第21話 公方
室町幕府・第十三代将軍・
十一歳で将軍に就任したが、それは亡命先の
最初は
近江守護・
そこで義輝は、考えを変えた。
昔ながらの考え方の持ち主である三好長慶も、将軍を
これ以降、義輝は、三好の監視下で、将軍の権威の復活を
自分の
諸国の大名は彼の
中でも謙信は二度も上洛した。
これには越後ならではの特殊な事情があった。
謙信の家である
都を
『
はじめて
二回目に上洛したのは、彼を頼って
甲斐武田家は守護だが、一段低い守護代の位にある謙信は、自らの進退についてより多く将軍の承認を必要とした。又、彼の父・
当然、謙信は、将軍の
二度目の上洛の際、本国でどのような
五千の兵を率いてきた謙信の前に、今まで
「だからそなたが現れたとき、皆、喜んだのさ。」
嫌な
「
「
突っかけたが、軽くあしらわれた。
「そなたなんて」
美少年は
「俺の
あれから紅は、
彼は別に
お
もちろん、三好の監視の目を
彼の剣の腕は、
戦国時代きっての
後世、鎌倉から江戸までの歴代
「腕はまだまだだが」
公方は言った。
「この大人数に
で、夜は公方に、昼間も仕事の
摂津糸千代丸は、紅より二つばかり年上になる。
摂津氏は、公方の下で
美しい顔をしているが、それと正比例して口が悪い。更に正比例して、憎たらしいことに、剣の腕もなかなかである。
彼の棒が手に当たって、
「まっ!」
誰かが叫んだかと思うと、駆け寄ってきて、両手を広げて紅の前に立った。
「ちぇっ」
糸千代丸が舌打ちした。
「お姉さまに暴力を振るう者は、誰であろうとこの鞠が許しませぬ。」
高らかに宣言した。
「鞠さま。」
松永霜台の娘、鞠である。
あれからすっかり
相変わらず、いつの時代かという格好をして
あんまりべたべた
「母上を亡くされて日も浅いのに、霜台がすぐ
小侍従が言う。
「しかも新しい母上は
紅が悩んでいることも、鞠の事情も、何も言っていないのに全てお
「当たり前でしょ。霜台の娘よ。
と、さばさばと言ったものである。
さて、鞠である。
「あなたって人は」
糸千代丸に言った。
「いっつも剣を振り回して、ほんとに
「馬鹿馬鹿しい。」
糸千代丸も負けずに言った。
「頭の中、本のことしか無いんだから。」
鞠は、王朝文化にはまっている。
「宮廷文化なんて、とっくの昔に滅んじゃったのに。」
糸千代丸とは
先日牛車を追いかけていたのは、公方の一行に驚いた牛が走り出したのを止めようとしてのことだったが、
「ちっとは薬になったろ、なんてったってあの、いけすかない霜台の娘、だし。」
「危ないじゃない、何考えているの!」
紅を激怒させた。
もっとも牛車の件は、鞠の知るところではない。でも何となく感じるところはあるらしく、
「今に見ていらっしゃい。そのうち、誰も彼もが源氏を読み、
主張して
「へん」
糸千代丸は相手にせず行きかけて、ふと立ち止まった。
「そういえば」
鞠に言った。
「修理太夫は
「さあ、どうなさっておいでかしら。」
鞠は
「三好の者もお会いしてないみたいだけど。」
「そうか。」
(又、夜、な)
と
「お姉さまは
鞠が言った。
「お付き合いって。お互い、別にしたいわけじゃないけど。」
紅は口ごもった。
「ひょっとして」
はぁっと言って、鞠は手を口に当てた。
「
「まさか!」
おしゃまな鞠は、紅に付きまとっては、彼女の生活を
迷惑だったが、毎日のように顔を合わせる身分の高い人の娘にすげなく応対するわけにもいかず、ほとほと困っていた。
三好に対抗する為に訓練しているんです、と、
「何しろ
「ああ!」
ぱっと明るい顔になった。
「
「ええっ、そ、そう?」
清少納言って、女の
「
鞠は
「私も習います!」
「え、何を?」
「仲間に入れてください、剣術の
「鞠さまに剣術なんか必要は無いでしょう。」
「私もそのうち宮廷に上がるかもしれません。身体を
「何だって、あんな
糸千代丸にはさんざん怒られたが、その彼とて、
昼間の稽古に鞠も加わり、糸千代丸は文句たらたら監督していたが、鞠が、上手く出来ないのは指導が悪いせいなどと
「もう一人連れてくる。」
と言って友人を呼んできた。
大館一族は
裏庭に、糸千代丸の合図で剣を振るう元気な声が響くのが、いつしか武衛陣の
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