気になる。

「う〜ん……」


 結局、帰り道ではルイに強く聞くことができないまま、家に到着してしまった僕。


 その後、ルイの行動から何か分からないかと色々考えたが、そのルイが、


「私達が付き合うことになったことは、お父さんお母さんには内緒にしよ? 二人を驚かせてしまうし……二人には時を見て……ね?」


とだけ言って、そのまま部屋へ閉じこもってしまった。


それから今まで、夕飯も食べず、引きこもっている。


今も、隣の部屋にいるのだろうが、物音一つしない。


今までも、お互いの部屋をよく行き来することはなかったが、リビングや廊下ではよく話はしたし、そう言えるほどには外には出ていた。


今日のように完全に部屋に閉じこもって何をしているのか分からなとまでなったのは初めてだ。


話をするにも、ルイの部屋へ入ったこともほとんどないので、今更突撃するのには勇気がいる。


だからと言って、疑問を一人で解消できるかというと、それはないし、このまま無視して寝られるかというと、無理だ。


なんだかんだ言って、やっぱり気になるものは気になるのだ。


 だから今も、こうしてベッドに横になっても、モヤモヤして眠れずにいるんだし。


「う〜ん……」


……ルイのやつ、教室ではあの釘を自分の体に突き刺すみたいに言ってたのに、ワラ人形を持ってたってことは、やっぱりそういうことなのか?


 だが教室でのルイのあの目は、冗談やおふざけといった、そんないいかげんなものを感じさせず、真剣そのものだった。


 もしあそこで何事もなければ、ルイは本気で自分の体に五寸釘を突き刺していたのだうろか。


でもそうなると、ワラ人形を用意していた意味が分からない。


……あのワラ人形には何の意味があったんだろうか?


もし本当に自分の体に突き刺す気だったなら、そんな現実味のない、曖昧なおまじないに頼ってまで、しかも危険なことをしてまで一体何を叶えたかったんだ?


 どれもこれも本人に何も聞けないことには何とも言えないことばかり、頭に浮かんでくるくる回る。


寝返りをうっても、布団にくるまっても、それらしい答えが出てこない。


――今気になっていることをまとめると二つ、


 まず一つは、教室でルイが協力して欲しいと言ってきたこと、


『好きな人の前でそれを体に突き刺すと、願いが叶う』という、おまじない。


これに関しては、どう考えても現実味がないし、そんな危険なことをルイにさせるわけにはいかなかったから止めたが、その”願い”の内容は気になる。


だが、ルイは、僕と両想いだとわかり、付き合うことになると、もういいと言ってきた。


ならそういうことだと思えないこともない。


が、そのことを問うた時のルイの明らかに何かを隠している反応から、違うのではないかと思わせる。


それから二つ目、


ワラ人形。


 確かに、ルイの持っていた五寸釘は”ワラ人形を木に打ち付けて、恨みのある人間を呪う”といった、呪いなんかに使われるのが、よく話しに聞くが、


ルイは教室で、”五寸釘を自分の体に突き刺す”と言っていた。


ならワラ人形を用意していた理由はなんだ?


……それか「自分の体に突き刺す」というところが嘘で、いざとなった時にあらかじめポケットに入れていたワラ人形を取り出しそれに突き刺すつもりだったのか?


そうなるとなぜ、わざわざ嘘で「自分の体に突き刺す」なんて怖いこと言ったんだ?


「ワラ人形に突き刺す」と言っていれば、笑って協力できたのに、


「……あ〜……」


眠れない。


思考が止まらない。


そう思いながらも僕は、何とか眠ろうと、考えることをやめて無心になり、目を閉じ続けた。

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