下がり真顔になる。

 なんで俺にわざわざ頼むのかと思ったが、こういうことかよ。


 太い茎の千切れ飛んだところから、瑞々しい水滴が飛んだ。その滴を受けたグローブに、切った葉がやたらとくっつく。触ってみたらベタツクじゃねえか!

 じーっと、でか岩男を見た。


「い、幾ら岩肌つってもな、なんにでも耐性が高いってわけでもぉなくてよぉ」

「素手で触っと痒くなったりするんだぜ、なぁ?」


 あきらかに動揺してると思ったら、森男がとんでもないことを言い出した。

 毒持ちかよ!


「この葉の減る場所まででいいんだ。ちょっと先に開けた場所があってよ。そこまでの道を開いてくれたら助かるって思ったんだよぉ」

「だったら初めから、そう言え」

「さーせんっした!」


 四人は思い切り頭を下げ、顔を上げると情けない笑みを見せる。たんに調子がいい奴らなだけのようだ。すっかり俺も緊張が緩んでしまった。


「まあ、適材適所だよな。魔物は任せるから」

「ぉ、おうよ! 任されてやらぁ!」

「そうさ俺ら仲間じゃないか!」


 いつからだ。まあ冒険者仲間ではあるか。


「フフ、俺たち低ランク冒険者たちの活躍が今、終焉を迎えるぜ!」

「終わったらダメじゃないか?」

「そこ省略しただけだい」

「誤魔化すなよぉ」


 しかし武器を手にしてはいるが、どこをどう見ても立ち話してるようにしか見えない。まるで俺だけが仕事してるようだ。

 多分あれで辺りを警戒してるんだろう。そうだ、俺とは違う体の作りのはずだし、そうに違いない。

 今度は適当に打ち合いなんぞ始めたが、暇だからではなく、わずかな時間も惜しんで鍛錬をしているのだ多分。


「おい、それ以上下がると、餌食だぜ?」

「はん、そんな手をくうクワッ!」


 打ち合いする森男の忠告に、藪の近くへと後ずさった、でか岩男は叫んだ。

 叫んでぐるぐる走り回っている男の尻に、四脚ケダマの足が食らいついていた。


 全然警戒してねえ!


「あーあ、だから言ったのに。魔物の餌食だぜって」

「省略すんなよ! しッ尻がなくなるぅ!」

「だろ? 大事な部分を端折ったら駄目なんだって学んだな!」

「こじつけんな!」

「うはは」

「お前ら、いつまでも遊んでんじゃないぞ」


 青筋立てて尻を齧られているでか岩男は、罠に陥れた森男を追っている。

 それを仲裁しようとして動く中岩男と小岩男。

 仲間か。ちょっと羨ましい。


 尻の魔物を仲間が斬り倒し、走り周っていたでか岩男は笑顔に戻った。切り替えが早すぎる。俺も見習うべきだろうか。


「おっと、すまねえなタロウ。脅かしちまったか。あんくらいの魔物ならどうってことないからな。安心しろよ!」


 泡食って騒いでただろうが!


 即席低ランク冒険者パーティーか。そうなるよな?

 背後を仲間に守られながらなんて微妙だが、そう思うと俺は視界確保に一層精を出した。




 手にした葉っぱがベタベタとあちこちにくっつき、カサカサと音を立てる。


「邪魔臭いんだが……」


 木々の狭間の茂みを通り道を作るように刈ってきて、それなりに進んだなと振り返った。

 すだれ草だけでなく、藪には幾つかの植物が喧嘩するように絡み合っていた。細く硬い枝が蜘蛛の巣のように広がった草というか木や、ぬめっとした紫色の膨らみがまだらにくっついている触手草も絡まり、どこから手を付ければいいか分からず、とにかくナイフで切り付けた。


 そんな風だからやたら嵩張る。まとめようとしたはいいがコンパクトに束ねるのは無理だ。

 背高草は、あいつ刈られて人に利用されるためだけに生きてきたんじゃねえかと思える。

 ちなみに森の中が薄暗いせいか、暖かい地面の好きらしいケダマ草の姿はない。


 気分的に触りたくない触手草だが引っ張ってみると、そこそこ丈夫だ。ロープ代わりになりそうだし、縛って圧縮できるかな。


「おっと、嵩張るけど潰さない方がいいぜ」


 一山を踏みつけたところに声がかけられた。

 教えてくれるのはありがたいが、いつも後から言うなよ。


「そうだったそうだった。何も得意そうだからって押し付けただけじゃないぜ!」


 本音、漏れてっぞ。


「そうそう、冒険者が無償で仕事なんか請けるもんじゃねえしな」

「こいつらも使い途があるんだよ」


 ほう、そうなんだ。

 なぜ先にそれを……もういいか。気が抜ける。それに俺もアホだった。

 依頼と種類の違う草だし、魔物も倒せないじゃ刈るだけ損になるところだ!


