第42話 初夏
日差しが強くなり、さわやかな風が港に吹くようになると、九州・長崎の人々はそわそわと沖を
この時代、
この日、入港した船から一人の若者が降り立ち、イエズス会の
柔らかな金色の髪、
「ああ、もう無理せんで良いから。」
日本のイエズス会の総責任者、コエリョは
「航海は地獄のようじゃからのう。主食のビスケットは
「はい。すぐ祈りを
青年は口を
他の司祭たちも口々に言う。
「そなたは日本のイエスズ会の希望の星じゃ。
「まずここ九州で一年ばかり身体を休めて、日本語の学習をし、日本の習慣を学んでもらう。それから上方に上ってもらうことにしよう。」
「一年も、ですか?」
若者は尋ねた。
「都には私の同僚だったジョアン・ロドリゴ修道士がおります。一日も早く会えることを楽しみにしている、という手紙をもらったのです。」
「決まりなのだ、ヴァリニャーノ
「そうですか、巡察師が。」
若者は何くわぬ顔で言ったが、心臓は
「それは残念です。一目お会いしたかったのですが。行き違いになってしまったんですね。」
「おお。」
コエリョが気づいて言った。
「そういえば、あの方はそなたと同じナポリ王国の御出身。お知り合いか?」
「いいえ。」
若者は答えた。
「一度お会いしてみたいと思って。有名な方なので。」
「あの方がおいでになって日本のイエズス会は混乱が収まったのだ。それまで日本のイエズス会を
コエリョは若者の肩をぽんぽんと叩いて笑った。
ジョヴァンニはうやうやしく頭を下げながら思った。
(アレッサンドロ・ヴァリニャーノ。とうとうお前に手が届くところまで来た。皆に敬われて得意になっているんだな。皆、お前の本当の姿を知らないんだ。この私以外は。私こそ、お前の
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