緑:<最大>【ザ・タクティカル】

チェス

 

 蓮花寺れんげじ灰音ハイネの視点を主軸とした、強盗童話の番外編【首輪物語】。今回の項の連中の前に、このハイネについて少し触れなければ先に進めません。ハイネの人物紹介はもう少し後で、あくまで設定、脚本的な意味で。


 とあるコンセプトのもとに作られたハイネの人生で、では『どうすればなってしまうか』を考えた時に、このチェスは合わせて生まれました。


 空席になった【緑】。出会っていた少女。初めから物語の時間では既に全員がカラーズ。


 好ましくない使い方を、作り方をしてしまった、と思っています。初めから蓮花寺灰音の物語のスパイスとして構築され、使いきられた四人。正直、作者としては合わせる顔もないレベルで。


 それでも彼らの前日譚はあるので、このマテリアルが終わったら着手しましょうそうしましょう。



【緑】のカラーズ。<ザ・タクティカル>チェス。色つきのカラーズの中で唯一、そしてカラーズ全体で見ても数少ない『賞金稼ぎ企業』というスタイルのグループ。


 <兵士ポーン>と呼ばれる、傘下に置いた大小50ものカラーズグループを指揮し、規模の大きい賞金首グループの掃討を主に行う、現代の騎士団。高額賞金首といえばミリオンダラー! というのは本編の主役達が出す印象で、ですが連中はあくまで『最上級劇場型賞金首』。世界を貶める、もっと真っ当な意味での『悪人たち』をメインに狩っている、というわけですね。


 作中でリカーがフォローを入れている通り、チェスでの四人行動ではなく、本来の<ザ・タクティカル>としてルナの掃討にあたっていれば、間違いなく討伐が適ったでしょう。


 一番派手で、彼らの戦歴といえばコレ! なのも作中で少し出て来た『カットラス殲滅戦』。チェスの<最大>の真骨頂。中東に君臨した<麻薬王>の討伐記録。この物語は後日公開予定、とだけ。




 <キング>トゥエリ=イングリッド


 チェスのリーダー。ずば抜けた指揮力で圧倒的な戦略、戦術を用い、数々の賞金首を仕留めた偉大なる王。本人の戦闘能力も高く、不死身の王イモータルキングなどとも呼ばれている。チャイルド=リカーとも交友があり、そして彼とは違って知性あふれる柔和な英国紳士でもある。愛用の銃はS&Wの44マグナム。


 シンデレラ=エンゲージでは予測外の事態によりルナと会敵。メイちゃんのアレにより退路を見落とし、撤退もままならないまま団長と戦闘に入るも敗北。その後は例のブツによって意識を奪われてルナの手駒となって自身の仲間たちと戦うことに。


 激闘の末、なんとか退場と思ったら最後には団長の身体として再登場するという使いきられっぷり。本当にもうしわけない。



 <ルーク>ブライバル=ブライバル


 執筆時、登場に合わせて名前を考えるという超突貫工事だったため、こんなことになった。

『ぶらいばる……苗字……ぶらいばる……?』まさかの採用である。


 頼れる皆の兄貴分。チェスにおいての切り込み役、あるいはポーンを率いての最前線指揮官。白兵戦、とりわけ多対一の状況から勝利への道を切り開くナイフ戦闘のスペシャリスト。他にも一通りの武器戦闘が可能な芸達者でもあり、ボストンバッグの中に色々と詰め込んでたりしたものの、ルナとの戦闘ではその全てを消費してなお討伐は適わなかった。


 ところで「さ! 行け行け少年! 青春は駆け抜けるものだい!」


 は作中屈指の名台詞だと思うのですがいかがでしょう。


 弓くんを除いた三人の中で、一番救いたい子。



 <ビショップ>キッス=レイン


『死ね』だのなんだの物騒な口癖が多いワリに、チェスとしての役割では『盾』を担う防衛役。的確な襲撃予測と完璧な迎撃スキルを持った青年。武器はギターケース型マシンガン。パレード編最初の被害者。



 <ナイト>国府宮こうのみやユミ


 チェスにおいてのチェックメイト役。個人での戦闘能力ではポーンを含め、チェス全体で一番の性能を誇る。唯一、チェスを考えるにあたって最初に名前が決まっていた少年。

 同時に、シンデレラ=エンゲージでのヒーロー枠。


 ナイト・ザ・アルク。ジかもしれない。アルクというのはフランス語の『弓』であり、ロックバンドの名前でも有名なラルク・アン・シエルは『空にかかる弓』で『虹』という意味。強盗童話の『オズの魔法使い』のメインテーマ曲が『虹をこえて』なわけで。そういったあれこれで愛着も印象もひとしおな子ですね。


 武装は両手の指に嵌めた十の指輪――に仕込まれた『糸』。何も審議を通さず『弓くんは糸使いだなー』っていう感じでスタイリッシュに決まりました。


 そしてルナ、チェスあわせても破格の待遇を受けているヒロイン枠でもある少年。名前も弓→圭一→空と三つも変化をしているぜ!


