第5話 上宮の家

厩戸の家では、大郎の泊まる準備がすっかり整っていた。

 上宮には山背と刀自古、数人の舎人とねりしかいなかった。屋敷はひっそりとしていた。

 夕食を食べ終えると、大郎は厩戸の部屋に通された。小さな机が一つと火鉢。そして、部屋の隅に子供の背丈ほどの植物が、木箱の中に植えられていた。

 部屋の真ん中に置かれた火鉢には火がたかれ、部屋はほんのりと暖かくなっていた。


 大郎は促されて、火鉢をはさんで厩戸の向かいに座った。背中に棒を入れられているように、背筋をピンと伸ばしている。口は真一文字に結ばれ、肩をいからせる。その隣で白虎も姿勢正しくお座りをしている。同じような格好で座っている主従を見て、厩戸の顔はほころんだ。

「そんなにかしこまらないで。もっと、楽にしなさい」

厩戸は穏やかに言った。

「は、はいっ」

大郎は大きな返事をしたが、姿勢はそのままだった。

「ふふ。私の方が緊張してしまうよ。

 さて、何から話そう」

厩戸は手をあごに当て、少しの間、考え込んだ。


「四神の事、色々教えて下さい。

 どうして、きららは俺の所に来てくれたのかとか。俺はわからない事だらけなんです」

「そうか、そうだね。

 まず、四神が大郎の所に来た理由だが。

前にも言ったかと思うが。四神は神に選ばれた者の元にやって来るのだ。神は一族の中で、強い者を選ぶのだ」

「強いって、それなら、じい様の方がよっぽど強いと思います。どうして、じい様には白虎が降りてこなかったんだろう。

 それに、鎌足はあんなに頭が良いし、あの年で弓も剣術も優れています。中臣の子なのだから、玄武がいてもいいように思うのですが」

「強いというのは身体や権力の事ではない。魂の事なのだ。魂が清く強くなくてはならない。

 そして四神は、主が産まれてから死すまで、ずっと同じ主に従う。だから主が生きている間は、他の人の所に四神は現れない」

「そうか。四神は1匹ずつしかいないんですもんね」

「そうだ。馬子殿が産まれた時、白虎は飛鳥にいなかったと聞いた。それでも、馬子殿には白虎は降りてこなかたのだ。

だから、大郎。神は馬子殿よりも、お前を選んだのだ。もっと、自信を持て」

「はい。ありがとうございます」

大郎は顔を紅潮させて笑った。


 大郎をほほえましく見ていた厩戸だが、一方で鎌足の目を思い出していた。鎌足の切れ長の細い目。

(鎌足の瞳には闇がある。

 彼は危険だ。大郎とは関わらせたくないのだが……)

