2.夢中
次の日
無論俺は授業に集中などできなかった。
後ろの席には俺の一目惚れの相手櫻井凛がいるからだ。そんなこんなで午前の授業が終わる。
「なぁ、優。飯食おうぜ」
そう声をかけて来たのは加賀美かがみ 巧たくみ。
昨日、下校間際に話しかけて来て家の方向が一緒だったので一緒に帰り友達になった。
「おう。俺弁当持って来てないから学食飯だけど、巧は?」
「俺も学食。」
「それじゃあ、行くか」
学食に着き食券を買いそれをご飯と引き換え席に着く。
「席空いてて良かったな。」
「うん、、、」
巧の言葉は俺の耳には入ってこなかった。なぜなら、向かい合って座っていた俺たちのちょうど俺から見える位置に彼女がいたのだ。
「おーい。おーい、優さーん。聞こえてます?」
巧の大きな声で我に帰る。
「あっ、ごめん。」
「なんだよボッーとして。」
そう言いながら巧は俺の視線の先に目を向ける。
「櫻井さんかー。お目が高いな優。」
巧は何か知っているかのような物言いでそう言った。
「知り合いなのか?」
「まぁ、同じ中学だったくらいであまり話したことはないが、中学時代から結構いたんだよな櫻井さんのファン。彼女に告白して断られたって話し、しょっちゅう聞いたな。」
「そうなんだ、、、彼氏がいるからかな?」
「いや、定かではないけどそういう話は聞いたことないな。」
「そっか、、、」
俺は少しホッとした。
「なに?チャレンジするの?」
「実は少し気になってたりはするけど、今すぐに告白とかは考えてないよ」
「そっか、でも俺は応援するから。なんでも言えよ。高校に入って櫻井さんも恋愛する気になったかもしれないからな。」
巧はニヤニヤしながら少し茶化しているようなそれでいて真面目なようなどちらとも捉えられる笑顔だった。
そしてその日を終えた。
俺は授業に集中することができるようになって来たが、彼女のことが頭から離れることのない日々を過ごしていた。彼女との会話はプリントを回す時の
「はい」
「ありがとう」
くらいでいまだにまともに話せていなかった。
そして、四月も終わりを迎えようとしていたある日。
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