第11話 魔育園の園長ルル

「マジで?!」

『大マジなのよ』


今朝の再生回数から他の動画を合わせれば七志が雑貨屋で使った金額はもう回収出来そうという事実に驚いた七志である。

七志の世界ではほんの数分前なのだが観測者の世界では七志の世界は止められてるので昨日の事である。


チャンネル登録数も10万件を超えているのだが企業案件に関しては悩んでいるのが現状である。

基本的に実物を写さないと駄目なものが多く異世界に物を持ち込め無いので悩んでいた。 


「それはそうと、俺やっと魔法が学べるんだな」

『こっちじゃ分からんこと多いからしっかり頼むぞ~』


七志は宿屋の看板娘エルから聞いた魔法を学べる建物まで来ていた。

一見お化け屋敷にしか見えないそのボロボロの建物だが入り口は踏み固められ人の出入りがそれなりにあることを示していた。

看板には『魔育園』と書かれておりやはりお化け屋敷にしか…


「えぇい!男は度胸、女は愛嬌、おかまは絶叫だぁ!」


七志は扉を押し開けようとしたがどれだけ押しても扉はビクともしない…

ふと横を見ると『御用の方はこちらを押して下さい』と書かれたボタンが在るのを見付けた。


「インターホン?」


古今東西玄関に設置されたボタンはインターホンか自爆ボタンと相場は決まっている。

恐る恐る人差し指でそのボタンに触れて唾を飲み込み力を入れる七志。


『ピンポーン、次止まります』

「バスかよ?!」


華麗な突っ込みと共に扉ではなくインターホンの更に右側の壁が音もなく開く…


「そっち?!」


どうやら扉はフェイクだったようで七志は唖然としながらも開いた壁から中を覗く…


「ごめん下さ~い」

「ようこそいらっしゃい!」


突然闇の中から顔を下から照らした老婆が現れて七志はその場にペタンと座り込み老婆を見上げる…


「おやおや?これはごめんね、驚かせてしまったねぇ」


七志、腰が抜けて暫くその場から動けないのであった。








「いやっはっはっ本当にごめんねぇ、うちの生徒だと思って驚かせようとしていてねぇ…」


現在老婆に連れられて建物内を歩く七志、外から見た外見はあんなのであったが中は綺麗に掃除もされており綺麗なものであった。


「ここが魔育園の勉強部屋じゃ」


そう言って扉が開かれると数名の子供が座禅を組んでいた。

その異様な光景を見詰める七志に老婆が告げる。


「それじゃ改まって、私がこの魔育園の園長のルルだ。ルルさんとでも呼んでおくれ」


出された手を握り返し七志も名乗る。


「七志です。宜しくお願いします」


先程まで腰が抜けていたとは思えない態度で挨拶を返すのであった。

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