しかし、その憂慮は口に出さなかった。


厩戸は話しを続けた。

「蘇我と畝傍山の繋がりは知っているよね?」

「はい。畝傍と蘇我の事は、じい様に聞いています。

畝傍山には神功皇后様が祀られています。

神功皇后様の重鎮であった、武内宿根様は、我が蘇我の祖先です。

宿根様は死してなお、皇后様をお守りしておられるはず。

子孫である我らは、畝傍を守らなければなりません」

事あるごとに、馬子から聞かされる話。大郎は諳んじる事ができるようになっていた。

「そうかぁ。言われてみれば、蘇我も白虎も畝傍を守っているんですね。

だから、白虎は蘇我の所に来るんだ」

「そう。

白虎は西の守護なのだ」


「そうだ。耳成山は中臣が守っているんだ。

玄武は耳成山にいるんだから、中臣の家に玄武はやって来るのですね」

厩戸は大きくうなずいた。そして、青龍をひと目見て、話しを続けた。

「東の守護、青龍は天香久山に。そして、天香久山には、天照大御神様が祀られている。

天照大御神様は、我ら皇族の祖である。

故に、青龍は私の所に来てくれた」

厩戸の父親は用明の大王。厩戸も天照大御神の血を引いている。


大郎は身を乗り出してきた。

「じゃぁ、朱雀は飛鳥川ですよね。

 えっと、飛鳥川に祀られている神様って……」

大郎は白虎を見ながら一生懸命考えた。

「加夜奈留美命様だ」

「えっ?」

大郎は不意に加夜の名前が出てきて、すっかり動揺した。

 厩戸は大郎の過剰なまでの反応に気が付いた。大郎の目をじっと見つめたが、大郎は気まずそうに眼を逸らせた。

「……。 加夜奈留美命様は知っているだろう。

 大国主命様の和魂にぎみたまの、おひとつ。

 物部は大国主命様の直系である、饒速日にぎはやひ様の子孫。そのつながりあって、物部は朱雀と共に、南の飛鳥川を守護している」


厩戸が静かに言葉を終えると、しばらく沈黙の時が流れた。大郎は息が苦しくなってきた。

「どうしたのだ。何かあるのか」

厩戸の言葉に、厳しさが加わった。

 大郎は言葉を返すことができなかった。

「なぜ、何も言わない。大郎らしくないね。

 ほら、上を向いて、私の顔を見なさい」

厩戸の声に、いつもの優しさはなかった。

 大郎は観念して、顔を上げた。途端に大郎は厩戸の瞳に捕らえられた。もう視線を逸らせる事はできなかった。

(厩戸様には、隠しておけない)

大郎は腹をくくった。


「加夜とは、友達なんです」

「なっ?」

厩戸は身を乗り出した。姿勢が崩れ、片手を床についた。大郎はこの様に動揺する厩戸を初めて見た。

(やっぱり、神様と友達なんて、言っちゃいけなかったかな。バチが当たるとかって、おこられるかな)

大郎は膝にのせていた両手の拳を、固くぎゅっと握った。両手を突っ張り、肩で頬を挟み込んだ。馬子に雷を落とされている時の、防御の姿勢だった。

「か、かや、と言ったか。まさか、加夜奈留美命様の事か?」

「はい」

大郎は囁くような声で返事をした。そしてこくっと小さくうなずいた。

 数十秒の陳奥が続いた。大郎にはこの沈黙が何分にも、何時間にも思われた。


 火鉢の炭がパチッと音をたてた。

「大郎」

厩戸が震えながら名を呼んだ。

「それは、どういう事だ?

 加夜奈留美命様は神だ。神と友達とは考えられぬ。

 何よりも、神の御姿を拝することなど、できぬはず。

 お前の言う、加夜とは、本当に加夜奈留美命の事なのか」

「すみません」

大郎はとっさに土下座をした。

(厩戸様には、全てお話しよう)

