幸せのバイト

春田康吏

第1話

「楽しかったね」ライブの帰り道、僕は幸せそうな彼女の横顔を見てホッとした。

人気バンドのチケットは、手に入れるのにとても苦労した。

でも今日のライブと彼女の笑顔を見ていたら、その苦労はいつの間にかどこかに行ってしまった。

帰りのバスの中、「あれ、見て」彼女が指差した先には、一組の老夫婦が大事そうに風船のひもをつかんでいた。

浮かんでいる風船には今、観てきたばかりのライブのタイトルが書いてあった。

「なんかいいね」そう言いながら二人はギュッと手をつないだ。


「山内さん、これでいいんですかのう」

「いいと思いますよ」

「こんなことで誰かが幸せになってくれたらいいですけど、しかしこんなバイトがあるとはねえ……」

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幸せのバイト 春田康吏 @8luta

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