第53話 死神3兄妹の3男、六郎撃破!

「が・・・がはっ・・・ば・・・ばかな・・・」


ガタガタ・・・いやカタカタと全身を震わせながら起き上がろうとする六郎、だが先程のナナシの攻撃が効いたのか上手く立ち上がれないでいた。

そんな六郎へ向けてナナシは一歩ずつ歩きながら再び魔法を唱える。


『ファイアーボール』


再びナナシの周囲に3つの人魂が浮かび上がりナナシはそれを一つ手で掴む。

手に魔力を込めて握る事でそれは実体化する、そしてそれを媒介にすればナナシは詐欺魔法を使える事が分かったのだ。

しかもそれをそのまま投げつければ攻撃魔法として使用する事が出来ると判明したのだ。


「お前の敗因は一つ、そうたった一つだ。お前は俺を怒らせて彼女を傷付けた」

「いやっ今2つ言ったよね?!」

「これで、終わりだ!」


再び握り締めた人魂を振り被って投げつけるナナシ!

だが・・・


「甘いわ!同じ攻撃がそう何度も通じると思うなよ?!」


飛んできた人魂、それを六郎は刀で切り裂いた。

六郎の制空剣、それは自らの周囲に剣で届く範囲に入ったモノを無意識に剣で迎撃する技。

どれほどナナシが剛速球で人魂を投げつけたところで六郎には届かないのだ。

しかし・・・


「なっ?!なんだこれは?!」


切り裂いた人魂に向けて何度も何度も自動で六郎は剣を振りながら空中で細かく細かく切り裂いていく・・・

それを見てナナシは口元を緩ませて告げる。


「お前自分から言ったよな?『我が制空剣は見えていなくても射程に入ったモノを斬る!』と、つまりお前は射程にあるその人魂を延々と切り続ける事になったんだよ」

「くそっ、ふっふざけるな?!」


目にも止まらぬ速度で何度も何度も剣を振った六郎、当然その自分の限界を超えた動きを繰り返した事でかなりの疲労が蓄積されていた。

それに気付いたのか六郎は慌てて制空剣を解除した。

一瞬にして物凄い回数斬られた人魂は既に塵サイズとなり六郎の後方へ飛んでいく。

どちらにしても六郎には人魂は当たらなかったのだ。


「あらら?制空剣だっけ?それ止めちゃったの?」

「ば・・・ばかにするのもいい加減に・・・」


そう言ってナナシを見た六郎は気付いた。

ナナシの周囲に飛んでいた筈の残り2つの人魂が何処にも存在していない事を・・・

そして、嬉しそうに笑顔を見せるナナシの顔が六郎が最後に見たモノであった・・・


「ぐばがぁああああああ!!!!」


ナナシのアンダースローで山なりに放物線を描いて六郎の頭部へ落下してきた人魂。

それが先程の人魂の一撃で大きく凹んだ鎧の兜に再び直撃した。

速度はそれ程でもない筈なのにそのダメージは甚大であった。

その理由がこの区のルールにあった。

ダメージの計算が攻撃する物の攻撃力に由来すると言うルールがこの区にあったからである。

蹲るように沈む六郎、ダメージが大きすぎるのか割れた兜が先に落下しへたり込んだ六郎の元へナナが駆け足で近寄っていく!

その手にはナナシの最後の人魂が握られていた。

彼女もまたネネと同じく魔石を使わずに意識を取り戻した人間でネネを見て魔力を練る事を覚えていたのだ。


「よくもお姉ちゃんを!」


既にナナの存在が認識できていないのかゆっくりと倒れていく六郎の顔面へ叩き落すようにその人魂が投げつけられた!

六郎は既に死んでいたのかは分からない、だがナナの投げた最後の一撃を喰らうと同時に銅像が破壊されるように六郎の体はバラバラに砕け散った。

周囲に居た誰もがそれを見て暫し固まる・・・そして一斉に歓声が沸きあがった!


「「「「「わぁぁぁぁああああああああ!!!!」」」」」


周囲に居た住民も六郎の横暴な行為に不満があったのだろう、六郎が完全に死んだ事を誰もが喜び歓声を上げたのだ。

そして、その歓声の中ゆっくりと倒れるナナシ。


「えっ・・・ナナシさん?!ってキャッ」


それを慌てて抱きとめたのは元奴隷のルリエッタであった。

だが非力なルリエッタはそのままナナシを支えきれず共に倒れてしまう。


「あいたた・・・」

「ご、ごめんなルリエッタ・・・」

「だ、大丈夫ですか?」


真っ青になったナナシの顔が直ぐ近くに在りナナシとは対照的に真っ赤になるルリエッタ。

ヘロヘロになりながらも優しく笑みを見せるナナシは告げる。


「HPを人魂出すので使いすぎてMPもすっからかんなんだわ・・・ごめん少し・・・寝る・・・」

「えっ?ちょっナナシさん?!」


そのままルリエッタに覆いかぶさる形で瞳を閉じて意識を失うナナシ。

ナナシの顔が目の前に在る事でルリエッタは顔を真っ赤にしながらもゆっくりとその唇へ自らの唇を目を閉じて近づけて・・・


「オホンッ、ルリエッタそう言うことは誰も見ていないところでね」

「ひゃいっ?!」


いつの間にか近くに居たリルに突っ込みを入れられ我に帰るルリエッタ。

周囲を見回すとスケさんにナナにネネだけでなく近くの住人達も2人に注目していた。


「いいぞねーちゃんぶちゅっとやっちゃえ!」

「あらやだ若いっていいわねぇ~」

「リア充なんて爆発しちまえ!」


周囲から色々な声が掛けられる中、ルリエッタに覆いかぶさっていたナナシはネネとリルの手で起こされ、そのままスケさんの手も借りて定食屋へ戻る。

店員も騒動の一部始終を見ており店内が滅茶苦茶だったので営業を中断し別室を解放してナナシをそこで休ませるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る