「いやぁまた言い忘れてたっけ? めんごめんご」


 なんで死語。

 ちらと見ると、慌てて言い繕いながらも仕分けをしてくれた。すだれ草に蜘蛛の巣草と分け、触手草他はひとまとめだ。

 この呼び名は適当だけど、まあ大抵のもんが見た目通りの名前がついてるから、あながち遠くもない気がする。さすがに触手草はないか。


「それで、なんに使うんだ」

「この櫛みたいな葉っぱは、敷物に使ってんだとよ。バサバサした枝の方は、細いが束ねりゃ長時間燃える。薪用だな。後は肥料にでもするだろ」


 葉っぱは敷物の材料ってことは、い草のゴザみたいなもんだろうか。最近見たなゴザ。ああ、髪切ってもらったときに敷かれていたし、行商人達が敷いていたやつもこれか?

 ついまじまじと見たからな。干からびていたが面影はある。

 うん、気のせいだった。そんな細部まで思い出せるかよ。


「これも報告すりゃいいのか」


 どうカウントするんだろうな。草の束のように指定された分量でまとめるのも、形状的に厳しいし、こんなもの用の量りなんてなさそうだ。マグでチェックするにも、量が足りないか?


「森の外までは運ばなきゃならんが、それは俺らもやるから。畑の外れで農地の倉庫管理人を呼べばいいぞ」

「依頼も欲しい奴で分かれるそうだが、その内訳も管理人がやってくれるから、俺らはギルドに証明書だけ持って行けばいい」


 結局、管理人でいいのか。楽でいいけど。意外と農地もギルドに食い込んでね?

 狭いからだろうけど、ほんと街全体で回ってるって感じするな。


「ひとまず端に寄せておこうか」

「このでかい葉っぱはこの辺で終わりだけどよ。もうちっとで奥まで通りやすくなるから、そこまで頼むわ」

「了解。あとちょいな!」

「おう! 気合い入れるぜ野郎ども!」

「おぉよ!」


 ここまで俺一人で刈ってきたのに、なぜか皆で一斉に刈りだした。

 やっぱこいつら、ベタつく葉っぱが嫌なだけだろ!




 言われたとおりに刈り進んで間もなく、急に視界が開けた。

 森の奥に来たはずが、日差しに反射する光が眩しく目を細める。

 光を弾く帯と、せせらぎの音。


「……川?」


 緑の草だか藻だかに覆われた川岸は、狭い。

 川自体も、俺でも助走つけて全力で飛び越えられるレベルだ。いや、さすがにもっと足腰が強くないと無理です。


 それにしても、森と森の間を掻き分けるように流れている、こんな小川とは思わなかったけど。

 やっぱ、ここが中ランク場所の川面だよな?


「驚いて声も出ないか。その分だと初めて来たようだな」


 ぶんぶんと首を縦に振る。

 やべえ、新しい場所ってのはやっぱ嬉しいもんだな!


「狭いけど、水生の魔物がいるよな?」


 ここまで来たら特有の魔物がいるだろう。

 水生の魔物といえばケロンにヤドカラがうざい魔物筆頭だったはず。

 余裕でレベル10超えじゃねえか……。


「心配すんなって、ここの魔物は森の中よりは上だが、こんだけ人数が揃ってるなら楽勝よ」

「うむうむ。ま、お前だけだと危ないけどな」

「あんだと? うっせぇな毎回噛みつきやがって!」

「ぎゃーっ」


 でか岩男と、森男の二人が暴れ出した。

 どうやらあの二人が中心になって禄でもないことをやらかす担当らしい。


「仲がいいな……」

「ははは! 分かりやすいよな。故郷からずっと一緒らしいからな」

「俺たちも街に来た時期が一緒で、ずっと組んでるけどよ」


 ふと、こいつらを見かけたときのことが思い出された。前の下見で声をかけてきたときではなく、ギルドの待合室だろうと思うが、道で通りすがっていてもおかしくはない。

 ほんと狭い街だ。住人の構成員は、農地と冒険者で半々って感じだもんな。残りがわずかな商工業ってところか。そんな割合だというのに、この短期間でさえギルドですれ違う奴らをどことなく覚えてきた気がしている。

 で、気になったのはそこじゃない。ギルドで見かけた面々を思い返した違和感は、こいつらの人種構成だ。それに、他の奴らは三人パーティーが多いように見えたが、こいつらは四人だ。


「あのさ、変なこと聞いたら悪いんだけど、なんで岩腕族で固まってんだ?」

「えっ、なんでって、なぁ?」

「あ、あぁ、そうか。タロウは人……いや」


 えぇ、逆に気遣われてる?


「人族だから? 別に気にしないから教えてくれ」

「おっ、そうか? たんに慣れてない内は、ギルドから組むように言われるんだ」

「低ランクから中ランクの下位は、場所の難度に合わせて人数を増やされるんだよ」


 ほう、そんな決まりが。

 大枝嬢も受付はしてくれたが、扱いからしてお情けの例外っぽいもんな。

 それに、お荷物を他の駆け出しに押し付けるのは危険だろう。俺だって勧めない。


「それに、まだパーティーの役割がどうとか言えるほど、技量がないっていうかな」

「ま、てめぇの戦い方が分かってきたら、追々他の奴らとも組んでいくさ」


 意外と、考えてんだな……。


「そうか……なんとなく、依頼先でかち合うのかと思ってた」

「ああ、そういう時もあるぞ」

「他の場所に行こうかってときに別行動になることもあるが、なんとなく行き先も似てくるからなあ」

「まだ低ランクだから行ける場所も多くないし、結局はおんなじ面を見るはめになることばかりよ。むさくるしいったらないぜ」


 ふと、クエストボードの内容が思い出された。

 貼り出されてある枚数の割に、依頼の種類が多くは思えなかった。

 依頼を受けるのは冒険者の自由と言ったって、各ランク者が食っていけるだけの依頼を受けようとすれば、自ずと内容は集中するだろう。


 危険は嫌だというやつが増えて討伐数が減っても困るだろうし、逆に特定の採取依頼なんかも面倒だと思う奴が多くなっても困る。

 軍のように命令できないが、防衛してほしい討伐箇所へと適正ランク者を割り振るなら? そういった依頼は報酬を上げたり定員数を増やしていた。

 なるほど。ギルドの采配なんだろう。


「なあ、そういや花畑は行かないのか。低ランクには広くて戦いやすく、魔物のマグ量もそこそこ美味しいと聞いたんだけど」


 注意、俺以外の冒険者にとってはです。


「えぇ花畑? まあ時には向かうけどな。あそこはなぁ登録したら真っ先に派遣されるからよ。行き飽きたっていうかな」

「蜜の採取はやらなきゃならないし、あの作業にイラついてくるっつうか。なにより一番マグ量のあるスリバッチが少ないから、すぐ終わっちまってやる気が出ねえ」

「へぇ、そんなもんか」


 なんてこった……本来ならあそこが登録後に真っ先に送られる先だと!?

 思わずへこみかけたが暗雲を追い払う。知りたかったのは内容だよ。情報!


 フラフィエが言うには、魔技石などの道具を作成するのに必ず必要だが、少量で済むものらしい。俺にはちょっとした時間を埋めるのに、ちょうどいい依頼に思えるが、こいつらは心底面倒臭そうだ。不人気なのを分かっているから、ギルドも初めに送るのかな。


 やっぱり、ギルドの采配で回ってんだな。なんとも不思議な気持ちだ。

 自己責任で自由に生きているはずが、大きな組織の手のひらの上って感じでさ。

 良し悪しは一概に言えないか。そうやって、まとめてくれる人達がいないと、単純脳筋武闘派集団に好き勝手されても恐ろしい気がするし。


 しかし俺は、そんな輪からも外れかけというか、ギリギリしがみついてるんだろうなって気がしてきたよ。

 いや前向きに考えれば、冒険者として一番の自由を謳歌しているってことだな!


 笑いあったり暴れたりしている奴らを、多少の不安と期待感で見守る。俺一人では無理な場所まで来たんだ。できれば新たな魔物が見たいに決まってる!

 暢気な奴らをしり目に周囲を見渡した。

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