Why write story
水谷なっぱ
Why write story
あなたはなぜ小説を書くのだろうか。あなたはなぜ書いた小説を公開するのだろうか。
わたしがなぜ小説を書くのか。それは書かないと心が死ぬからである。ではなぜ公開するのか。この問についての答えがわからなくて数日間悩んでいた。
その問いに直面したきっかけは、ツイッターで以下のように問われたからである。
「なっぱ(偽者)さんの小説を読んでみようと思いますが、おすすめはどれですか?」
どれだろう? まったくピンとこなかった。その方はすでに「絵月とカキフライ」を読んでくださっている。初見の方へのおすすめなら、間違いなく絵月のシリーズなのだ。話が短いしあっさりしているしとっつきやすい。難しいことなど何もない。
では次に読むとしたらなにが良いのだろう。「青春トーク」と「恋に恋する~」は勧めがたい。書きかけだし、書き直したいし、全体的になんとかしたい。「鬱彼女」をまだ書き直す前だったので、それも勧められなかった。読みにくいなと自分でも思っていたからである。今なら書き直してあるので勧められる。テーマが繊細ではあるが、極力ライトな書き方にしたつもりである。同じ理由で「そこにいる誰かを~」「雨の日のきみ」も勧めがたい。長いし文章構成も文章校正もいまいちなのだ。こちらについてもおいおい書き直そうと思っている。
そうして消去法で残ったのが「はればれ」だった。まだ書きかけではあるものの、text1、2は完結しているし、一話一話が短いのでさらっと読める。難しい世界観もややこしい人間関係も(少しあるけど)ない。
「はればれ」をおすすめさせていただいたあと考えた。
(なぜわたしは自信を持って他所様に勧められないものを書いたり公開したりしているのだろうか)
書く理由は明白だ。前述したとおり書かないと心が死ぬからである。どういうことかというと、わたしにとって書く行為は降って湧いた誰かを自由にすることである。ちょっとカッコつけすぎました。日常生活においてわたしたちは様々な情報のインプットを受ける。基本的には受けたものを自分なりに解釈して噛み砕いて同じく日常生活の中へとアウトプットする。
しかしそれがうまくいかないときもある。インプットされたもののアウトプットしそこねた何かや、アウトプットまでこぎつけたものの完全に出し切ることができなくて残ったカスのようなもの。そうした何かがわたしの中に澱のように沈殿していく。それをそのままにしておくと、澱はどんどんたまって頭や心がいっぱいになりインプットを受け付けることも、アウトプットすることもできなくなる。だからわたしはそれを小説という形に整形して自分の中から澱を排出するのだ。小説を書くという行為を行う理由をざっくり説明するとそういうことだ。
澱を小説という形に整形することが一般的かと言われればそうではないと思う。しかしどういう形にしろ、誰でもなにがしかそういう自分なりの手段を持っていると思う。そうでなければ生きることがひどく息苦しくなるのではないか。
書く理由はそれでいい。ではなぜ公開するのか。この問いに対する答えを出すのは大変だった。自分で理由がさっぱりわからない。
そういうことがわたしの中ではしばしばある。思いつきと勢いだけで行動するから、後に理由を考えるのに苦労するのだ。
だから公開する理由もよくわからなくて、他の人に聞いたり、本を読んだりした。
その結果得られた答えの中で一番ピンときたのは以下の内容だ。
「ぼくは小説という形をとった部屋を作る。その部屋という媒介を通して、ぼくと誰かは何かを共有することができる。共有するというのはつまりものごとを分かち合うということである。力を互いに与え合うということだ」(村上春樹著、雑文集より意訳)
わたしは小説を書くという行為によって極めて個人的な部屋を作っている。せっかく部屋を作ったのならば、その部屋に誰かを招いてもてなしたい。誰もいない、誰も来ない部屋は寂しいじゃないか。そういうことなんだろう。
他にもいくつかの答えをいただいたが、一番すとんとわたしの中に落ちてきた答えはこれだった。わたしはいくつかの部屋を作り誰かを招く。誰かが来てくれたらその誰かをもてなす。誰かはその部屋で物語を味わい、堪能し何かを得て立ち去る。うまくいけば誰かはわたしにさらなる何かを残してくれる。
それはとても楽しいことではなかろうか。
誰かをもてなすオーナーはわたしだが、実際に活躍を見せてくれるのは小説の登場人物だ。皐月や絵月、由依らが誰かの前で活躍することで、誰かはそのことに感想を持つ。持たない場合もある。だからできるだけ心地よい感想を持てるように部屋を整えるのがオーナーであるわたしの役目なのだ。
わたしが小説を書き、公開する理由は以上である。皆様はどのような理由をお持ちだろうか。教えて欲しい。
Why write story 水谷なっぱ @nappa_fake
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