第14話 旅の仲間

 全てを話し終えたレイアは、再びノエル達に向き直った。


「私は罪をつぐなわなければならない。だから、私をお前たちの旅に同行させて欲しい」


 彼女の声は、先ほどまでの冷たく堅いものではない。その言葉には感情がこもっていた。最後まできちんと話を聞き終えたノエルは、多少の非難を込めてツッコみを入れる。


「良い行いをすれば……って言ってたけど、ついさっき僕たちのこと襲ってたじゃん!」


 もちろんノエルは本気で怒っているわけではなく、その顔は笑顔だ。レイアが申し訳なさそうな顔をする。尖った褐色の耳が少し下に垂れ、彼女なりにかなり反省しているようだ。


「すまない……つい昔の癖で、まず身の安全を確保してしまうのだ。傷つけるつもりはなかった」

「ダークエルフは、元々警戒心が高いと言われていますからね……」


 レイアの言葉を聞いて警戒を解いたヴァイスは、納得した様子で苦笑した。初めから彼女が自分たちを襲うつもりがないことはわかっていた。もしレイアが敵意を持って近付いていれば、ヴァイスの精霊が素早く警告してくれたはずだからだ。

 〈暗き森〉を通り抜けるのは、何も冒険者だけではない。山賊や密猟者などの不届きな輩も多いのだ。そしてノエル達三人に対して、レイアは一人。多勢に無勢だからこそ、初手で攻撃の手を封じにいった彼女の行動を誰も責めることはできない。


 やれやれと首を振りつつ、ノエルとカッツェの二人を振り返る。この質問は、聞くまでもないことだとわかってはいるが、念のための確認だ。


「何はともあれ、お二人とももう心は決まっているのでしょう?」

「うん! レイアも一緒に来てもらおうよ! いいよね、カッツェ?」

「うむ。聖杯を探すにも魔物を退治するにも、強い戦士は一人でも多くいた方がいい。あんなにあっさり背後を取られるなんて、俺も初めての経験だぜ」


 明るい表情のノエルに、カッツェも納得の表情で頷く。

 カッツェやヴァイスの鋭い危機察知能力を潜り抜け、気配を気付かれることなく接近した―—最も戦闘能力の高い者の自由を真っ先に奪い、自らの安全を確保したその戦法。それは彼女自身の状況判断能力と戦闘力が、ずば抜けて高いことを示していた。

 カッツェの言う通り、強い戦士は敵にすれば脅威だが、味方につければこの上ない戦力となってくれる。彼の認めた戦士であれば、間違いないはずだ。


「……良かった」


 ほっとした表情のレイアが、ようやく笑顔を見せた。

 こうして男ばかり三人のパーティーに、レイアという強い味方が加わることとなったのだった。



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◆登場人物紹介 No.4: レイア(双刀使い)

 ダークエルフの女戦士。年齢はおよそ20歳。銀色の長髪に、琥珀こはく色の瞳。薄桃色の鎖帷子を身に付け、二本の忍び刀で戦う。

 左肩に刻印をもち、その印を消すために聖杯を探している。

 本来ダークエルフは、生まれつきエルフ族としての高い魔力と精霊の加護を持つ。しかしレイアは今のところその魔力が封印されており、魔導術が使えない。その代わり、ダークエルフ本来の身体能力は最大限まで強化されているようだ。

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