叶えたい願い。
「……でさ」
学校の帰り道、
僕は、手を繋いで隣を歩いているルイの横顔に視線を移す。
あの後僕は、無事、ルイから差し出された手を取り、晴れて付き合うことになった。
普通なら、そのままキスの一つでもするのだろうが、そこはお互いに初めての告白、手を繋いで目を合わせた時点で二人とも恥ずかしさに限界がきて、今日のところは何もせず、すぐ帰ることになった。
――そして現在。
学校を出て、家まで歩いて約30分の距離を、手を繋いで歩く。
今はそれでいい。
好きな人と、手を繋いで家に帰る。
……それだけで今は幸せだ。
などと、今の自分の状況を考え、一人顔を赤くする僕。
だが一つだけ、気になっていたことがある。
それが……
「うん、何?」
僕の問いかけに何気なく答えるルイ。
「それ……」
色々ありすぎて、まだ頭の整理がつかないが、ある程度思考が戻ってきた今なら聞けると、僕はルイがいまだ手に持っている五寸釘を指差す。
「あっ……」
聞かずにはいられない。
これを聞かないことにはきっと夜も眠れないだろう。
「……ルイは……さ、それでどんな願いを叶えようとしていたんだ?」
そう、ルイの言っていた、『好きな人の前で五寸釘を体に突き刺すと、願いが叶う』という、嘘かホントか、
考えるまでもなく嘘だろうし、おまじないとかそういう類のものなのだろうけど、
そんなものに頼ってまで叶えたい願いとは、なんだろうか、という疑問。
「あ〜……これはね……」
急に言葉につまり始めるルイ。
何か後ろめたいことでもあるのだろうか、
「これは〜……もういいの、気にしないで……」
目を合わせぬまま言うルイは、明らかに何かを隠しているようで、挙動不振、
だが、今僕がなんと言おうと決して明かすつもりはないという、固い意志を感じた。
「そっか……」
だから何も聞かない。
いつか、ルイから話してくれるその日まで、
ルイのスカートのポケットから、茶色に乾燥した稲の束のようなものが顔をのぞかせていた気がしたが……
……見なかったことにした。
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