大郎は覚悟を決めた。顔を上げると、まっすぐに厩戸と目を合わせた。


「はい。俺は、加夜奈留美命様と思っています。

 俺が初めて加夜と会ったのは、たしか8つ時です。2年もたっているけど、加夜は全然変わっていません。顔も、背の高さも、髪の毛の長さも、何もかもです。

 それに、加夜は透明なんです。キラキラして、とってもきれいなんです。特に瞳は、金剛石の様です。

 普通の人とは何もかも違います」

厩戸は瞬きをしていなかった。目を見開いたまま、大郎の所まで膝で移動してきた。そして。いきなり大郎の腕をつかんだ。

「大郎。だめだ。加夜奈留美命様に会ってはならない」

厩戸は大郎を見下ろした。

 大郎を見る眼には、有無を言わさない迫力があった。


 大郎の頭の中は真っ白だった。

 今までこの様に、厩戸に厳しく言われた事も、睨まれ事もない。 

 厩戸の手に力が加わった。

「い、痛い……」

大郎の顔がゆがむ。

 厩戸は握っていた手を、慌てて離した。大郎は腕をさすった。

 厩戸は目を閉じ、深く息を吐いた。

 そして、ゆっくりと目を開いた。

「加夜奈留美命様は神だ。我々人間とは違う」

「わかっています」

大郎は大きな声を出した。

「でも、俺は加夜に会いたいんです。加夜の笑顔が見たい。いつも、そう、今だって会いたいと思っています。

 加夜だって俺が行くと嬉しそうにしてくれます。いつも笑顔で迎えてくれるし、話を聞いてくれます。

 きっと、俺の事待っていてくれていると思います」

「それなら、尚の事。決して会ってはならない」

「嫌です」

大郎はきっぱりと言った。初めて厩戸に反抗した。

「大郎。神と人間は違う。一線を画さなければならない。

 神は人と相対するべきでない」

大郎は口を真一文字に結んだ。見開いた目は充血し、鼻は真っ赤になった。


『厩戸よ。そのような物言いでは、大郎は納得せぬ。

 しかし、あの厩戸が珍しく感情的になっている』

白虎だけが冷静だった。


 白虎は大郎にすり寄って来た。大郎は白虎の首に腕を回し、背中に顔をうずめた。こぼれ落ちる涙を、白虎の毛でぬぐった。

 その光景を厩戸はさらに驚愕して見ていた。

(なんと。大郎は白虎と気持ちを通じているのか。大郎も白虎もお互いの気持ちがわかっているようだ。

 守屋様でさえ、四神と心を通わすことはなかったはず……。

 大郎には特別な力がある)

涙が止まり、大郎は顔を上げた。何も言わず、潤んだ瞳で厩戸を見つめた。

(なんの曇りもない、まっすぐな目だ。お前には、やましいことなど、何もないのだろう)


厩戸は、もう一度深い呼吸をした。

「すまなかったね。頭ごなしに、ものを言いすぎたようだ」

いつもの優しい声だった。いつもの笑顔で大郎を見つめた。

「いえっ。俺の方こそ、厩戸様に失礼な態度をとってしまいました。

 申し訳ありませんでした」

大郎は手をついて、勢いよく頭をさげた。ごちっと、床に頭をぶつけた音がした。


「大郎は加夜奈留美命様に特別な思いを持っているのか」

そう尋ねられ、大郎は困ったように白虎を見つめた。次に上を向き、下を向く。頭の中でさまざまに考えを巡らせていた。

「あの、特別な思いっていうのは、俺が加夜を好きだって事ですか」

あまりにまっすぐな答えに、厩戸は一瞬、言葉がでなかった。

「俺、加夜の事、好きです。

 でも、これって、神様に対して、失礼なんでしょうか」

「それは私にはわからない。

 なぜなら、これまで神とそのように深く相対する事ができた人を、私は聞いたことがない。私には、神の御姿を見る事すらかなわないのだ。

 それがひとつの、信仰の形ととらえる事ができるのかもしれないが」

「じゃあ、加夜が怒っていなければ、大丈夫って考えていいのでしょうか。 

 加夜はいつもにこにこして、俺を迎えてくれるんです」

厩戸は間を置いた。


「加夜奈留美命様と会っている時は、何をしているのだ」

「うーん。

 加夜は神社から出られないので、神社の中で飛鳥川を見ています。

 俺はいっぱい喋るけど、加夜は話せないので、俺の話を聞いてくれています。楽しそうに聞いてくれるんです」

「加夜奈留美命様は、話をしないのだね」

厩戸は大郎の言葉を繰り返した。大郎はこくっとうなずいた。

(声は聞こえないのか)

