怠惰な俺は青春を謳歌することなど全く興味がなく、恋愛などもってのほかなわけで

月宮 小夜

怠惰な俺とクズな彼女

朝、カーテンの隙間から差し込んでくる光の明るさに目を覚ます。


「おはよう世界」 


また新しい一日がやってくる。 どうせ、いつもと何も変わらないつまらない一日だ。

今日もとことん無駄に過ごしてやろうと思いながら、枕元に置いてある時計を見た。午前10時を過ぎていたところだった。 まだ布団から出たくないという思いになんとか気力で打ち勝ち布団から出る。


寝癖がすごいだろうな~ 


起きた時の寝癖がすごいのはいつもの癖みたいなものだ。

洗面所まで歩いていき、鏡で自分の姿を見る。鏡には目の下にクマができ、寝癖がすごい、何もやる気のなさそうな俺の顔が映っていた。


つくづく思うが俺って怠惰だよな~ 怠惰というか物事に本気を出して取り込んだ記憶というものが一切ないのだ。どんなことも全部楽な方を選んできた俺だった。寝癖を髪に水をつけ、くしとドライヤーで直していく。

もう少しでいつもの髪型に直るというところで

ピンポーン!と家の呼び鈴が鳴った。 急いで髪を最後まで直そうとするとまたピンポーン!と呼び鈴が鳴った。


あ~玄関まで行くのめんどくせ~ いったい誰だよ? 俺なんかを訪ねてくるやつは


ピンポーン!と、うるさいので仕方がなく髪を直すのを途中でやめて俺は玄関のほうに歩いていく。 玄関に向かう間にもピンポーン!ピンポーン!と呼び鈴が何回もなっていた。


マジでうるさいな 一体何なんだよ 新手のいじめか何かか?


ピンポーン!と呼び鈴の音で鳴りやまない玄関のドアに向かって怒鳴る。 実際にはドアの外にいる人に。


「もう、うるさいな!そんなに鳴らさなくても大丈夫だから、ちゃんと聞こえてるから!」


俺が怒鳴るとピンポーン!の音は消え、代わりに女の声が聞こえてきた。


「赤崎あかさき 蓮輝はすきくんですか?」


「ああ、そうだけど」


「あの赤崎くん」 声の主はそういった後、ドアの向こうで自分が言うことを確認するようにぶつぶつ小さな声で自分自身に言い聞かせていた。


あ~あ、これはあれだ。 これはめんどくさいやつだな。 俺が高校生になって一人暮らしを始めてからもこういうやつが結構俺の家に訪れてきた。 こういうやつには何かを言われる前に、先にこっちから言ってやるのが一番だ。


「あの~、悪いけど俺は別に新聞なんていらないからな。」


「え、いや別に新聞の勧誘じゃないんですけど…」 声の主は少し慌てたように言った。


「新聞じゃないとすると、消火器か!消火器なんていらねえよ。」


「あの、消火器を売りに来たわけでもないです。」 新聞でも消火器でもないとするとこいつは何のために俺の家に来たんだ? 


「じゃあ何の用だ?」


「あの、学校に来てください!」 


学校? なんだ、学校か、不登校の俺を学校に連れ出そうとしに来たわけだ。


「まあ、別にいいけど。」


「あのそんなこと言わずに… え、いいんですか?」


「ああ、丁度暇してたとこだしな。」


そう俺は言いドアを開けた。 そこに立っていた彼女の姿を見て俺は言葉を失った。 


人生において言葉を失うという瞬間が訪れることはほとんどないだろう。 人は常にいろいろな言葉が頭の中で渦を巻いていて、どんな衝撃的なことがあっても言葉の渦の中から自動的にその状況に合わせた言葉が選出されるから。 


しかし、俺は言葉を失った。 それは、俺が今まで見てきたもの聞いてきたもの中で彼女を表せる言葉が見つからなかったからだ。

それほど彼女からは言葉にできない何かを感じた。


夜の闇に溶け込んでしまうような黒髪、顔立ちはしっかりと整っているがまだ少し幼さが残っている。 


学校に来いと俺を呼びに来たということは俺と同学年だろうか? とてもかわいかった。



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