第22話 半丁賭博必勝法!
「マムさんお久し振りです。最近見かけませんでしたがどうされました?」
賭場の入り口で強面の男が話し掛けているマムと呼ばれる男、先日狩人アデルの家で七志を買い取ろうとして返り討ちにあった奴隷屋の男であった。
「狩人アデルにまんまと貶められてな、あの女のせいで酷い目に遭ったんだよ」
「それでアデルは?」
「迷惑料としてそのまま奴隷行きさ、あのガキも見付けたらこの世の地獄に叩き落としてやる!」
七志は被害者なのだが酷い言いぐさであった。
その時、賭場の中から歓声が上がる。
それに少し驚きつつも金の臭いを嗅ぎ付けたマムは視線を向けて口許を歪める。
「そういえば先日一家丸々奴隷として売りたいって話は?」
「既に借金で固めてます。数日後には…」
「そうかそうか、ほら良かったなお友達が出来そうだぞ」
マムが手にしていた鎖を引っ張ると馬車の中で呻き声が上がる…
そこには変わり果てたアデルの姿があった。
マムの怒りに触れて奴隷に落とされ店の方で心身共にズタボロにされたアデルは酷い有り様であった。
若い女として奴隷で売れば高値が付くのは間違いなかったがそれだけではマムの怒りは収まらなかった。
なのでこの数日、店の倉庫で汚され暴行され女としてどころか人間として今後生活することすら困難なほど酷い目にあわされたのだ。
「あ…う…」
(おいおい、これがあのアデルかよ…)
強面の男が顔を歪めるのも仕方ないだろう。
舌は切り取られ顔は腫れ上がり髪は焼かれ手の指は何本か切り落とされているのが見てすぐに分かった。
パッと馬車から覗かせた部分だけでそれなのだ。
全身きっと酷い有り様なのは想像に容易かった。
この世界には回復の白魔法であるヒールがある。
なので拷問等は必ず対象が死なないように白色魔法を使えるものが立ち合うので拷問はエスカレートするのは当然であろう。
「しかし、凄い賑わいですね」
「ちょっと見ていきますか?」
「そうですね」
マムと男は並んで賭場に入る。
そして、七志の姿を見てマムは怒りと喜びに打ち震えるのであった。
復讐の対象を見付けたのだ。
しかし、直ぐに場の盛り上がりに我に返る。
そして、信じがたい光景に目を見開くのであった。
「1.1.4の丁!」
「う~ん残念次こそは半に金貨80枚で」
「良いぞガキー!」
「次こそ来るってばよ!」
七志の前に積み上がられる大量の金、賭場の人間も冷や汗が溢れ出ていた。
それはそうだろう、七志は既に9連敗しているのだ。
そして、その度に賭け金を倍にしていた。
七志は収納魔法で金を出しているので所持金の上限が賭場の人間には検討も付かないのだ。
そしてなにより、連続9回『丁』が出続けているのだ。
確率にして0.39%でしか起こらないことが起こってる。
間違いなくイカサマを賭場の人間がやっているのは明白であった。
だが既に誰もが気付いているのだ。
七志が必勝法を使っていることを…
「2.6.6の丁です!」
「じゃあ次、半に白金貨2枚で」
そう、七志がやっているのは負ける度に賭け金を倍にしているのだ。
そして、それこそがこの博打の必勝法であった。
銀貨を10枚を賭けた場合勝てば19枚返ってくる。
負けた場合は倍の20枚を賭けて合計30枚払って勝てば38枚返ってくる。
40枚になれば合計70枚払って76枚。
80枚になれば合計150枚で152枚。
160枚なら合計310枚で304枚とここで損が出る。
なのでここからは繰り上げて金貨2枚にする。
そしてまた倍にして行き桁が上がるときに繰り上げて2に合わせる。
これだけである。
つまり現在の七志の状況は…
当たれば日本円で総額355万5000円出して380万円の勝ちとなる。
利益としては245000円と少なそうに見えるが確実にいつかは利益の出る計算となっていた。
そして…
「3.3.5の半!」
場は一気に歓声に包まれた。
イカサマを指摘されるのよりも金貨24枚と銀貨50枚の損を選んだのであろう。
しかし、一度折れたら待つのは破滅だけである。
「それじゃあもう一度、半に白金貨2枚で!」
その場も誰もが耳を疑った瞬間であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます