第13話 初めての魔物狩りとレベルアップ

『全属性が使えるが一切魔法が使えない詐欺魔道士』


今回の動画も突込みが満載であった。

特にコメントであった・・・

『オールマイティってALMIGHTYじゃなくてALL MY TEA、全部私のお茶って意味なのさ』

と言うコメントには嵐も爆笑していた。






「はぁ・・・まぁレベルさせ上げれば魔力は上がるから何とかなるか・・・」


ルルは一変して溜め息を吐きながらも気持ちを切り替えていた。


「レベル上げですか?」

「そうじゃ、とりあえずお前さんは魔道書をインストールする魔力も無いからまずはレベルアップからじゃな」


と言う事でレベル上げを行う為に同じく魔育園に通う少年『アントン』と共に近くの森にレベル上げに出かけることとなったのであった。

その森の名は温風の森、一年中森の中の気温が外よりも少し高い事からもその名が付けられ大人しい魔物が多数生息する狩りの練習用の森であった。

勿論、奥の方へ行くと危険な魔物が多数生息しているので絶対に奥へと行かない様にキツく言われていたが・・・


「お前ナナシだっけ?レベルを上げたいんだろ?強い魔物倒せば一気に上がるからもっと奥行くぞ」


やはりこういう事になるのはテンプレなのであった。

そして、森に入ってから15分くらい奥へと進んだその場所に居た狼の様な魔物を見つけアントンは草陰から徐々に近寄る・・・


「ナナシ、お前はそこで待ってろ俺が弱らせてやるから止めを刺せ」

「分かった」


アントン、結構面倒見が良かった。

と言うのもアントンはあの魔育園では一番新参者でナナシが入った事で初めて先輩となったのだ。

それもありいいところを見せようと少し無理をしていた。

だがアントンも別に狼の魔物を一人で倒した事が無いわけではない、そのためそこまで危険視はしていなかった。

ナナシの事もレベルが1と有り得ないのだが、それでもルルからきちんと育てるように言われていたので張り切っていたのもあった。


(でも狼って群れで生息する生き物じゃなかったっけ?)


七志の考えは正解である。

事実、アントンが狙っている狼は囮でそのアントンを狙う狼が2匹隠れていたのだ。

それに気付かないアントンは草陰から短剣を握り締め一気に狼に襲い掛かる!

それと同時に隠れていた狼もアントンへ襲い掛かった!


「アントン!2匹行ったぞ!」

「なっ?!」


全く2匹に気付いていなかったアントンは七志の言葉で爪による攻撃を後ろに下がる事で回避した。

だが目の前には3匹の狼が立ち塞がる、レベル1の七志は戦力に数えられないと考えているアントンは仕方なく短剣をしまい両手を突き出す。


「黒の魔法 火の力よ我が手より全てを燃やす火の奇跡を!ファイアーアロー!」


呪文を唱えたアントンの両手から炎で出来た矢が物凄い速度で飛んでいって2匹の狼の胴体に突き刺さる!


「キャインッ!キャインッ!」


体に刺さった炎で出来た矢は狼の体を内側から焼きながら狼を苦しめる。

その隙にアントンは残りの一匹を睨みつける。

その目を見て無傷だった狼はその場を走り去る。

多分仲間を呼びに言ったのだと判断したアントンは叫ぶ!


「ナナシ!どっちでもいいから今すぐ攻撃して止め刺せ!」

「わ、分かった」


七志は懐から雑貨屋で買ったナイフを取り出し体を内側から焼かれて呼吸困難になって苦しんでいる狼の方へ走っていきそのナイフを首に突き立てる!


「ギャインッ!」


断末魔の叫びと共に動かなくなった狼、その首にナイフを突き刺したまま七志は自身の体に急激な変化が起こっているのを理解し内側から溢れる力に震えていた。

通常ならもっと弱い魔物を倒して少しずつレベルアップするのだが七志が倒した狼は今の七志が逆立ちしても勝てない魔物だった為一気にレベルアップしていたのだ。


「ほらっナナシこっちも急げ!」


既に虫の息であったもう一匹にも七志はナイフを引き抜いてそのまま走って近寄り止めを刺す。

残酷に思えるかもしれないがこれがこの世界の常識なのである。

レベルアップによる体の疼きに再び耐えた七志は一呼吸してアントンが手を振っているのでそれを追い掛ける様に目の前の狼の死体1つだけ収納して走り出す。

七志にも分かっていたのだ、あのままあの場所に居ると逃げた狼が仲間を連れて襲ってくる事が。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ここまで来ればもう大丈夫だ」

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ごめん、俺のために」

「なーに気にすんなって、それより良く困惑せずに止めさせたな」

「あぁ、生き物を殺す覚悟はしていたからね」


七志、異世界に来れば必ずこういう魔物との戦闘はあると事前に予測していたのだ。

そうして、狼を2匹も倒せば充分レベルは上がっただろうとナナシを連れて魔育園に戻るのであった。


最初の時と同じようにあのインターホンの様なボタンを押して2回目の「ピンポーン、次止まります」と言う台詞に突っ込みを入れる気も起きず、二人はルルの元へ帰ってきて早速ステータスプレートでステータスをチェックする。


「随分早かったけどアントン、またアンタ奥まで行ったね?」

「いやいや、入り口の方で地道に魔物狩りしたってば」


そうやらアントン常習犯の様であった。

そして七志はステータスプレートを額に当てて表示されたステータスを見る・・・


ナナシ


Lv.6

HP 32

MP 3

魔力6


横からそれを覗き込んだルルは額に手を当てて今日だけで何度目か分からない溜め息を吐くのであった。


「まぁ火の魔道書のインストールに必要な魔力が4だからとりあえず次には進めるか・・・」


レベルが5も上がっても七志のステータスは物凄く弱かったのであった。

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