1.入学式

4月


どしゃ降りの雨の中、俺は緊張と期待に胸を膨らませながら学校へと向かう。そう、今日は高校の入学式だ。新しい場所で何か新しいことが始まる予感がしていた。勉強に部活そしてもちろん恋愛も、なんて妄想を繰り広げていると学校に着いた。張り出されていたクラス表を見て俺は1-Bへと向かう。クラスのメンツは大体揃っていた。同じ中学出身者で集まり話をしている人が多くいたが俺は家から少し離れた学校ここ秋林高校しゅうりんこうこうへと入学したためクラスには知り合いがいなかった。人見知りを発揮していると担任が入ってきた。

「これから一年間皆さんの担任を務める神田かんだ 智さとしです、よろしく。皆さんの自己紹介はこの後のホームルームにするとして、とりあえず式会場に移動するので廊下に並んでください。」

先生の声がけにより廊下に並び式会場である体育館に移動した。入学式は退屈で大人のつまらない話と睡魔に耐えていたが健闘むなしく俺の意識は薄れていく。



気がつくと式は終わっていた。



そしてホームルームが始まり、順番に自己紹介が始まった。俺の番が来る。

「佐久間さくま 優ゆうです。笹野中学から来ました。よろしくお願いします。」

友達獲得のために目立つ挨拶を考えたが、いざ自分の番になるとビビって無難な挨拶に終わってしまった。そして次の人の自己紹介が始まる。

「櫻井さくらい 凛りんです。」

俺はその声に魅了された。どこか儚げでそれでいて可憐な声に俺は彼女の方を振り向いた。


俺はこんなことは絶対にありえないと思って生きて来たが、それは紛れもなく、一目惚れだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る