第17話 ファイアの魔法の真骨頂が凄すぎた件!

「お客さん、お客さん…」


体を揺すられ全身がダルく動きたくなかったが必死に重い瞼を開く…

天使がそこには居た。


「お客さん・・・ナナシさん起きてください!」

「っ?!」


お客さんから名前呼びに変わってナナシは飛び起きた。

目の前にはエルが居たのだ。

慌てつつも意識がハッキリしてくる中、記憶が甦ってくる。


「よっぽど疲れてたんですね」


ベットの上で魔法を使って魔力欠乏症で倒れたとは誰も思わないだろう。

エルは起きたナナシに濡れタオルを差し出す。


「あ、あぁありがとう」


お礼を言いながらそれを受け取り顔を拭く七志。

そのダルさから多分目にはクマが出来ているのだろうと簡単に予想が出来た。


「大丈夫ですか?ご飯食べれます?」

「あっあぁ、大丈夫。直ぐに食べに行くよありがとう」


その言葉を聞いてエルは微笑んでタオルを受け取り部屋を出て行く・・・

七志、一日に魔力欠乏症を2回も起こしてかなりの疲労が溜まっていた。

それでもその光景を見れば笑うしか無いだろう・・・


『はは・・・ははははは・・・マジかよオイ』


脳内にその光景を共に見ている嵐の声が聞こえる。

それに頷く七志は銀の皿からそれを手に取った。


「元に・・・戻ってるな・・・」

『やばいぞこれ・・・とんでもない事だぞ!』


そう、これで確証が得られた。

七志の使うファイアの正体は『火に触れた物の時間を焼却し過去の状態に戻す』で在る事が実証されたのだ。

これが詐欺魔法の始まりであった。

その後、エルの母親の作った料理を頂き寝る前にもう一つの実験を行う事にした七志・・・

それは夕飯に頂いた果実で在る。

さくらんぼの様な果実からヘタが生えておりヘタの先端の果実内には小さな種が一つ入っている辺り完全にさくらんぼなのだ。

ただ色が緑と言う甘いそのチャリーという果実の種を部屋まで持ってきた七志は再びベットの上で詠唱を開始する。


「黒の魔法 火の力よ我が手より全てを照らす火の奇跡を!ファイアー!」


今度は魔力欠乏症になる前に中断しようとホンの一瞬だけ使用した事で目眩がするが意識は保てた。

そして、銀の皿の上に置かれているそれを手に取る・・・

食べたチャリーが元通りになっていた。

それも切り分けられる前の状態で。

5個で一つの塊なのだと初めて知ったその形状をマジマジと見てから一つを口の中へ運ぶ・・・


「うん、美味しい・・・」


そう、嵐もその光景を見ているのだが言葉が出ない。

これはとんでもない事であった。

少なくともこれで物の複製が作れるのは確実なのだ。

簡単に言うと一つの物を2つに割ってそれぞれにファイアを使うと復元され2つになるのだ。

先程の紙の件を考えると一つのファイアでまとめて焼いてしまうと纏められて一つの物になるのだが、1枚だけ落ちていた切れ端がそのまま残っていた事からもこれは実証された。

襲い掛かる眠気に限界を感じ七志はベットに横になり寝る前に嵐に告げる・・・


「俺限界だから寝るわ、動画の方もそうだけど色々と使い方思い付いたらアイデア宜しく頼むぜ相棒」

『お・・・おぅ!』


そして、七志はそのまま寝静まる。

嵐はその魔法の効果に驚愕しながらも考えるのであった・・・


『これって他の魔法ももしかしたら・・・』


夢が膨らみながらも動画をどう編集するか悩む嵐はまた睡眠時間が削られるのであった・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る