目覚めると吸血鬼少女に

シロクマ

第1話

 俺は夜月亮太やづきりょうた高校2年生。なんてことないフツーの日常を過ごしていた。

 今日までは・・・




「7時間目終了!やっと学校が終わった。疲れたな〜。」

 そしてなんと今日は金曜だ!ヤッホーイ‼︎

 今日は部活もないし、さっさと帰ってゲームでもするか。いや、帰ったらさっさと寝ちゃおうかな〜。

 そんなことを考えながらいつものように俺は家に帰っていた。



 家への帰り道の途中には、昼でも薄暗く細い道がある。そこは俺の家への近道になるのだ。人通りも少なく、不審者らしき人を時々見かけるということで、危険だからと言ってほとんど誰も使っていない。だが俺は男だし、別に不審者に会っても大丈夫だろう。と考えていたので、その道を通って毎日登下校をしていた。



 そして今日も普段通りに俺がその道を通っていると、いきなり何者かが俺の背後から襲い掛かった。

 壁に押さえつけられ、ガーゼを鼻と口に覆われた。

「なんだ、お…ま……え………」

 俺は何かを吸わされた。意識が溶けていくようにふわふわしたものになっていく。なんだか眠い……。


 寝ちゃダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだ……………………………………………


 自制をかけながらも、意識は暗い闇の底へ落ちていった。









 目が覚めると俺は、自分の部屋のベッドに寝ていた。

 カーテンの隙間から眩しい光が漏れてくる。どうやら朝のようだ。

「あれ、俺は確か誰かに襲われたような……なんで普通に家で寝てるんだ?」

 俺は不思議に思いつつ、いつものように体を起こすと身体に違和感を感じた。

 胸がなんか重い。それに、髪が肩にかかっていて邪魔だ。

「おかしい……俺、胸ないし、髪も長くないはずだよな?」

 急いで鏡を覗き、俺は悲鳴を上げてしまった‼︎

「なんじゃこりゃ!」

 その声自体も高く、可愛くなっている。


 なななんと俺が女になってるのだ!

 長く、綺麗な黒髪。目はパッチリとしていてかなりの美人!体の方を見ると豊かな胸に、くびれた腰、すらりと伸びた長く白く、綺麗な足があった。

「うん、俺のタイプだ‼︎…って、いやいや、そんなこと言ってる場合じゃない。なんでこんな姿になっちまったんだ?」

 訳がわからない。だが、間違いなく、昨日の不審者が絡んでいるはずだ。


 /ガチャ/


 その時、ドアが開いた‼︎ やばいお母さんだ!!!!

 こんな姿見られたら、なんと言われるか……


 その1・「女の子泊まらせてたの?」

 その2・「あんた……そんな趣味が?」


 どちらにしようと、見つかったらまずいぞ‼︎


 しかし


 お母さんは、俺の姿を見ても驚かず、

「瑠奈、朝ごはんできたわよ」と言って、部屋を後にしただけだった。


 意外な反応に、俺はあっけにとられて突っ立ていた。


 なぜ、お母さんは俺に瑠奈と言ったのだろう。

「もしかして、俺は最初から女になってる設定なのか?」

 いやいや、それはない。そんなはずがあってたまるか!俺は昨日まで男だったんだ。

 試しに友達に聞いてみるか。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 友達に電話をかけまくったのだが、その結果誰一人覚えてなかった。

 電話をかけたのが俺が男の頃の友達でみんな男だから、女になってしまった俺からかかってきた電話にみんな動揺していた。

 やはり、みんな俺のことを完全に女だと思っている。

 誰1人、俺が男だったと覚えているやつはいない。


「どうして女になってしまったのだろうか?」

 考えて考えて考え抜いてみるが、何一つわからないし、分かりそうにもない。

 まぁ、どれだけ考えても、わからないだろう。だって、これは普通にはあり得ないこと。考えてみたところで分かるわけがない。


 幸い今日は土曜日だし、明日も日曜日で休みだから、落ち着いて考えてみよう。

 そして、俺は再び、ベッドに横になった。いわゆる現実逃避というやつだ。




 この日から俺の普通ではあり得ない日常が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る