「……。忘れないでおくれ。加夜奈留美命様は神だということを。

 私はお前を信じる。

 約束しておくれ。決して人の道を外れないと。

 これだけは、しっかりと覚えておくのだ。人の道を間違えないと」

「はい」

大郎は神妙に返事をした。しかし厩戸のくりかえす、人の道が何たるか、10歳の大郎にはわかりかねていた。


『厩戸のあの反応。

 神に対する大郎の振る舞いを、責めるだけではないようだ』


部屋に舎人がお茶を持ってきてくれた。 

 背の高い、がっしりした舎人であった。白髪としわが年齢を物語っている。しかしその者の一重の細い目から発せられる鋭い眼光に、大郎は圧倒された。

 差し出されたお茶を受け取り、「ありがとうございます」と、小さな声で言った。 

 舎人は静かに部屋を出たが、しばらく大郎は目で追っていた。


 それからゆっくりと、受け取ったお茶を一口、口にした。ほっと、安どの声がもれた。

「厩戸様。さっき、きらら、白虎は西を守護すると、おっしゃいました。

えっと、では、青龍は東、玄武が北、朱雀は南が守っているんですよね」

「そうだ」

「では、四神は何を守っているのですか」

「四神の役割は、飛鳥と大王を守る事。

 そのために天から遣わされていると、私は解釈している」

「飛鳥と大王」

大郎は厩戸の言葉をかみしめるように、繰り返した。

「だからですか。

 だから、厩戸様は大王にならないのですか」

大郎の言葉に、厩戸は息を飲んだ。

「……。そうだ。私は青龍を従えている。四神は大王を守るのが使命。その主である私の使命でもある。

 だから、私は大王にはなれないのだ」


 厩戸はゆっくりと縦に首を振った。

「大郎は本当に賢い子だ。お前は、立派にこの飛鳥を守ってくれるだろう。

 しかし、物部雄君は飛鳥を守る事など、微塵も考えていない様なのだ。

 大郎。お前は気を付けなければならない。彼の心の中には、おそらく、私と蘇我への恨みしかないのだ。

 丁未の戦での恨みしか」


“丁未の戦” 


 馬子と厩戸が中心になって物部と中臣を衰退させた戦。30年以上前の戦である。

「しかし、丁未の戦はもう、遠い昔になってしまった。雄君が生まれる前の話だ。なぜ、彼がこだわるのか、私にはわからない。

 一族の恨みにしては、根が深いように思うのだ。

 丁未の戦は、大郎も知っているだろう」

「はい。崇仏派である蘇我と、神道派である物部が戦った戦ですよね」

「悲しい戦だった。

 大郎。私はお前にこの戦の話をしなくてはならない。

 なぜなら、物部守屋殿と、中臣勝海殿は四神を従えていたのだから。


 大郎は驚いて、数秒間、息をするのを忘れた。

 厩戸は話を続けた。

「私は、守屋殿から四神の事を教えてもらったのだ。私が、今、大郎に話して聞かせているようにね。

 こうやって、四神の事は語り継がれるのだ」

「あのっ、では、守屋様が朱雀、勝海様が玄武という事ですよね。

 あの。じゃ、白虎は?」

「あの時、白虎は飛鳥に降りてきてはいなかった。畝傍の山で眠っていた。

 青龍、朱雀、玄武が戦に関わっていたのだ」

「四神同士が、戦ったのですか」

「いや、直接は戦ってはいない。戦ってはいないが……」

厩戸の言葉に、大郎はほっとした。

 しかし厩戸の表情は曇ったままだった。

 

「丁未の戦は私の父、用明の大王の死がきっかけで起きた戦だ。私はまだ、14だった。

父は死を前に、仏教に帰依するとおっしゃったのだ。

父は弱っていた。その発言がどのような難事を起こすか、考える事ができない程にね。


その頃、仏教を広めたいと考えておられた馬子殿には朗報であっただろう。これを機に、一気に仏教を布教しようと考えたのだ。

仏教はものすごい勢いで大和に入ってきていた。

 それというのも、信仰だけでなく、金の仏像、煌びやかな経典などもついてきたからだ。それは権力を誇示するのにも役立ったのだ。


 さらに人々の移動も盛んになって来た。渡来人からの情報は、大陸や三国の情勢を知るのに、大いに役立った。馬子殿が今、反映しているのも、それらの情報をうまく利用しているからだ。

