第31話稚貝呆けん

本日の一品:稚貝の酒蒸し


ホタテの稚貝はさっと水洗いして鍋に入れる。

酒を入れて火にかける。

ふたが開いたら食べる。



これは時間との勝負なので出来たらすぐに食べる事。残った汁をガーリックトーストなどで浸して食べるのも悪くない。




本文


 ホタテをなめるなよ!と言うと年代が特定されてしまいそうになりますな。稚貝のうまさに呆けてしまう作者であります。


 今宵はホタテの話いたしましょう。ホタテと言えばあの特徴的な貝殻と大きな貝柱を思い浮かべる方が多かろうと思います。食べ方にしても刺身をはじめとして焼いたり蒸したり・・・・・・・・・・・干した貝柱は中華料理の主要な材料兼調味料として使用されますし、貝紐なんかは酒の当てにとても好ましい物であります。貝殻も砕いて畑に撒けば土壌改良剤になりますし捨てるところがありません。

 貝類としてはとても利用価値が多く、加食部分も多いホタテ馴染みも深いのでばら売りなどで良く並べられたり致します。本当に食べ方の説明もしなくていいとか調理依頼もなく売れるのは販売側としても楽なのです。勿論冷凍の刺身用貝柱やボイルホタテなんかも詰めるだけでそこそこ売れますので売れ筋商品として良い物であります。


 さて、このホタテガイ実は夏が暑いと不作になる商品なんです。ホタテガイの適温が20度以下で酷暑の年なんかただばたばた死んでいく、数年前なんかは北海道の一部以外でホタテが暑さのために駄目になってしまい問題が起きたことがあったが次の年には小さい貝を無理やり出荷してしょぼい等と言われた時がありました。

 その辺を突っ込み入れたら思い切り睨まれました。だれに?それは(察してください)


 ホタテは身だけでなく貝殻も利用するものが多いのです。カキを養殖するときにホタテの貝殻に稚貝を取り付けていたりとか、砕いて土壌改良剤とか・・・・・・・・身近な例だと貝殻を器にするところでありましょうか。仏蘭西料理等にはホタテの貝殻(現地ではイタヤガイ科の貝を利用する)にホワイトソースを入れて焼いたコキーユ(貝殻を器とした料理全般を指すらしいが)とか貝鍋とか貝焼の名称でホタテの貝殻を鍋と見立てる料理もみられる。

 一度だったかホタテの貝殻に水で割ったいしる(能登地方の魚醤)を煮立たせてその中でモズクを煮る貝焼と言う料理を賞味したことがある。魚の風味のするしょっぱい汁がモズクにしみこんで飯のおかずとして美味だなと思ったものである。他にも現地では豆腐だの大根だのを煮ることがあるというがそれも考えただけで旨そうなので機会があれば試してみたいものである。


 ホタテの貝殻の話のついでにお客様の中には貝殻だけ欲しいと言われるものが時折見受けられる。貝殻欲しければ身も買ってくれよと思うのであるが、身はどうでもよいらしい。よく所望されるのがホタテにサザエ・・・・・・・・マツブなんかもあの見栄えのする貝殻を欲しがることが多いかな。最もマツブの貝殻をきれいに作るなんて面倒くさいことしたくないのでお断りするのであるが・・・・・・・

 聞くと庭に並べておいたり壁に埋め込んだりと色々面白い事をするものである。時折塗り込んだ壁にホタテだの檜扇貝だのを埋めて遊んでいるお宅を拝見することがあるのだが、あれだけの貝殻を集めるのは大変なんだろうなと思ってしまう。それでも、貝殻を並べて飾るのは結構綺麗だなと思う反面、内側の真珠層を磨いてから埋めろとか思えるのも・・・・・・・・

 面白いなと思った使い方にあさりやシジミの貝殻を大量に集めて裏庭に敷き詰めて歩くたびに音がするようにして泥棒除けをする・・・・・・・・・これは面白いなと思ったが、貝殻を集めるのが大変だったろうと質問をしたら知り合いにあさりなどの加工工場をやっていてただ当然でもらえるのだとか。それに合わせてヒイラギやカラタチの生け垣を用意すれば・・・・・・・分け入るのがとても嫌になる庭になりますな。勿論私は泥棒なんていたしませんよ、お金が欲しければ包丁を持って・・・・・・・・・・



 物騒な話となりましたので話題を変えましょう、ホタテの貝殻を利用して刺身盛り合わせを作った時の事。大きな貝殻を皿に見立てて盛り合わせてみたら・・・・・・・ラップをかけるしかなくなってしまいましてラップをしたら・・・・・・・・はがす時に崩れたと苦情が。


 しらんがな。


 それでもホタテ皿の刺身が欲しいというお客さんがいたので箱に入れて提供したらひっくり返した。


 もう面倒見きれませんな。こういう洒落たのはすぐ食べてもらえる料理屋にお任せしましょう。うん、それがよい。

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