第33話 生徒会長の正体

 Ranking

 1th HOMARE 560000

 2nd KYOUSUKE 100000

 3rd XXXXX 80000


 画面のランキングに表示されたランキングをみて、俺ははじめて生徒会長の名前を知った。


「HOMARE……HOMARE……ほまれって、どこかで見覚えが……」


「なんだ? 人の名前を何度も連呼して。どうかしたか?」


「あっ、すみません。生徒会長の名前ってどこかで聞いた覚えが……ちなみに苗字を教えてもらっていいすか?」


「そういえば自己紹介がまだだったな。あたしの名前は一色誉いっしょくほまれだ」


 やはり聞き覚えがある名前だった。

 俺は頭をフル回転させて、記憶をたどっていく。

 すぐに答えはわかった。


「一色……誉……あっ、思い出したぞ」


「だから、どうしたというのだ?」


「生徒会長って昨年、一昨年のプログラミングコンテストで優秀賞をとった一色誉じゃないですか?」


「そうだが。恭介、先輩の名前を呼び捨てとはどういうつもりなんだ?」


「すみません。俺の中であまりに衝撃だったもので」


 まさか……

 俺の学校にプログラミングコンテストの優秀賞をとった人がいたなんて信じられない。

 どうりで聞き覚えがあったはずだ。

 2回連続の受賞は初でニュースになったほどだからな。

 世間は狭いというが狭すぎでは?

 それに誉というから男だと思っていたが、まさか女の子だったなんて。


「恭介。あたしのことは誉ちゃんと呼んでいいぞ」


「いきなり何を言いだすんですか! 先輩を”ちゃん”づけって、無理です」


「だめだ!」


 だめだって、呼ぶ方くらい俺に選ばせて欲しいのだが。


「それじゃあ一色さんでは?」


「だめだ! だめだ! だめだ! 誉ちゃんしかおまえの選択肢はないんだ! 呼んでくれないと許してあげないんだからな。絶対にゆるさないぞー」


 駄々をこねる生徒会長。

 俺の中で色々なことが葛藤していた。

 年上を”ちゃん”づけするのはどうなのだろうか。ましてや生徒会長だぜ。付け加えて俺が尊敬、目標にしている一色誉さんでもある。だが、しかし、これまでの俺の行為が”ちゃん”づけすることにより許してもらえるのであれば、こんまつまらない自尊心など捨ててしまうか……

 俺は覚悟を決め、


「わかりました。それでは今後は誉ちゃんと呼ばせてもらいます」


「うん♪ よろしくな恭介」


 見る見るうちに生徒会長の機嫌が直っていく。

 ここまでの道のり長かったがようやく本題の話ができそうだ。

 俺は意を決して誉ちゃんに問うた。


「あの、誉ちゃん」


「なんだ恭介たん♪」


「たん?」


 誉ちゃんは急に恥じらいだし、ぼそぼそしだす。


「こんな日がくるなんておもってなかったら嬉しくなって、恭介のこと、おもわず恭介たんと呼んでしまった。だめ……かな?」


 誉ちゃんは頬を紅葉し、瞳を潤ませて言った。

 そんな顔でお願いされたら、断ることなんてできない。

 しかし学校には凛さん、如月さんがいるからな。やましい関係でないにしろ誉ちゃんが俺のことを”たん”づけするのは危険な香りがする。一応抑止はかけておいたほうがいいな。


「誉ちゃん、それじゃあ。”たん”づけは二人だけの時だったらいいよ」


「二人だけ? あたしはいつでも恭介たんと呼びたいが……うん……恭介たんが言うのなら仕方ないな、わかった。がんばる」


 何をがんばる? と突っ込もうとおもったが、やめた。

 俺にはきっと理解ができないだろうし、誉ちゃんが納得してくれたのだから、それでいい。

 しかし、この決断が間違いだったと俺はすぐに後悔することになる。

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