 当時は隋が衰退しはじめた時期であり、情報はとても大切だったのだ。

 渡来人の入国が増えれば、さらに仏教の布教に拍車がかかる。

 三国の争いを避けて、大和に逃げて来る渡来人が多くいてね。どの国から逃げて来たのかも分からないほどだし、昔から大和にいた人間の様にふるまう者もいるほどだ。

 もう、渡来人の入国は、歯止めが利かないほどになっていた。

しかし物部と中臣は、頑として仏教には反対だった」

「どちらも、神道に関わっておられるから」

「そうだ。

私とて、天照大御神様の血をひく者。神を否定するわけがなかろう。

だが、それを守屋様には、わかってもらえなかったのだ」

厩戸の顔に苦渋がにじむ。

「それにだ、戦の元は仏教と神道の問題だけでない。大郎も知っているだろう。大王の座の争いがあったことを」

「はい。刀自古の叔母上からも聞きました」


「穴穂部皇子様が物部についたものだから、それに相反していた、泊瀬部皇子様が蘇我についたのだ。

それが争いを大きくした、大きな要因と思っている」

「でも、お二人は同母のご兄弟だったのですよね。

それなのに、なぜ戦わなくてはならなかったのか。それが俺にはわかりません」

「あの二人は元々、仲の悪い兄弟だったのだ。

あの方々は、私の母の兄であったが、正直に言って、二人とも好かなかった」

厩戸がこの様に人の好き嫌いを言うのは珍しいと、大郎は思った。

「穴穂部様は博学な方だった。しかし、それ故、人の道を外れてまで物部と手を組み、力を手に入れようとされたのだ」

(人の道。さっきもおっしゃった。きっと、ものすごく大事な事なんだ。

 それなのに、それが何なのか、はっきりとはおっしゃらない。

何の事を言っておられるのだろう)


「泊瀬部様に至っては、問題外だ。

何の知識もなく、理念もない。彼が欲しかったのは、大王という地位だけだ。

さらに、兄が物部についたから、自分は蘇我と組むという。

本当に何もない男だった」

厩戸の顔には嫌悪の念がにじみ出ていた。


「お二人とも欽明の大王の子であったし、血筋には問題はない。

 しかし、人として大きな問題があった。

 とにかく私は、穴穂部様だけは大王にしてはいけないと、思っていた。

 その折、穴穂部様が襲われたのだ。そして命に係わるほどの大けがをされた。

 物部は、穴穂部様を自分たちの本拠地、河内の国にかくまった。

 私たちは河内の国に向かい、戦が始まったのだ。


 戦には多くの皇族と豪族が参戦した。

 皇族は大王の座を狙うため。推古様のお子、竹田皇子様も、幼いながら出陣していた。

 豪族はここで手柄を上げれば、冠位が上がる。そう思っている者が大勢いた。

 多くの私利私欲が加わり、大規模な戦となったのだ。


 人の数では圧倒的に蘇我の軍勢が有利であった。しかし、物部は飛鳥の軍事を生業としており、戦には長けていた。

 さらに、朱雀と玄武がいる。戦に加われば、大きな戦力になる。

 私は、蘇我の軍勢が考えるほど、楽観できなかった。勝敗は全く予想できなかったし、長引く可能性もあると思ってた。

 

 私は四神を人の欲のために利用してはならないと、常々思っていた。それを教えてくれたのは守屋様であったのに。それなのに、四神は人を襲うために利用された。

 私も、この青龍に、人を襲わせてしまった」

厩戸の言葉に、怒りと悲しみが混ざった。


 大郎は青龍の瞳に目を向けた。青いガラス玉のように潤んでいた。

「青龍も悲しんでいるんですね。

 俺、きららには戦ってほしくないです」

大郎は白虎の首を抱え、白虎の灰白色の瞳を、じっと見つめた。

「四神はどんな風に戦ったのですか。俺はそれを知りたいし、知っておかなければならないと思います」


 がたっ。

 部屋の隅に置いてあった木が倒れた。辺りに土が散らばった。 

 その瞬間。白虎の瞳が白い光を放った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る