第114話 弔い合戦
今日、ここに来たのは菊に頼まれたから、だけではない。
彼には、彼なりに
大伯父の『
あの日、
利休は茶室に居た。
「太閤に謝れと言いに来たか。だったら、
「
助左が言った。
「黙れ、チクゼン{
「私たち、太閤の為に来たんじゃありません。」
紅が言った。
「自分たちの為に来ました。どうか私共をお許し下さい。」
利休は助左の祖父の姉の子である。
共に
二人が
「当たり前だ。」
「
「女房が越後から帰ってきているなんて知らなかったから。
助左は
「
床に手を突いた。
「断る。」
にべも無く言った。
「
「亭主が、大伯父さまが持っていらした縁談を
紅が言った。
「私のことをお気に召さないのは仕方無いです。でも亭主だけでもお許し頂きたい。なんといっても身内なのですから。」
「離れて行ったのはそちらのほうだろう。
利休は、紅を無視して助左に言った。
「師匠が作られた」
助左は
「茶席は、俺のような身体を持つ者にとっては狭すぎる。何よりあの『にじり口』、入らないでください、と言っているようなものだ。」
「小さな入り口は、別世界に入るための
利休は言った。
「そちのような者に
「オレは、嫌だね。」
助左は口を
「特別扱いされるなんて、
利休は、思いがけず口元を
「
二人並べて茶を点ててやった。
助左に言った。
「こんな女を選ぶなんて、全く理解出来んな。それでも別れもせずに連れ添っとる。これがそなたら夫婦の形なのであろう。
紅は思った。
何か似てる、この二人。
(
「ところで」
茶を頂く助左を見ながら、利休が言った。
「わしが死んだら、
利休が死んで、助左には宿題が残された。
大伯父は彼にとって、茶の湯の師匠でもある。
(師匠の夢は茶の湯を、金持ちが金にあかせて買い
それには茶道具の価値観を変える必要がある。
茶道具で
手に入れたお宝にハクをつけるために
皆、自分の目には自信が無いから。そのくせ、目利きの鑑定にも
師匠はその目利きを
だがそれは、師匠の考える『美』が、世の人の理解を超えていたからではないか。
ありとあらゆる
それは全てを
その価値観が世の人に理解されなかったからこそ、『法外』と取られてしまったのではないか。
利休の初めての弟子だった助左は思うのである。
彼には、師匠の考える『美』を理解出来るのはほんの
師匠が哀れだった。
龍や
今度のことはいい機会だ。
幸い手元に、師匠が目利きして彼が保管していた壷が、そこそこある。それも、師匠が主張していた、新しい価値観を
(これが世間にどれくらい受け入れられるか)
試してみよう。
師匠を死に追いやった『
世の中では、かような行為を、
* 2018年2月12日 「
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