 なお『圭一』という名前はディッセンさんとテキストくんが与えたパーソナリティで、『圭』を分割すると『十+三』で十三。さらに『外の子』というわけで一をつけて『十三番目のルナ』という感じだそうです。


 作中でも少し触れられた『子役』というのは、カラーズが賞金首にしかける子どもスパイみたいなものだと考えてくれてけっこうです。情報入手のための潜入であったり、とまあ。身寄りの無い子どもが苛烈であろうともその人生を生き抜くためのひとつの居場所。そういった意味で、彼はチェスのメンバーが家族だったようです。幼い頃から、同い年の子どもたちとは違う『勉強』をし、いつからか他者を殺めることにも馴れ、目に入った人物や風景に対してまず『どうするか』を考えてしまう、ソリッドな人格。ハイネの弓くんへの第一印象が「おそろしいもの」だったのは、その辺を視線から無意識に読み取ってしまったからでしょう。モブはユニークにおびえるものです。


 同時に、その場合によってはドライすぎる死生観はルナ向きでもあり、それを見出したディッセンさんマジ黒幕、といったところでしょうか。


 では、そこにいたるまでの補足を少し。


 本来のである夕陽丘億人も既に倒されており、生存者として駆り出されたディッセンさんがしぶしぶ回収する中、満身創痍になりながらもグノーツ=フェブラリィを倒した弓くんは、自身が作り上げた分割死体の中に身を隠し、少しでも生き残るために息を潜めました。


 そして、埋もれた人体の隙間から、確かに身体をバラバラにしてやった団長の『声』に目を見張る。


 完全に埒の外であるルナの所業を、倒されてなお『使われる』チェスのメンバーの肉体を見ている中で、その髪は白くなってしまった、というわけですね。


 そして回収が終わったトラックの中で、メイちゃんの≪洗浄≫が入り、その復讐心ごと、国府宮弓の人格は漂白されてしまう。


 さて。分割されて収納されているはずの人体の中で五体満足、かつ死にそうではあるがかろうじて生きているモノを発見したディッセンさん。


 彼は団長にばれないようにこっそりと弓くんの身柄を確保し、治療を施しました。そしてこっそりバイトとして雇ったのです。


 なお、当の団長も自分を討伐せしめた<ナイト>のことはわかっていたので、もちろん探しました。


「髪は黒に、銀色のレイヤーが入っていてね。それからパーカーを着ていた。糸を使って我輩を殺した少年なのだが、ディッセン」


「いえ、貴方が死んでいた現場にそんな少年は見当たりませんでしたね。直後の記憶はありますか?」


「ふくッ! 君も非道いな。死亡している中での記録は我輩とてできはしまいよ。うむ、そうなると残念だなぁ。間違いなく彼も致命傷を負っていた。このまま普通の部品として紛れてしまうと、とても勿体無い」


 とまあ、そんなこんなで欺いたのですが、困ったことに嘘は言ってないんですよねこの副団長。「黒髪に銀のレイヤー」なんて少年知りません。パーカーも着ていませんでしたし、これは<ナイト>ではありません。詐欺師か。


 弓くんが圭一くんとなってからついていた傷。唇と顎のやつは、つけていたピアスがちぎれた時についたものです。


 最終話で、【人魚姫】が走った先はとある花屋。


「らっしゃっせー……急ぎです?」は空くんの台詞ですね。


 この直後、息を切らせてリズから見せられたカラーズの姿に、彼は自分に欠けていたものが何かを思い出したのでした。万が一以下の決定打は、とても覚えのある白いパーカーと、そしてかつて自ら手放したことで、永遠の紛失とはならなかった唯一の――その少女がずっと身に付けていた、左手の薬指に自分がかつて嵌めていた指輪。


 これにてカカシからシルフへの依頼は完了。ですが、最終話のカカシくん同様、弓くんも色々と悩んだ様子です。


 記憶を取り戻して、そして仇であるルナに匿われていたことや、今更自分が出て行くことが、少女にとって幸福なのだろうか、と。


 あるいは思い出したことに、兄貴分の青年が最期に投げた言葉があったかもしれません。


 ともあれ、結末はエピローグのとおり。







 きちんと描写されていない、というかまだ公開されてないんですがー。


 一目惚れをしたのは灰音ではなく、弓くんの方なんですよ。

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